スイスの視点を10言語で

ブルカ、洪水、砂糖、塩… 数字で振り返る2021年

洪水の被害現場
今年の夏は全国各地で道路の冠水、地下室の浸水が多発した。各地の湖では最高レベル5の警報が出されたが、死者は出なかった。200人近い死者が出た隣国ドイツに比べ、スイスは比較的被害が少なかった Keystone / Laurent Gillieron

スイスでは今年どんな出来事があったか。SWI swissinfo.chが配信した人気記事から、あっと驚くような数字を月ごとに紹介する。

世界中のメディアを席巻し続けるのは、やはり新型コロナウイルスだ。swissinfo.chで最も読まれた記事は全てパンデミック(世界的大流行)関連だった。日本語版ではこちらの記事でスイスの最新コロナ情報を随時更新。新規感染、入院、死亡、ワクチン接種率などの推移はこちらの記事のグラフィックが詳しい。

盛られた塩
tetesel

1月

50

スイスに住む人は、個人消費目的なら食塩を年間50キログラムまで輸入できる。これは、スイスの数少ない地産原材料の1つである塩にフォーカスしたスペシャルコンテンツ「スイスの塩」外部リンクが明かす、驚くべき事実の1つだ。同特集ではスイスの塩の採掘と取引(密輸も)の歴史に関する情報を余すところなく紹介している。個人で週に1キログラムも塩を消費する人は、他に心配すべき事がありそうだが…。

デモをする女性
Keystone

2月

50

スイスで連邦レベルの女性参政権が認められたのは、わずか50年前のこと。これを聞いて驚かない外国人がいるだろうか。しかも、州によっては導入から30年しか経っていないのだ!1971年2月7日の国民投票で、スイスの男性はようやく女性の参政権導入を可決した(59年の投票では否決)。swissinfo.chはこの節目の年に特集外部リンクを組み、多くの記事やビデオ、写真ギャラリーを配信した。この中には71年の選挙で当選した国内初の女性議員の1人、ハンナ・ザールフェルト・ジンガーさんのインタビューや、最も遅く女性参政権が認められたアッペンツェル・インナーローデン準州の女性4人が、91年4月28日に初めて投票した時のことを振り返った記事もある。

頭に布を巻いて携帯で話す女性
Keystone / Martial Trezzini

3月 

51.2

もう1つ、国外の注目を集めた国民投票を挙げよう。それが、公共の場で顔を覆うことを禁止する憲法改正案だ。3月7日の投票日に先立ち、賛成派、反対派が白熱した投票キャンペーンを展開。結果は51.2%の賛成で可決された。同案は、ムスリム女性が身に着けるブルカとニカブは対象だが、安全や天候、健康上の理由で着用するフェイスカバーには適用されない(コロナ禍によるフェイスマスクも合法)。ただ、礼拝所でのブルカとニカブの着用は引き続き認められる。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は結果が出た2日後、スイスの投票結果について「差別的で、基本的自由を侵害するもの」と非難した。

英語を話しますか?と男性が話すイラスト
Valery Kachaev

4月

21

スイス人は多言語話者という評判は昔からあるが、最近の調査では回答者の21%が3つの言語を日常的に使う(1.7%は5つ)と答えた。だが、国内の異なる地域から来たスイス人同士が公用語ではない英語で会話している場面に遭遇するのは珍しいことではない。そして誰もがこんな状況を喜んでいるわけではない。

子どもとカカオ豆
Michael Dwyer / Alamy Stock Photo

5月

1億5200万

「児童労働はそんなに悪いことなの?」。何たる質問か。

世界には約1億5200万人の子供が児童労働者とされ、そのうち半数は危険な仕事に従事する。しかし、現状は微妙に異なる。ある種の仕事を禁止すると、かえって子供たちの暮らしが悪化する――という見方もある。swissinfo.chはスイスの大手チョコレート製造企業とアフリカでカカオの実を収穫する人たちとの複雑な関係を掘り下げた。

映画のワンシーン
Stefan Vogel

6月

12

ハンターと動物の関係も過度に単純化されがちだ。グラウビュンデン州で6月、12歳以下の子供を狩猟に同伴させても良いかを問う住民投票が行われた。これに先立ち、森林学者で猟師の男性は自身が監督を務めた新作のドキュメンタリー映画についてswissinfo.chに語った。男性は自らのライフスタイルを紹介し、「ほとんど誰も理解していない」ハンターの世界を知ってもらうことが作品の狙いだ、と語った。住民投票は79%の反対で否決となった。

水が増えた湖を見る家族
Keystone / Urs Flueeler

7月

5

雨、雨、雨。今年の夏は雨続きで、全国各地で道路の冠水、地下室の浸水が多発した。各地の湖では最高レベル5の警報が出されたが、死者は出なかった。200人近い死者が出た隣国ドイツに比べ、スイスは比較的被害が少なかった。

エルンスト・ハイニガー
Fotostiftung Schweiz/Ernst A. Heiniger

8月

360

エルンスト・A・ハイニガー写真家としてだけでなく、映画監督としてもパイオニア的存在だった。米ディズニーの下で作った映画でアカデミー賞を2回受賞。円形の劇場で上映できる360度投影の技術を開発した。そして、この「スイソラマ(Swissorama)」システムを売ったお金でハリウッドヒルズに家を購入。生涯をそこで過ごした。スイスでは彼の存在はあまり知られておらず、1993年に彼が亡くなった時もほとんど話題にならなかった。だが今年、スイスで大規模な回顧展が開催された。

ベッドにある男性の手
Ester Unterfinger/swissinfo.ch

9月

1300

今年、コロナ以外で最も読まれた記事は、バーゼルの自殺ほう助団体の助けを借りて安楽死した日本人男性のルポルタージュだ。神経難病を患うヨシさんは自殺ほう助が合法化されているスイスまで、両親と一緒に12時間の長旅に耐えやってきた。スイスでは毎年、約1300人が不治の病や深刻な身体障がいを理由に自死している。

気候に関するデモの参加者
Keystone / Valentin Flauraud

10月

26

10月末、英グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、世界のメディアの注目を集めた。スイスは、地球温暖化を産業革命以前比で最大1.5度に抑えるよう、全参加国に働きかけた。だがスイスでは6月の国民投票で自国の改正CO₂法が否決されている。一部の人々はここに偽善の匂いを感じ取り、他の国を非難する前に自らの行いを顧みよと批判した。COP26閉幕後、気候問題を取材するswissinfo.chの記者たちは「スイスも含め、口ばかりで行動が伴わない」と辛評した。

チューリヒ中央駅の構内
© Keystone / Alessandro Della Valle

11月

35

世界で最も多くの国民投票が行われる国に住みながら投票できないというのはどんな気持ちだろうか。スイスに住む人の約35%は、国政レベルの投票権が認められていない。これは、スイスが誇る直接民主制にとって、どのような意味を持つのだろうか。データジャーナリストが具体的な数字を調べ、直接影響を受ける人たちに話を聞いた。

砂糖の原料
Thomas Kern/swissinfo.ch

12月

7億

1年の始まりは塩。ならば最後は甘いもので締めくくろう。スイスの製糖産業には、年間約7千万フラン(約84億円)の税金が国からの助成金として投入されている。swissinfo.chの記者が国内最大の製糖工場を訪れ、国の介入を巡る是非を検証した。

来年はどんな年になるのか。読者の皆様、良いお年を。また来年!

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(英語からの翻訳・宇田薫)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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