The Swiss voice in the world since 1935

ノバルティス、白血病治療薬の特許を放棄

ノバルティス
Keystone / Georgios Kefalas

スイスの大手製薬会社ノバルティスは、1回約3349万円かかる高額な白血病治療薬キムリアに関する特許の1つを放棄した。スイスのNGOが欧州特許庁に異議を申し立てていた。

スイスのNGOパブリックアイ外部リンクは、欧州特許庁での法的紛争で勝利したと発表。ノバルティス側は、放棄したのは米ペンシルバニア大学と共同開発したCAR-T細胞療法に関する複数の特許の中の1つだと述べた。

パブリックアイは、この治療法は37万スイスフランかかり「悪質な」商業的搾取に相当すると主張。今年初め、Médecins du Monde外部リンク(世界の医師団)と特許に対し異議を申し立てた。

16日、ノバルティスが特許を放棄したことについて、パブリックアイ側は「この大転換は、基礎となる技術が新いものでないことを考えれば、初めから特許が付与されるべきものではなかったと言える。キムリアに関する他の特許の有効性にも疑問が生じる。また将来の価格レビューに際し、スイスの巨大企業(ノバルティス)の独占的地位を弱体化させるだろう」と述べた。

ノバルティス側は、キムリアは「複数の特許によってカバーされている」と主張。それら複数の特許によって、細胞療法の治療に投じたイノベーションのコストを守るとしている。

ノバルティスはswissinfo.chの取材に電子メールで「ノバルティスとペンシルバニア大学は、革新的なイノベーションのインセンティブとして、知的財産権の重要性を強く信じている。その一例がキムリアだ。異議を受けた特許は、キムリアの継続的な開発とマーケティングにおいて重要ではないと両者の間で認識が一致した。したがってその特許を取り下げる決定を出した」と回答した。

パブリックアイは、ノバルティスの地位は弱体化したが「今回の勝利によってこの治療の独占が終わったわけではない。キムリアはまだ他の特許によって保護されているからだ」と述べた。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

スマートフォンの画面とそれを操作する手

おすすめの記事

スイス・ニトヴァルデン準州の小学校、スマホ禁止へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス中部ニトヴァルデン準州は5日、スマートフォンをはじめとするIT機器の小学校での使用禁止を発表した。授業目的や緊急時などを除き、全面的に学校でスマホが使えなくなる。

もっと読む スイス・ニトヴァルデン準州の小学校、スマホ禁止へ
バーゼルの路面電車

おすすめの記事

バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ

このコンテンツが公開されたのは、 5月11~17日の欧州国別対抗の音楽祭「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(ESC)」開催中、バーゼルでは「カラオケ・トラム(路面電車)」が運行する。ビンテージ車両で90分間かけて街を走る間、乗客は無料で歌い踊ることができる。

もっと読む バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ
大阪・関西万博

おすすめの記事

スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール

このコンテンツが公開されたのは、 日本を公式訪問中のスイスのイグナツィオ・カシス外相は22日、2025年大阪・関西万博のスイス・ナショナルデーのオープニングセレモニーに出席し、結束と対話を呼びかけた。

もっと読む スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
クラウス・シュワブ氏

おすすめの記事

WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任

このコンテンツが公開されたのは、 世界経済フォーラム(WEF)は21日、創設者で会長のクラウス・シュワブ氏が同日付で辞任したと発表した。

もっと読む WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
コーデリア・ベール

おすすめの記事

TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出

このコンテンツが公開されたのは、 米誌タイムズの「2025年最も影響力のある100人」に、弁護士コーデリア・ベール氏がスイス人女性では唯一ランクインした。ベール氏は気候訴訟で異例の勝訴判決を勝ち取った人物だ。

もっと読む TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部