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スイスパスポートを全ての人に

スイス民主主義パスポートの外観 Bruno Kaufmann

スイスの国籍取得試験をパスするために、厄介な連邦の歴史を頭に叩き込む必要も、正式なチーズフォンデュの作り方を知っている必要もない。しかも無料。そんな夢のようなスイスパスポートが発行される。

このコンテンツは 2021/09/15 11:00

ただしその小冊子はスイス国籍の証明書ではなく、スイス民主主義のパスポートだ。初刷は国際民主主義デーの9月15日に発行される。

外装のナショナルカラーと大きさは公式なスイス旅券と同じだが、類似点はそれだけだ。

スイス民主主義パスポート

同パスポートは、国連が2007年に設定した国際民主主義デー他のサイトへの一環として、2021年 9月15日に首都ベルンの史跡「牢獄塔」で行われる政治フォーラム(Polit-Forum他のサイトへで発表される。

この他にも2つの国際イベントがスイス国内で開催される。24~25日には、1回スイス民主主義財団国際フォーラムがアールガウ州ツォフィンゲンで開かれる。swissinfo.chはそのメディアパートナーを務める。

イベントの主役は、著書「民主主義を救え!他のサイトへ」で世界的に有名な米政治学者ヤシャ・モンク氏だ。同氏が列席するパネル討論「検査の民主主義」では、swissinfo.chのラリッサ・ビーラー総編集長が司会を務める。

来年9月にはルツェルンで第10回世界人権会議が開かれる。スイス民主主義財団は現代直接民主主義に関するグローバルフォーラム他のサイトへを共催する。

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パスポートはスイスの4つの公用語ではなく、英語でのみ発行される。スイス以外の世界で広く認知されることを目指す。

発行の狙いはパスポートの「イニシアチブとレファレンダムによる現代代表民主主義への道しるべ」とする副題の通りだ。

48ページから成る小冊子はコンパクトな文章や写真、グラフィックでスイスの民主主義に関する情報や考察が紹介されている。発行者であるスイス民主主義財団他のサイトへのアドリアン・シュミット理事長は、「民主主義パスポートで、直接民主主義と代表民主主義は相反する存在だという誤解を駆逐したい」と意気込む。製作にはベルン大も協力した。

スイスの例を見れば、直接民主主義と議会制民主主義が「互いに補完し合うだけでなく、互いに支え合っている」ことが分かる、とシュミット氏は話す。

▼スイス民主主義パスポートはこのリンクからオンラインで閲覧可能(英語のみ)

スイス大使館で現物配布

実物を手に入れるにはどうすればいいのか?スイス連邦外務省は、初刷2千部の大部分を世界各国のスイス大使館で配布する。政治、ビジネス、教育、市民社会の民主主義に関心のある人なら誰でも読める。

製作費はスイス民主主義財団の出資に加え、連邦政府やルツェルン市なども一部負担した。来年9月に開催予定の第9回直接民主主義世界フォーラム(詳細は後述)でもパスポートを発行する。

ファーストレディーに民主主義の授業?1998年、ルツェルンで開かれた子供議会は、ビル・クリントン米大統領(当時)の妻ヒラリー・クリントン氏を包括的な直接民主主義の世界へといざなった。この写真はスイス民主主義パスポートに掲載され、世界中に広まることになる Priska Ketterer

民主主義と民主主義の自由にかかる圧力を踏まえ、製作者はパスポートに情報を詰め込むだけではなく、民主主義を強化できる内容も盛り込むようにした。シュミット氏は「パスポートは1つの道具箱。ここに提示された直接民主主義の道具を使って、マイノリティーは自分たちの関心事をマジョリティーに気づかせることができる」と話す。

スイス外交政策での位置づけ

民主主義を国際的に推進することは、スイスの外交政策において重要な要素だ。憲法にも明記されている。

だが民主主義の強化は他国に何をもたらすのだろうか?スイスのイグナチオ・カシス外相は、次のような議論を展開している。

  • 直接民主主義により、政治的決定に対する国民の支持が高まる
  • 特定の問題について多数派を得るために、関係者全員に妥協を求めることになる
  • 直接民主制と連邦制、法治国家の組み合わせにより、マイノリティーの意見が聞き入れられ保護される

民主主義パスポート第4弾

スイス民主主義パスポートは、類似の小冊子の第4弾となる。

第1弾はスウェーデンのファルーンで発行された。

続いて23カ国語で欧州連合(EU)版が発行された。50万部以上が印刷され、EUの印刷物としては最大の発行部数となった。

2017年からはグローバル民主主義パスポートが発行され、中国語版も登場した。

民主主義パスポートの考案者はスイス人ジャーナリストのブルーノ・カウフマン氏。スイス公共放送(SRG SSR)の国際特派員を務め、ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)やswissinfo.chでも記事を書いている。

カウフマン氏は「全ての始まりは、スウェーデンの中学教師が政治学の易しい教材がないと不平を漏らしたことだった」と振り返る。

「特に欧州レベルでは、パスポートを通じて欧州市民イニシアチブ他のサイトへといった手段が広く知られるようになった」。これは加盟7カ国で計100万筆以上の署名を集めると欧州委員会に立法を提案できる権利で、EU版パスポートの発行以降、発議件数が増えている。

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カシス氏はまた、直接民主主義が外交政策上の課題にもなる可能性があると指摘する。「国内政策と外交政策がこれまでになく緊密に絡み合っている」時代であればなおさらだという。法的拘束力を持たないソフトローなど新しい手段により、外交政策は新しい世界的問題に対し迅速に答えを出せるようになった。だがそうした拘束力のない合意や意見表明、ガイドラインは「民主的な手続きを経ずに策定され、正当性に疑問符がつく」。

外相にとって全く別種の課題は中国だ。1950年にいち早く国として承認して以来、スイスは中国と良好な国家関係を築いてきた。

だが中国で人権侵害が増えてきたのを受け、カシス氏は2019年、スイスはその利益と価値を中国政府に対して強く主張しなければならないと表明した。そのため国際法と多国間システムを強化しようとしている。

(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)

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