The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

クリプトとCIAの関係 スイス政界に余波

クリプトの建物
米独情報機関との関係が問題になっているスイス・ツークのクリプト社屋。1993年3月撮影 Keystone / Str

米独の情報機関が1970年にスイスの暗号機器メーカーを秘密裏に買収し、数十年間にわたって同社デバイスを使い世界各国の機密情報を収集していた問題で、スイスメディアでは、両者の関係を認識していたという元閣僚や連邦議会議員の名前が複数挙がっている。

スイスの地元紙は、過去の文書により少なくとも2人の元閣僚がクリプト社(本社・ツーク)と情報機関の関係を認識していたと報じた。

クリプトと米独情報機関の関係

米中央情報局(CIA)と旧西ドイツの情報機関(BND)は1970年、リヒテンシュタインの財団を隠れ蓑に、スイスの暗号化機器会社クリプト(本社・ツーク、2018年廃業)を買収。機密情報を容易に解読できる仕掛けを組み込んだ暗号機を販売し、世界各国の機密情報を収集していた。暗号機器はイラン、インド、パキスタン、ラテンアメリカ諸国など数十カ国に販売され、その中には同盟国の日本も含まれていた。米ワシントンポストとドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)、ドイツ公共放送局(ZDF)が今月、独自に入手したCIA文書などに基づいて報じた。

ドイツ語圏の日曜紙NZZアム・ゾンタークとゾンタークス・ツァイトゥングによると、カリン・ケラー・ズッター連邦司法相が昨年12月に政府に提出した文書には、アーノルド・コラー元司法相が1990年代当時、クリプトに連邦警察の捜査が入っていたことを認識していたと明記されていた。

またコラー氏は、クリプトの執行委員とカスパー・フィリガー元国防相が接触していたことも知っていたという。

おすすめの記事
Industriegebäude

おすすめの記事

外交

スパイ疑惑、永世中立国スイスに激震

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの企業によるスパイ疑惑がスイス全土を震撼させている。スイス公共放送(SRF)などの国際合同報道で、ツーク州の株式会社クリプトが2018年まで米中央情報局(CIA)のスパイ活動に加担していたことが明らかになった。

もっと読む スパイ疑惑、永世中立国スイスに激震

ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー紙は15日、ヴィオラ・アムヘルト国防相が昨年末、政府内の同僚に類似の機密文書を送ったと報じた。クリプトと外国諜報機関の関係について政府高官が認識していたことを示すスイス側の公式文書が初めて明らかになった。

名前が挙がったフィリガー氏は、CIAとは何の関係もないと報道を否定。(自身の名前が記載されたとされる)CIAの文書は「正しくない」と反論した。

おすすめの記事
kakuryou

おすすめの記事

外交

スイス製暗号機と米CIAの関係 元国防相は「知らなかった」

このコンテンツが公開されたのは、 米独の情報機関がスイスの暗号機器メーカー、クリプト社を秘密裏に長年所有し、同社のデバイスを使って世界各国の機密情報を収集していたとされる問題で、スイスのカスパー・フィリガー元国防相はクリプト社と米中央情報局(CIA)の関係は「知らなかった」と否定した。

もっと読む スイス製暗号機と米CIAの関係 元国防相は「知らなかった」

別の閣僚2人がクリプトと米独情報機関の関係について知っていたことを示唆する手紙も見つかった。イランにあるクリプトの流通部門で勤務していた男性が1994年にこの2人に送ったもので、男性はその2年前にスイス人従業員のハンス・ビューラー氏と共にスパイ容疑で逮捕されていた

手紙は元閣僚のジャン・パスカル・ドラミュラ氏、フラビオ・コッティ氏宛てで、男性はクリプトの暗号機器を「スイス製」のラベルを付けて売り、それがスパイ活動に使われたと書いた。

このほかにも、クリプトの会長職を数年務めた連邦議会議員2人の名前も取りざたされている。

ニクラウス・オーバーホルツァー元連邦裁判官を筆頭とする政府委託の調査チームは、6月までにクリプト社に関する調査報告書を提出する予定。

おすすめの記事
Bundeshaus mit Schweizer Fahnen unter einem dunklen Himmel.

おすすめの記事

スイスの政治

スパイ疑惑はスイスの中立性を汚すのか

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの暗号化企業クリプト社をめぐるスパイ疑惑は、永世中立国家スイスのアイデンティティを揺るがしている。スイスの政治家、歴史家、メディアの間ではスイス製の不正デバイスが国の信用に与える悪影響について議論がかまびすしい。

もっと読む スパイ疑惑はスイスの中立性を汚すのか

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

パトルイユ・スイス

おすすめの記事

文化

スイス空軍のF-5戦闘機曲技飛行チーム、2027年までに終了

このコンテンツが公開されたのは、 F-5タイガー戦闘機で構成されるスイス空軍の曲技飛行チーム、パトルイユ・スイスが、2027年以降は見ることができなくなる。F-5の退役が決まっているためだ。

もっと読む スイス空軍のF-5戦闘機曲技飛行チーム、2027年までに終了
T

おすすめの記事

職場

中国Temu、スイス企業向けサイトを開設

このコンテンツが公開されたのは、 中国の電子商取引(EC)大手Temu(テム)15日、スイスの小売企業も同社サイトで製品を直接販売できる「Local-to-Local」モデルを同日開始すると発表した。

もっと読む 中国Temu、スイス企業向けサイトを開設
ディタジ・カンブンジ選手

おすすめの記事

世界陸上100mハードルで優勝のカンブンジ選手 スイスメディアが絶賛

このコンテンツが公開されたのは、 陸上の第20回世界選手権東京大会で15日夜、スイス・ベルン出身のディタジ・カンブンジ選手が100mハードル女子を制した。スイスメディアは「驚異的な快挙」と称賛する。

もっと読む 世界陸上100mハードルで優勝のカンブンジ選手 スイスメディアが絶賛
「オン」のロゴ

おすすめの記事

人気シューズ「オン」にスイス国旗マークを付けるのは妥当? 連邦裁判所が判断へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのシューズメーカー「オン」の靴にスイス国旗マークをつけることが許されるかどうか、同社とスイス知財機関との間で紛争が生じている。

もっと読む 人気シューズ「オン」にスイス国旗マークを付けるのは妥当? 連邦裁判所が判断へ
正装のロジャー・フェデラー

おすすめの記事

テニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーさんが億万長者の仲間入り 米誌フォーブス推計

このコンテンツが公開されたのは、 米誌フォーブスによると、スイスの元テニス選手ロジャー・フェデラーさんが資産10億ドルを超える富豪の仲間入りを果たした。

もっと読む テニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーさんが億万長者の仲間入り 米誌フォーブス推計
戦闘機

おすすめの記事

スイス、軍事プロジェクトの品質管理を外注へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの17件の主要軍事プロジェクトが、2026年初めから外部コンサルタントによる監査対象となる。これにはF-35戦闘機の調達も含まれる。

もっと読む スイス、軍事プロジェクトの品質管理を外注へ

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部