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5つの数字で読み解くスイスの気候変動

緑の野原にできた雪の帯の上で、スキーリフトを利用するスキーヤーたち。
スイスでは積雪が年々薄くなり、範囲も狭まり、早く融けるようになっている。特に標高のそれほど高くない地域では顕著だ Keystone / Urs Flueeler

気温の上昇、雪や氷河の融解、大雨や熱波の増加。スイス各地で観測されているこれらの変化は、自然環境にとどまらず、人々の暮らしや健康にも影響を及ぼしている。本記事では、最新の科学報告に基づく5つの数値から、その実態を整理する。

気候変動はスイス各地にさまざまな異変をもたらしている。熱波や干ばつ、大雨の発生頻度は増加し、規模も拡大している。夏は乾燥しやすくなり、冬の降雪も以前より少ない。氷河や永久凍土の融解は、特にアルプス地域における自然災害リスクを高めている。

2026年4月に公開されたスイス自然科学アカデミー(SCNAT)の報告書外部リンクによると、スイスにおける温暖化の進行速度は、世界平均の2.2倍に達する。

約60人の専門家が関わった同報告書は、スイスの気候に関する最新の科学的知見をまとめたものだ。

熱波や干ばつは、スイスにおける気候変動リスクの中でも特に深刻だ。

以下では、SCNATの最新の報告書で示された5つの数値から、スイスにおける気候変動の規模を読み解く。

平均気温は2.8℃上昇

2015~2024年の世界の平均気温は、産業革命以前と比べて約1.2℃上昇した。同報告書によれば、同期間にヨーロッパでは2.2℃、スイスでは2.8℃の気温上昇が確認されている。地球温暖化の主な要因は、化石燃料の使用に伴う温室効果ガス濃度の上昇だ。

スイスは、気温上昇の速さで世界の上位10カ国に入る。その背景には、内陸という地理条件(海よりも陸のほうが温まりやすい)と、雪や氷河の減少がある。雪や氷河に覆われていた地表が露出すると、より多くの熱を吸収し、気温上昇が加速するためだ。

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その他の要因としては、大気循環の変化、夏の土壌乾燥、大気汚染の低減などが挙げられる。影響は限定的だが、空気が澄むことで地表に到達する熱の量は増加する。

連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の気候学者ソニア・セネヴィラトネ氏は同報告書の中で、これらの要因を長年過小評価してきた結果、わずか10年前の想定さえも上回るペースで気温上昇が進んでいると指摘した。

▼気温上昇が顕著な国について詳しくはこちらの記事へ

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氷河の65%が消失

アルプスを象徴し、スイスの文化とも深く結びつく氷河の融解は、同国の気温上昇を最も分かりやすく示す現象の1つだ。谷に向かって伸びる氷河の先端部分は後退し、氷も薄くなっている。この傾向は、熱波の深刻化に伴い加速している。

寒冷な小氷期が終わった1850年前後以来、スイスの氷河体積は65%減少した。2016~2022年の間だけでも、かつて1400カ所あった氷河のうち約100カ所が完全に消滅した。特に標高3000m以下の氷河は深刻な被害を受けているが、高地の氷河ももはや影響を免れることはできない。

氷河の大幅な後退は、アルプスの景観を大きく変えるだけでなく、水資源や水力発電、山岳生態系にも直接的な悪影響を及ぼしている。また、洪水や土石流、地滑りといった自然災害のリスク増大とも結びついている。

氷河の後退は世界的な問題であり、何億もの人々に影響を及ぼしている。

積雪期間は12日減少

スイスの氷河融解の背景には、山岳地域における降雪量の減少がある。雪は氷河の形成に不可欠で、厚い積雪は夏の融解を抑える役割も担う。

平均気温が上昇すると、雪の代わりに雨が降ることが増える。雨と雪の境目となる高度は、20世紀初頭から数百m上昇した。その結果、特に標高のそれほど高くない地域では、雪が以前よりも薄くなり、範囲も狭まり、早く融けるようになった。

スイスの一部地域では、1961~1990年と1991~2020年を比較した結果、積雪の持続期間が12日間減少した。これは、年間で地表が雪に覆われる期間が約2週間短くなったことを意味する。

同国の積雪日数は1970年以降、標高800m以上で50%、2000m付近で20%減少した。

この変化は、冬の観光を支えるスキー場にも影響を与えており、特に標高の低い地域にあるスキーリフト事業者の間では、事業存続への懸念が年々高まっている。

大雨の頻度は26%増加

雪が雨に置き換わっても、降水量そのものが増えるわけではない。しかし、大雨が降る傾向は強まっている。気温が上昇すると、大気中の水分量が増えるためだ。

近年では2018年夏、ローザンヌでわずか10分間に41mmの降雨が観測され、国内記録級の豪雨となった。

スイスでは20世紀初頭と比べて、大雨の降雨量は12%、発生頻度は26%増加している。こうした大雨は洪水や土石流、土砂崩れなどを引き起こし、インフラや農地に深刻な被害を及ぼす可能性がある。

巨岩や瓦礫の土砂崩れに半分埋もれた村。
スイスのゾルテ/ロスタッロ村で発生した大雨による土砂災害、2024年6月23日撮影 Keystone / Michael Buholzer

熱波による損失は年間6億6500万フラン

SCNATによると、スイスや西ヨーロッパは、1951年以降の熱波の深刻化が特に目立つ地域の1つだ。チューリヒ、ジュネーブ、バーゼル、ベルンなどの主要都市では、1年で最も暑い日の気温が、20世紀以降3.4℃外部リンク上昇した。

他の数値も、この傾向を裏付けている。スイスでは、最高気温が30℃を超える日数が大幅に増加した。この変化は自然環境にとどまらず、人々の働き方や心身の健康にも悪影響を及ぼす。

高温や熱波は欠勤や事故の増加、機材やインフラの効率低下を招き、生産性を低下させる。その経済損失は、同国内で年間約6億6500万フラン(約1330億円)に上ると推計されている。

夜間も気温が下がりにくいことから、高齢者や持病のある人、子どもへの健康被害も深刻だ。SCNATの推計によれば、近年、夏の暑さが原因で数百人が亡くなっており、2024年夏の死者数は326人に上ったという。

前出の気候学者セネヴィラトネ氏は、「熱に関連する死者数の増加が確認されている。その一部は、気温上昇がなければ亡くならなかった可能性がある」と指摘している。

編集:Gabe Bullard/VdV、英語からの翻訳:本田未喜、校正:大野瑠衣子

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