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在外スイス人の「議会」、皆を代表できるか

Mitglieder des Auslandschweizerrats aus Mexiko und Australien wurden in einem Pilotprojekt per E-Voting gewählt. © Adrian Moser/ASO

世界中のスイス人会を取りまとめる在外スイス人協会の最高機関に「在外スイス人評議会」がある。在外スイス人の議会とも言える機関だが、はたして外国に暮らすスイス人全体の意見を代表できているだろうか?協会にはこの問いへの早急な対応が求められる。

このコンテンツは 2021/01/10 09:00

在外スイス人評議会他のサイトへは外国に暮らすスイス人の議会として知られる。会合はスイスで年2回行われ、140人の評議員が集う。会合の進め方は州議会の流れと似ている。会合での決議は在外スイス人の総意としてスイスで認識される。評議会の役割はスイスの行政機関や世論に対して在外スイス人全体の利益を代表することとされる。

市民ではなく団体を代表

しかし評議会と州議会には違いがある。後者は民主的に選ばれている。市民が候補者を選び、当選者全員が1つとなって選挙人、つまり全市民の政治的意思を代表する。

一方、評議会の場合は異なる。評議員を務めるのは、世界各国のスイス人会から派遣された代表者だ。評議会の構造は電報や蒸気船の時代に築かれたもので、代表者は第一に自分たちの居住国と現地の団体を代表する。また代表者が政党に所属していることも多く、その場合は政党の立場も代表される。

評議会に派遣される代表者は、それぞれの居住国の団体が投票により選出する。だが選出に当たるのは小さな仲間内であり、大抵は団体の会員だ。このプロセスで民主主義が重視されることはない。

さらに選出できる代表者は初めから限られている。候補になれるのは、職業的にも金銭面でも安定し、スイスで年2回行われる会合に確実に出席できる人物だ。

金持ち委員会

評議員にはスイス人会の一部や、(評議員の居住国によっては)在外スイス人協会から手当が支給されるが、その額はスイスへの渡航費および滞在費を賄えるほどではない。そのため評議会は以前から金持ち委員会と呼ばれてきた。

こうしたことから、評議会には厳密な意味での民主的正当性がほとんどないと言える。なぜなら当の在外スイス人が代表されていないからだ。

居住国のスイス人会に属さない数十万人の在外スイス人には評議会の投票権は与えられていない。これは、評議会は外国に暮らすスイス人を代表しているのではなく、「世界各国のスイス人会をそれぞれの会員規模に応じて」(在外スイス人協会ホームページ)代表しているためだ。

批判にさらされやすい評議会

評議会は在外スイス人から幅広い支持を得ているわけではなく、一部の在外スイス人の立場しか代表していない。そのため評議会の意見はスイスで批判にさらされやすい。

在外スイス人協会は10年以上前からこの問題を認識しており、近年には対応策が取られた。それが2017年にメキシコとオーストラリアで行われたパイロット・プロジェクトだ。このプロジェクトは、各国の大使館・領事館でメールアドレスを登録すればスイス人会の非会員でも評議員選挙に参加できるようにした。また評議会が在外スイス人の立場をよりよく代表していくための手段を検討する作業部会も設置された。

全体にきしみ

今年前半には各国で次期(2021~25年)評議員の選出が行われるが、一般直接選挙の本格運用や新たなプロジェクトには至らなかった。スイス人会がある種の既得権益となっているなか、民主化を強力に推し進める担い手を欠くからだ。

評議員の選出には「直接選挙制度を作るべきだ」と、在外スイス人協会ドイツ支部のアンネマリー・トロンプ会長は言う。「それが必要だと分かっているし、問題も把握している。だが私たちはそれを自らの課題とは考えていない」

トロンプ氏は組織を民主化する上での難点をいくつか挙げる。「データ保護に関して言えば、ドイツ在住スイス人の住所は全く把握できていない。選挙プラットフォームもないため、電子投票は選択肢にはならない」。さらにこうした仕事を誰が担うかという問題もある。スイス人会の仕事は名誉職として行われる。そのためトロンプ氏は断言する。「これは連邦外務省の仕事だ。責任はいつもそこにある」

存在意義と存続問題

一方、在外スイス人協会のレモ・ギザン会長は違う見解だ。同氏はドイツで行われたスイス人会年次総会で「いい加減、進展すべきだ」と熱っぽく訴えた。

同氏はさらに、スイスで圧力が高まっていること、長い議論があったこと、行動が必要であること、オーストラリアとメキシコでのパイロット・プロジェクトで良い結果が出たことに言及。しかしドイツでは変化を望む声が聞かれないと語った。同氏はこの議論に参加するため、あえてドイツに赴き、この総会に出席したのだった。

ドイツ在住スイス人に対するギザン氏の見解は妥当ではないかもしれない。しかし同氏は最も重要な問題を的確に指摘している。それは、世界各国のスイス人会には、前世紀から続く肥大化したシステムを変える気があまりないということだ。

それにはもっともな理由がある。評議会に代表者を送り込めたスイス人会には今もなお多少の箔がつくのだ。ひいては政治プレーヤーとなることも可能だ。スイス人会への新規加入者が少なく、会員数が減少している地域も多い今の時代において、存在意義を失えば存続できないかもしれないとの危機感がそこに表れている。

(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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