経済協力開発機構(OECD)は2000年以来、世界中の 15 歳の知識とスキルを測る学習到達度調査「PISA」を発表している
Keystone / Laurent Gillieron
経済協力開発機構(OECD)が5日発表した学習到達度調査「PISA」で、スイスの15歳は数学で好成績を収めた。科学と読解力でも平均を上回った。
このコンテンツが公開されたのは、
2022年版PISAには81カ国が参加。スイスの15歳は数学的リテラシーの平均が508点と、全世界平均の472点を上回った。スイスを上回ったのはシンガポール(575点)、マカオ(552点)、台湾(547点)、香港(540点)、日本(536点)、韓国(527点)、エストニア(510点)の7カ国。
隣国のフランスは474点、ドイツは475点、イタリアは471点、オーストリアは487点だった。
OECD外部リンクによると、スイスの数学の成績は2015年以降「非常にわずかに低下」している。2015年の平均点は521点だった。ただOECD平均も2015年に比べ12点低下している。
スイスでOECDの定義する数学の最低レベルに達していない生徒は19%だった。
4人に1人は読解力に難あり
スイスの読解力は483点とOECD平均(476点)を大幅に上回り、18位だった。
2015年以降で見ると、読解力スコアはOECD平均が13点下がったが、スイスは比較的安定している。ドイツは29点、フランスは25点それぞれ低下した。
ただ25%は読解力の最低限レベルに達していなかった。割合は2015年に比べ5ポイント増えた。OECD平均は26%。
科学は安定
科学的リテラシー(自然科学)でスイスは503点と、OECD平均の485点を上回り、13位だった。
2015年以降の成績は安定している。最低限レベルに達していない生徒は19%と、平均より少なかった。
PISA の調査では、どの国も数学の成績が悪いと数学に対する苦手意識が高くなることが分かった。ただ最も成績の良いアジア諸国の一部(マカオ、日本、香港)では、数学に対する苦手意識が高かった。
2012年の調査開始以来、男女の成績は同等であったにもかかわらず、女子は男子よりも数学に対する苦手意識が高い。
社会的背景の影響
スイスではテストで同じ結果が出たとしても「数学は自分にとって簡単」と感じる男子は女子の2倍いる。この性差は国際レベルでも観察され、2003年に比べ拡大している。
生徒の社会的背景は、成績に大きく影響する。2003年以来、恵まれない背景を持つ生徒は、恵まれた背景を持つ生徒よりも系統的に低い得点を獲得している。2022年調査でもこの傾向は明白に表れ、最も恵まれた層のスコアは安定していたが、恵まれない層では低下した。
2022年調査ではスイスの生徒の19%がハラスメントの被害を受けたと回答した。OECD平均に近く、2018年の前回調査に比べスイスを含むほとんどの国で低下している。
スイスもOECD平均も、生徒の生活に対する全体的な満足度は2018年に比べ大幅に低下した。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
続きを読む
おすすめの記事
スイスでいじめは増えている?
このコンテンツが公開されたのは、
経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」(PISA)によると、いじめ、特に身体的嫌がらせがスイスの学校で増加しているようだ。いじめはスイスでどれくらい大きな問題になっているのだろうか。
もっと読む スイスでいじめは増えている?
おすすめの記事
長期にわたる臨時休校が与える影響
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの感染拡大を受けスイスで全国一斉の休校措置が続く中、特に懸念されているのは、自宅学習に不利な家庭環境に置かれている子供たちの勉強に遅れが出ることだ。専門家は、長期の休校で教育格差に拍車がかかりかねないと指摘する。
もっと読む 長期にわたる臨時休校が与える影響
おすすめの記事
スイス、4歳ちょうどで幼稚園は早すぎ?入園を遅らせる親が増加中
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは4歳になると幼稚園などの初等教育が始まるが、多くの州で、入園の月齢が年々若年化している。ただその一方で、子供の成長が追いついていないことなどを理由に、入園を遅らせる親が増えているという。
もっと読む スイス、4歳ちょうどで幼稚園は早すぎ?入園を遅らせる親が増加中
おすすめの記事
スイス、移民の子供の学力は水準以上 OECD調査で
このコンテンツが公開されたのは、
経済協力開発機構は19日、移民の子供を対象に行った最新の分析結果を発表した。スイスの学校に通う移民の子供の学力は水準以上で、満たされた気持ちで生活し、スイスで生まれ育った子供よりも勉強のモチベーションが高いことがわかった
もっと読む スイス、移民の子供の学力は水準以上 OECD調査で
おすすめの記事
スイスでは成績の良い生徒ほど教師になりたい?OECD調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは、才能豊かな10代の生徒の多くが教職を希望するー。経済協力開発機構(OECD)の調査でこんな傾向が明らかになった。他の加盟国よりも顕著だという。
もっと読む スイスでは成績の良い生徒ほど教師になりたい?OECD調査
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。