2016年11月~17年3月にスイス・ベルンで開かれた、官製強制労働の被害者たちの写真展。
Keystone
スイスで1970年代まで、国の児童養護制度により貧しい家などの子供たちが家族から引き離され、引き取られた先の農場や養護施設で過酷な労働を強いられたり、性的虐待を受けたりしていた問題で、連邦司法警察省司法局(FOJ)は、国の補償制度に申請のあった約6千件の手続きを終えた。補償制度には9千件超の申請があり、年内にすべて終了する予定という。
このコンテンツが公開されたのは、
司法局の発表外部リンクによると処理済みの補償申請のうち、大部分は補償金が支払われたという。特に高齢や病気の申請者の手続きは3月末までに終了した。
司法局は申請のほとんどが受理されたと述べた。却下されたのは1%未満で、理由は「申請者本人が犠牲者という証拠が不十分だった」という。
スイスでは1970年代まで、国の児童養護制度により貧しい家などの子供たちが家族から引き離され、引き取られた先の農場や養護施設で過酷な労働を強いられたり、性的虐待を受けたりしていた。2010年、当時の連邦司法相が内閣を代表し、被害者に初めて公式に謝罪。国は被害者に対して一人当たり最高2万5千フラン(約280万円)の賠償金を支払うことを決めた。これらの子供たちはドイツ語で「Verdingkinder」(奉公に出された子供たち)と呼ばれ、欧州人権条約批准後の1981年、ようやく制度が廃止された。
>>特集「スイス政府に未来を奪われた子供たち」
司法局によると、生存する被害者はおよそ1万2千〜1万5千人とみられる。
連邦政府は2016年9月、計3億フランの補償制度を発表し、同年12月に導入した。
2014年には、自身も被害者の実業家グイド・フルーリ氏が賠償を求めるイニシアチブを起こしている。
補償申請は2018年3月31日までで、締め切り直前には申請が急増した。
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
続きを読む
おすすめの記事
子ども時代を奪った強制奉公 救済への遠い道のり
このコンテンツが公開されたのは、
「生まれたときに父はいなかった。母は私を祖母に預けた。祖母が亡くなると、まずは姉のところに預けられ、その後、とある農家に奉公に出された。毎日、学校が始まる前に牛の乳しぼりをさせられた。ひどい扱いだった。私は名無しの人間…
もっと読む 子ども時代を奪った強制奉公 救済への遠い道のり
おすすめの記事
政府の補償、多くの被害者が申請を断念 スイス政府に自由を奪われた子供たち
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで1970年代まで、貧困や家庭環境が劣悪などを理由とした行政の強制保護措置で子供たちが親元から引き離され、引き取り先で虐待や重労働を強いられていた問題で、政府の補償制度がようやくスタートした。しかし被害者の多くはつらい思い出を掘り起こされるのを嫌がり、申請を断念している。
もっと読む 政府の補償、多くの被害者が申請を断念 スイス政府に自由を奪われた子供たち
おすすめの記事
スイスの「官製強制労働」補償制度に9千人申請 農場などで過酷労働、性的虐待
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで1970年代まで、国の児童養護制度により貧しい家などの子供たちが家族から引き離され、引き取られた先の農場や養護施設で過酷な労働を強いられたり、性的虐待を受けたりしていた問題で、連邦政府の補償制度の申請が3月末で締め切られた。司法省によると、8800人が申請した。
もっと読む スイスの「官製強制労働」補償制度に9千人申請 農場などで過酷労働、性的虐待
おすすめの記事
奴隷になった子供たち、背景には社会の貧困も
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは過去に、行政保護措置として強制的に家族から引き離され奉公に出された子どもたちがいた。その過ちを償うため、スイス政府は、賠償手続きを進めている。当時の児童養護制度に関しては、冷酷な行政当局、搾取する里親などを語る被害者からの証言に注目が集まるが、それを生み出した社会的背景である貧困問題が触れられることはほとんどない。
もっと読む 奴隷になった子供たち、背景には社会の貧困も
おすすめの記事
国に自由を奪われた子供たち スイス政府が謝罪
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで1970年代まで、国の児童養護制度により貧しい家などの子供たちが家族から引き離され、引き取られた先の農場や養護施設で過酷な労働を強いられたり、性的虐待を受けたりしていた問題で、5年前の2013年4月11日、シモネッタ・ソマルーガ司法警察相が被害者に対し、公式に謝罪した。
もっと読む 国に自由を奪われた子供たち スイス政府が謝罪
おすすめの記事
「子どものころを盗まれた」
このコンテンツが公開されたのは、
何千人もの子どもたちが家族と離れ離れになり、強制的に教育院や別の家族に引き取られて行った。子どもたちの多くは強制労働を強いられ虐待されていた。 奉公は安上がり 別の家族に子どもたちを引き渡したのはその土地の官僚で、両親…
もっと読む 「子どものころを盗まれた」
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。