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公明党、ABB、量子、スマホ条例… スイスのメディアが報じた日本のニュース

公明党の斎藤鉄夫代表と自民党の高市早苗総裁
公明党の斉藤鉄夫代表は10日、自民党の高市早苗総裁に連立離脱を伝えた EPA/JIJI PRESS JAPAN

スイスの主要報道機関が10月8日~14日に伝えた日本関連のニュースから、①公明党が連立離脱②ABB、ロボ事業をソフトバンクに売却③日本・スイス、量子技術協力に関する覚書に署名④スマホ利用の上限2時間、の4件を要約して紹介します。

量子技術、フィジカルAIから温泉ツーリズムまで。今週はスイスと日本の新たな協力関係に関するニュースが目立ちました。

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公明党が連立離脱

1999年から自民党と連立を組んでいた公明党が、連立離脱を決断しました。スイスでは日本の政治に危機が訪れているとして詳しく報じられています。

フランス語圏の日刊紙24heuresは「日本は政治的危機に陥りつつある」と伝えました。日本初の女性首相の座に王手がかかる高市早苗氏ですが、「自民党の過半数議席が縮小している国会の状況によって、その効果が薄れる可能性がある」と指摘しています。

ドイツ語圏の大手紙NZZも「これまで政治的に安定していると思われていた日本が、突如として前代未聞の政権危機に直面した」と指摘しました。高市氏が首相に就く可能性は高いものの、「その準備は予定より長引く可能性がある」とみています。

一方、高市氏にとっては「政界を保守と革新に再編成する契機でもある」と説明しています。より中流階級寄り・リベラル・平和主義的な公明党に対し、自民党内では不満が募っていたといいます。「主に選挙への配慮」から連立が続いてきたものの、夫婦別姓や対中政策、軍事費をめぐり亀裂が深まっていたと説明しました。(出典:24heures外部リンク/フランス語、NZZ外部リンク/ドイツ語)

ABB、ロボ事業をソフトバンクに売却

ソフトバンクグループ(SBG)が8日、スイスの総合電機メーカーABBから産業用ロボット事業を約53億7500万ドル(約8170億円)で買収すると発表しました。SBGが開発する人工知能(AI)と組み合わせ、「フィジカル(物理的)AI」の先陣を切るのが狙いと日本では報じられています。一方のABB側の事情について、スイス・ドイツ語圏の金融メディアcashが解説しました。

記事によると、ABBはロボティクス事業を分離したうえで上場する計画でした。同社のピーター・ボーザー会長は「SBGの提案を慎重に検討し、当初計画していた分離案と比較・検討した」といいます。そのうえで「今回の提案はロボティクス事業の長期的な強みを反映したものであり、売却はABBの株主に即時の価値をもたらす」との判断に至ったそうです。

ABBもSBGと同様、「世界にはAIを基盤とするロボティクスの新時代が訪れている」と考えています。このため「SBGはABBの今後の事業にとって理想的なオーナーだ」と記事は位置付けます。

ABBロボティクスは約7千人を雇用。2024年の売上げは23億ドル(約3500億円)と、グループ全体の7%を稼ぎました。(出典:cash外部リンク/ドイツ語)

日本・スイス、量子技術協力に関する覚書に署名

スイス連邦教育・研究・イノベーション庁(SBFI/SEFRI)のマルティナ・ヒラヤマ長官は9月29日~10月5日、科学視察団を率いて日本を訪問。5日は京都で、城内実科学技術担当相とともに量子科学技術分野における協力覚書に署名しました。イタリア語圏の地方紙コリエーレ・デル・ティチーノがこれを報じています。

「この選択は偶然ではない」。覚書について、記事はこう説明します。「量子技術は通信、サイバーセキュリティ、そして応用研究の未来に影響を与える戦略的分野とみなされている」ためです。スイスと日本の研究機関が協力し、専門知識を共有したり、共同プロジェクトを推進したりする方針です。

記事は「スイスと日本の科学協力は目新しいものではないが、京都で署名された覚書は更なる前進を意味する」と位置付けます。「研究とイノベーションが重要な役割を果たすなか、覚書は未来の技術に焦点を当てたパートナーシップを強化する」(出典:コリエーレ・デル・ティチーノ外部リンク/イタリア語)

スマホ利用の上限2時間

愛知県豊明市で9月、スマートフォンの利用を1日2時間以内とする条例が成立しました。スイスのオンラインメディアwatson.chフランス語版に、小浮正典市長や市民の声を聞いた仏AFP通信の記事が転載されました。条例は「市民に考えさせるための手段」と紹介しています。

小浮市長はインタビューで「スマホの過度な使用による悪影響」、特に人間同士の直接的なコミュニケーションの急減を懸念していると語りました。「電車に乗っていても、みんなスマホに見入っていて、誰も会話をしていない。住民の皆さんに、この問題について改めて考える機会を作りたかった」

時間制限は義務ではなく「推奨」になったことで、市民の間に支持が広がったと市長は説明します。しかしインタビューに答えた学生は、条例は若者にとって「無用または効果がない」と語りました。「今は勉強も娯楽もコミュニケーションも、全てスマホ1つでできる」からです。

一方、ある中学生は1日に4~5時間スマホを使っていましたが、条例が決まってからは「自主的にスクリーンタイムを減らした」と話しました。

記事は、日本人が他の先進国に比べて睡眠時間が短いことも紹介しています。主な原因は長時間労働ですが、スマホのせいで睡眠不足になっていると自覚する女性の声も紹介しました。(出典:watson.ch/フランス語)

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校閲:大野瑠衣子

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