今月14日、ウクライナ南東部ドニプロの住宅地が爆撃を受けた
Keystone / Dnipropetrovsk Regional Military
スイスのイグナツィオ・カシス外相は18日、世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で、ロシア人資産を没収してウクライナの再建に充てることは、明確な法的根拠がなければできないと述べた。
このコンテンツが公開されたのは、
カシス氏は「侵略者が引き起こした損害は侵略者が修復するべきであることを、我々は皆知っている」と述べたうえで、「だが我々は法の規則の範囲内で行動しなければならない。でなければ、法律違反を犯した人間を非難する際の信用を失う」と続けた。
スイスはロシア政府とつながりを持つと認定したオリガルヒ(新興財閥)がスイスに預けている資産75億フラン(約1兆600億円)を凍結した。ウクライナは資産を恒久的に没収し、戦争被害の賠償に充てるよう求めているが、各国の協調した動きは今のところ出ていない。
背景には、凍結資産の出所が違法なものと断定しづらいことがある。だがスイスは主要7カ国(G7)や欧州連合(EU)、国連と協力し、ウクライナの求めに応じるべく法的解決策を模索している。
カシス氏はスイス公共放送(SRF)のインタビュー外部リンク(19日付)で、「人権憲章に適合した解決策を見出さなければならない。財産権は人権であることを忘れてはならない」と強調した。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、スイスは中立性とロシア制裁との間で揺れてきた。開戦当初はロシアへの経済制裁を拒否したが、国内外の批判を受けて方針転換した。
ウクライナ復興会議
カシス氏の発言は、ウクライナ復興会議の議長国をスイスから英国に引き継ぐ式典で出た。第1回復興会議は昨年7月、スイス南部のルガーノで開催された。
ウクライナのデニス・シュミハル首相は式典にオンラインで出席し、今年6月にロンドンで開催される第2回会議では破壊されたインフラの修復にかかる最大7千億ドル(約90兆円)をどう国際社会が分担するかを決定すべきだと訴えた。
シュミハル氏は、没収したロシア資産もその一部に充てるべきだと主張し「ウクライナに引き起こした損害は侵略者が補償しなければならない」と述べた。
最も急を要するのは、ロシアの度重なるドローン攻撃で出力が半減したウクライナの送電網の修復だ。
シュミハル氏はまた、交通・輸送インフラや生産施設、国内避難民となった国民700万人の住宅の再建が必要だと強調した。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
おすすめの記事
おすすめの記事
オリガルヒ資産の没収案 スイス金融業界にダメージ?
このコンテンツが公開されたのは、
米欧で、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を没収してウクライナの復興に充てるよう法整備に乗り出している。中立国を看板に世界の富裕層から資産を預かっているスイスの金融業界には新たな火種となりそうだ。
もっと読む オリガルヒ資産の没収案 スイス金融業界にダメージ?
おすすめの記事
スイス、ロシア・ウクライナ首脳会談の「準備は万全」
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府のイグナツィオ・カシス外相は19日、ウクライナ情勢を巡る和平交渉について、スイスはロシアとウクライナの首脳会談を開催する「準備は万全」と述べた。
もっと読む スイス、ロシア・ウクライナ首脳会談の「準備は万全」
おすすめの記事
職場
スウォッチ、「つり目」広告を撤回 人種差別と炎上
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの時計大手スウォッチはつり目ポーズのモデルを使った広告を謝罪し、撤回した。中国を中心に人種差別的だとの批判が出ていた。
もっと読む スウォッチ、「つり目」広告を撤回 人種差別と炎上
おすすめの記事
世界貿易
トランプ氏、スイス大統領に金銭支払いを要求 関税発表前日の電話会談の詳細が明らかに
このコンテンツが公開されたのは、
スイスに対し39%の関税を発表する前日の7月31日、ドナルド・トランプ大統領がカリン・ケラー・ズッター大統領との電話会談で、米国への「投資」ではなく直接的な金銭支払いを要求していたことが分かった。大衆紙ブリック日曜版が報じた。
もっと読む トランプ氏、スイス大統領に金銭支払いを要求 関税発表前日の電話会談の詳細が明らかに
おすすめの記事
文化
ロカルノ映画祭、三宅唱監督「旅と日々」に金豹賞
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部で開催されたロカルノ国際映画祭で、三宅唱監督の「旅と日々」が最高賞にあたる金豹賞を受賞した。
もっと読む ロカルノ映画祭、三宅唱監督「旅と日々」に金豹賞
おすすめの記事
宇宙研究
国際宇宙ステーションでロボットが「宝探し」に成功 スイスも貢献
このコンテンツが公開されたのは、
日本製とドイツ製のロボットが、国際宇宙ステーション(ISS)で「宝探し」をして遊んだ。スイス・ルツェルン応用科学芸術大学(HSLU)もこの実験に貢献した。
もっと読む 国際宇宙ステーションでロボットが「宝探し」に成功 スイスも貢献
おすすめの記事
スイス中銀、新紙幣デザイン12案発表 一般投票募る
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)が、新フラン札のデザイン案12点を発表した。来月7日まで、インターネット上で一般投票が行われる。
もっと読む スイス中銀、新紙幣デザイン12案発表 一般投票募る
おすすめの記事
気候適応
ジュネーブ州、バス・路面電車を13日のみ無料に オゾン濃度が急増
このコンテンツが公開されたのは、
ジュネーブ州では13日、バスやトラム(路面電車)など公共交通機関が終日無料となった。オゾン濃度が急増したことへの対応で、スイスでは初めての措置だ。
もっと読む ジュネーブ州、バス・路面電車を13日のみ無料に オゾン濃度が急増
おすすめの記事
スイスで記録的暑さ 政府が警告
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで全国的に気温が上昇し、猛暑への警戒が強まっている。11日にはスイス西部と南部ティチーノ州の一部地域に対し、熱中症など健康被害を受けるリスクが大きい「危険度3」の警報が発令された。
もっと読む スイスで記録的暑さ 政府が警告
おすすめの記事
文化
知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
このコンテンツが公開されたのは、
ハンス・リンギエ財団は9日チューリヒ在住の作家アドルフ・ムシュグさん(91)に欧州政治文化賞と賞金5万ユーロ(約860万円)を授与した。同賞がスイス人に授与されるのは初めて。
もっと読む 知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
おすすめの記事
貿易政策
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
続きを読む
おすすめの記事
オリガルヒに愛されるスイス
このコンテンツが公開されたのは、
ロシア政府と太いパイプを持ち、ウクライナ侵攻を資金面で支えるオリガルヒ(新興財閥)。スイスに本人や資産、愛人、留学先があるとの噂が絶えない。
もっと読む オリガルヒに愛されるスイス
おすすめの記事
スイスの対ロ経済制裁は十分?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスに対し、制裁対象のロシア資産を徹底的に取り押さえるよう求める国際的な圧力は日に日に高まっている。改善の余地はどれほどあるのか?
もっと読む スイスの対ロ経済制裁は十分?
おすすめの記事
スイスの富裕層ビジネス、対ロシア制裁で苦境に
このコンテンツが公開されたのは、
西側諸国によるロシア制裁を受けて、海外資産を隠そうとするオリガルヒ(新興財閥)とスイス規制当局とのいたちごっこが始まった。高級品業界はそのあおりを受け始めている。
もっと読む スイスの富裕層ビジネス、対ロシア制裁で苦境に
おすすめの記事
スイス、対ロ制裁対象を拡大
このコンテンツが公開されたのは、
ウクライナでの戦争を受け、スイス連邦政府は16日、ロシアの個人や企業・団体に対する制裁対象を拡大したと発表した。
もっと読む スイス、対ロ制裁対象を拡大
おすすめの記事
対ロ制裁でスイスの保税倉庫に厳しい目
このコンテンツが公開されたのは、
ロシアによるウクライナ侵攻を機に、世界各地の保税倉庫への風当たりが強まっている。特に秘密厳守を売り物にしてきたスイスの保税倉庫には、制裁対象の資産が隠されているとの疑惑が強い。
もっと読む 対ロ制裁でスイスの保税倉庫に厳しい目
おすすめの記事
ウクライナ復興に向けた「ルガーノ・プラン」
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ルガーノで今日からウクライナ復興会議が開かれる。戦争で荒廃したウクライナをどうやって復興するのか?復興計画を通じてスイスは何を成し遂げたいのか?
もっと読む ウクライナ復興に向けた「ルガーノ・プラン」
おすすめの記事
オリガルヒ資産、スイスの制裁決定前から凍結か
このコンテンツが公開されたのは、
スイスがウクライナを侵攻したロシアへの金融制裁を下したことで、スイスの銀行は対応に追われている。制裁対象となったオリガルヒ(新興財閥)と多くの取引があるスイス銀行は、制裁の決定前からリスク軽減に動いていたとも報じられている。
もっと読む オリガルヒ資産、スイスの制裁決定前から凍結か
おすすめの記事
鉄鋼取引の中心地ルガーノ、対ロ制裁の影響は?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部に位置するティチーノ州は、東欧産の鉄鋼取引で世界的な中心地だ。ロシアのウクライナ侵攻と対ロ制裁の影響はここにも及んでいる。現地の様子を取材した。
もっと読む 鉄鋼取引の中心地ルガーノ、対ロ制裁の影響は?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。