イカの群れを捕食する巨大魚竜(中生代後期三畳紀)の復元イメージ
Marcello Perillo/ University of Bonn
スイスアルプスで発見された長さ10センチの歯が、海に棲んでいた巨大な爬虫類、魚竜のものだったことが確認された。
このコンテンツが公開されたのは、
2022/04/29 09:12
独ボン大学とチューリヒ大学の研究チームが28日発表外部リンク した。これほど大きな魚竜の歯が発見されるのは史上2回目。もっと大きな標本は歯がなく、獲物を噛まずに飲み込んでいたとみられている。論文は科学誌「脊椎動物古生物学雑誌外部リンク 」に掲載された。
歯は1976~90年にスイス東部グラウビュンデン州の標高2740メートル付近で発見された3個体の魚竜の化石の1つだ。研究チームによると、そのうちの1個体は長さが15メートルにもあった可能性がある。椎骨と数本の肋骨もあった。
歯の根元は直径6センチで、これまでに見つかった魚竜の歯の中では最も厚い
Rosi Roth/University of Zurich
魚竜は2億5000万年前に生息した。当時、全海洋生物の95%が姿を消した。魚を食べ、今のイルカやクジラのように呼吸するために海面に浮上した。
2億年前に巨大化した後、絶滅の道をたどった。最も大きく進化したシャスタサウルスは体長21メートルで、カナダのブリティッシュコロンビア州で化石が発見された。
今回魚竜のものと分かった化石が発見されたグラウビュンデン州の山は、オーストリア東部に広がるコッセン層と呼ばれるアルプス東部の地層の一部だ。堆積物は、旧大陸のローラシア大陸とゴンドワナ大陸の間のテチス海がこの地域の大部分を覆っていた三畳紀(2億5000万~2億年前)に堆積した。
当時は平坦な沿岸地域で、体重数十トンに及ぶ動きの速い海生爬虫類の生息には適していない。見つかった化石は浜に打ち上げられた個体のものとみられる。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
おすすめの記事
スイスで記録的暑さ 政府が警告
このコンテンツが公開されたのは、
2025/08/13
スイスで全国的に気温が上昇し、猛暑への警戒が強まっている。11日にはスイス西部と南部ティチーノ州の一部地域に対し、熱中症など健康被害を受けるリスクが大きい「危険度3」の警報が発令された。
もっと読む スイスで記録的暑さ 政府が警告
おすすめの記事
知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
このコンテンツが公開されたのは、
2025/08/11
ハンス・リンギエ財団は9日チューリヒ在住の作家アドルフ・ムシュグさん(91)に欧州政治文化賞と賞金5万ユーロ(約860万円)を授与した。同賞がスイス人に授与されるのは初めて。
もっと読む 知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
2025/08/05
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
2025/08/01
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/30
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/23
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/22
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/16
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/10
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/02
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
続きを読む
次
前
おすすめの記事
遺骨が語る古代ローマ人の暮らし
このコンテンツが公開されたのは、
2021/10/23
アヴァンシュのローマ遺跡と博物館にて「骨」を新しい技術で研究することで、ローマ時代のヘルヴェティアの首都に暮らした人々の生活様式や健康状態について、より詳しいことが分かってきた。最新の科学技術を駆使した学際的なアプローチが、当時の人々の過酷な日常を明らかにした。ヴォー州アヴァンシュのローマ博物館では、「アヴェンティカムの科学捜査班(Les experts à Aventicum)」と題した特別展で、この研究の成果を公開している。
もっと読む 遺骨が語る古代ローマ人の暮らし
おすすめの記事
8世紀のスイス人はこんな顔だった
このコンテンツが公開されたのは、
2019/06/28
アデラシウス・エバルチュスをご存知だろうか?彼は1300年ほど前、現在のスイス北部に当たる地域で暮らしていた。ローマ帝国が崩壊した時代だ。彼はどんな人物で、どんな暮らしをしていたのだろうか。
もっと読む 8世紀のスイス人はこんな顔だった
おすすめの記事
貴重な考古学的発見 後退進むスイスの氷河から続々
このコンテンツが公開されたのは、
2018/10/31
新石器時代の木製の弓、石英の矢頭、祈りの本― アルプスの氷河が溶けて後退するにつれ、考古学的に貴重な品々や遺体などが良い保存状態で続々と姿を表し始めた。ヴァレー博物館ではそのような珍しい発見のいくつかを展示している。
もっと読む 貴重な考古学的発見 後退進むスイスの氷河から続々
おすすめの記事
シーラカンスの新種化石 スイスのアルプスで見つかる
このコンテンツが公開されたのは、
2017/10/24
スイス東部ダボス近郊のアルプスでシーラカンスの新種の化石を見つけたと、スイスの古生物学者チームが20日付のオンライン科学誌で発表した。
もっと読む シーラカンスの新種化石 スイスのアルプスで見つかる
おすすめの記事
ジュラのワニ
このコンテンツが公開されたのは、
2008/11/25
発見された化石は、ワニの中でもメトリオリンクス属といわれるもの。発掘団は、化石を完全な形で採集するために化石のある部分の岩を切り出したが、その重さは3トンにもなったため、クレーン車を使って運ばれた。 水中生活していたワニ…
もっと読む ジュラのワニ
おすすめの記事
バーゼルの恐竜たち
このコンテンツが公開されたのは、
2005/06/28
時を問わず、恐竜は大人も子どもも惹き付ける魅力がある。25年前、「グリューン80」という期限限定のイベントパークが誕生。公園の中心に置かれた1頭の恐竜が、マスコットとして人気を博した。1年間のイベントは終わったが、いまは…
もっと読む バーゼルの恐竜たち
おすすめの記事
ベルンに野生のサイがいた?
このコンテンツが公開されたのは、
2017/10/10
再開発中のベルン駅で、工事現場を日々見守っている人たちがいる。ベルン自然史博物館の古生物学者だ。現在工事中の地層で約150年前、古代のサイの化石が発掘された経験から、研究者たちは「2匹目のドジョウ」ならぬ「2頭目のサイ」を狙っている。
もっと読む ベルンに野生のサイがいた?
おすすめの記事
ユネスコ世界遺産で新発見された化石
このコンテンツが公開されたのは、
2010/07/23
ティチーノ州環境局の発表によると、この化石の断片はすでに2007年に発見されていた。 らせん状に枝に生える葉 それ以来、徐々に新しい化石の層が発掘され、これまで知られていなかった種類の植物の姿が現れてきたという。発掘に…
もっと読む ユネスコ世界遺産で新発見された化石
おすすめの記事
恐竜の足跡保存はスイスにお任せ
このコンテンツが公開されたのは、
2006/09/02
こんなに貴重な化石群だが、保存のための資金が充分でない上に、まだ石切り作業も続いているため、近いうちに消えてなくなってしまうかもしれない。ボリビア政府の要請を受けてスイスの専門家がスクレに飛んだ。 「こんなに沢山の恐竜の…
もっと読む 恐竜の足跡保存はスイスにお任せ
おすすめの記事
欧州最大の恐竜墓地を見つけた銀行員
このコンテンツが公開されたのは、
2007/09/08
直ちに、フリックの恐竜博物館に連絡したところ、2頭のプラテオザウルスの発見につながった。そればかりか、フリックがこれまで、考えられていた以上に大きい恐竜墓地の密集地帯ということが判明した。 フリック博物館のモニカ・ルン…
もっと読む 欧州最大の恐竜墓地を見つけた銀行員
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。