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行けボビー、タブーを破るんだ!

ボビーは飼い主と問題を分かち合うことができる

今月、むくむくした小さな犬のぬいぐるみが一般家庭へ大切なメッセージを運んでくる。これは「アルコール依存症は話してはならないタブーではない、そしてこの問題を克服するために利用可能な助けが存在する」ということを伝えるためだ。

11月の最後の2週間に郵便局を訪れた利用者に小さな犬のぬいぐるみが配られる。これは「アルコール・薬物問題防止のためのスイス研究所 (SFA/ISPA) 」が実施しているキャンペーンの一環だ。

きみのせいじゃない

 郵便局で配られる小さな犬のぬいぐるみは、5歳から8歳の子どもを対象に書かれた絵本からやってきた。この絵本は「アルコール・薬物問題防止のためのスイス研究所」のために特別に書き下ろされた作品だ。

 犬のボビーの飼い主フレッドは、ときどきエサをやったり、かわいがったりすることを忘れてしまう。だが、彼はなぜそうなってしまうのか自分でも分からない。一方ボビーは、フレッドがそんなことをするのは自分が何か悪いことをしたからに違いないと信じている。そして恥ずかしすぎてこの問題をほかの犬に話すことができない。

 しかしある日、友だちのフェリックスが、ほかの犬とその飼い主の問題について語り、ゴミ箱の中の空きビンはフレッドが病気であることを示していると説明してくれた。ボビーはそのとき初めて、その問題が自分のせいではないことに気づき、フレッドには希望があることを知った。

タブーの威力

「アルコール・薬物問題防止のためのスイス研究所」は、スイス国内でアルコール依存症の親と共に暮らしている子どもの数を約10万人と推計する。所長のミシェル・グラフ氏は、子どもに対する影響は破壊的になり得ると11月19日の記者会見で語った。ボビーのように、子どもたちはなぜ親の感情の起伏が激しく、落ち込んだり攻撃的になったりするのか理解できない。

 問題を解決する方法はある。アルコール依存症の父親に育てられ、結婚相手もまたアルコール依存症になったモニカは、自分の経験を語った ( 通常自立援助グループでは姓を明かさない ) 。
 「子ども時代には、母親との関係に難しいものがありました。母は父の飲酒問題を隠そうと最大限の努力をしていましたが、そのせいでいつも悲しんでいるか怒っているかのどちらかでした。父がすべきこともたくさんしていたのに、外に対しては全く問題がないかのように見せようと一生懸命でした。これが極度の心労となり、母は鬱 (うつ ) になったのです」

 皮肉なことに、「たぶん罪悪感を持っていた」父親は、モニカに対して常に優しかった 。 
 「子どもながら、うちの家族は何かが違うとずっと感じていました。しかしそれが何なのか言えませんでした」

 しかしモニカは自分の伴侶もアルコール依存症になった当初、子どもたちに対して「全く同じあやまち」をおかしてしまったと認める。

 モニカと母親との関係が示すように、この問題のタブー視が、アルコール依存症患者との生活に一層のストレスを加えている。犬のボビーのキャンペーンはこれを打開することが狙いだ。

 「夫婦の問題で自分のために助けを求めてから、アルコール依存症の問題について子どもたちにも話すことができるようになりました。アルコール依存症は病気なのだとオープンに話せるようになったのです」

意識の向上

 ボビーの絵本は、スイス中の保育園や幼稚園に配られたが、その絵本を最も必要としている子どもの手に渡るかどうかは運に任せるしかない部分もある。しかし、この絵本の読者が誰であれ、読んだ人の意識を高めることが目的であり、読み終えた人はボビーを助けたフェリックスのような役割を果たすことができる。

 今回のキャンペーンはそうした理由から郵便局で実施されている。この問題について一般人の全体的な意識を高めるために、地元の人々の大半が訪れる郵便局を利用することは良い方法だ。また、一般人がより深く理解することによって、アルコール依存症にかかっている親が、これは治療可能な病だと認められるようになると期待される。

パイロット・プロジェクト

 「アルコール・薬物問題防止のためのスイス研究所」のイレーネ・アブダーハルデン氏 は、アルコール依存症の親を持つ子どもたちが直面する問題が概して長年無視されてきた上、そうした子どもたちを対象としたプログラムもほとんどないと指摘した。

 親は子どものために最大限のことをしたいと考えてはいるが、問題の存在を認めることが困難なときも多い。問題を認めたら、子どもを取り上げられることになると恐れている親も多いせいだ。

 適切な援助のネットワークの立ち上げは、何年間もの入念な作業を要するため、容易ではない。できるだけ多くの子どもたちを助けるためには、学校、医者、セラピストなどさまざまな分野の専門家同士の間での協力が必要となる。

 来年スイス北部のアールガウ州で、SFA/ISPAと「アールガウ州依存症救済基金 (Aargauischen Stiftung für Suchthilfe/AGS ) 」が後援するパイロット・プロジェクトが実施される予定だ。8歳から15歳までの子どもたちのためのグループ・ディスカッションがあるほか、親も参加できるコースが用意される。

 アールガウ州の経験は、ほかの州でも行われる同様の取り組みに生かされることになる。

 助けを必要とする子どもたちすべてに手を差し伸べることができるなどという幻想は誰も持っていない。もしほんの2割の子どもたちでもこのプロジェクトに参加させることができたら、それだけでも大きな成果だと「アルコール・薬物問題防止のためのスイス研究所」は訴える。

ジュリア・スレーター、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、 笠原浩美 )

アルコール・薬物問題防止のためのスイス研究所 ( SFA/ISPA )

19世紀の禁酒運動にルーツを持つ非政府組織。
「スイス禁酒事務局 ( Secrétariat antialcoolique suisse ) 」は、1902年に設立され、本部をローザンヌに設置した。1976年に現在の名称に変更された。
アルコールや薬物の依存と戦うために、調査を行い、一般向けのさまざまな取り組みを後援している。
アルコールや薬物への依存を防ぎ、問題がすでに存在している場合は、その影響を軽減するための援助を行うことを目的としている。
公立または私立の組織と協力し、州・全国レベルで活動を行っている。
財源の内訳は、個人からの寄付50%強、委託された調査プロジェクト20%、教育サービスおよび教材の販売20%、連邦政府や州政府の補助10%弱。

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アルコール依存症の親を持った子どもたち

「アルコール・薬物問題防止のためのスイス研究所( SFA/ISPA )」によると、少なくとも親のどちらかがアルコール依存症に罹っている親を持つスイスの子どもの数は約10万人。
そうした子どもたちが直面している問題についての研究は、ヨーロッパのドイツ語圏で1990年代に始まった。
アルコール依存症の親は、家庭を不安定にし、子どもたちの人生からは必要な指針と骨組みが欠落する。
大人になったときに、同じ問題を起こす子ども、抑鬱 ( うつ ) 症など精神的な問題が比較的少なく済むようになる子ども、普通の生活を送ることができるようになる子どもの割合はそれぞれ3分の1ずつと推定される。
なぜこの問題に対して比較的強い抵抗力を持っている子どもとそうでない子ども
がいるのかについては分かっていないが、問題を誰かに話すこと、そして家庭での混乱から逃れることのできる外界での活動を持っていることが助けになる可能性がある。

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ボビー ( Boby )

ボビーの絵本は、「アルコール・薬物依存防止のためのスイス研究所 ( SFA/ISPA ) 」のために、アルコール依存症患者に取り組んだ長い経験を持つ特殊教育の専門家マリー・クロード・アマッカー氏が書いた。
スイスではフランス語とドイツ語で出版されている。
SFA/ISPAの援助資金提供者からの出資によってペーパーバックが2006年に、ハードカバーが2007年に出版された。
ハードカバーの方は、スイス国内の保育園や幼稚園、子ども向けの図書館など4000カ所へ配布された。
本書はベルギーでもフレミッシュ語で出版された。ベルギーでは実施中のキャンペーンに合うよう挿絵を変更された。
イギリスとスコットランドでは、犬の名前をボビーからロリーに変えて出版された。スコットランドでは、ゲームをはじめとするさまざまなアイテムにもロリーを登場させている。

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