スイス政府、銀行法改正案を閣議決定 海外子会社の資本全額を自己資本で保全
スイス連邦内閣(政府)は22日、UBSを念頭に置いた「システム上重要な銀行」に対する規制強化案を閣議決定した。焦点だった海外子会社への出資については当初案通り、全額相当を中核自己資本(CET1)から控除することを義務付ける。UBSは反発している。
スイス連邦議会はこの銀行法改正案を夏会期(6月1~19日)から審議する。改革案は「Too big to fail(大きすぎて潰せない、TBTF)」規制の強化を目的としている。
連邦内閣は22日、銀行法改正に関する政府通告外部リンクを採択し、議会に送付した。改正案は、大手銀行クレディ・スイス(CS)が事実上破綻し、2023年3月にUBSによる救済合併に追い込まれたことを受け、次なる銀行破綻を防ぐ狙いがある。
カリン・ケラー・ズッター財務相は22日の記者会見で、「連邦内閣の最大の目的は、納税者とスイス経済を護ることだ」と強調した。
対象はUBSのみ
連邦内閣はCS破綻の際、海外子会社への出資が自己資本で十分に担保されていなかったことが要因の一つとなったと判断し、この是正を目指した。CS問題の原因追及を担った議会調査委員会(PUK)の報告書にも対処した。
改正の影響を受ける「システム上重要な銀行」は事実上、UBSしかない。
改正案は、海外子会社への出資比率を親会社が保有する自己資本で100%裏付けることを義務付ける。現行法では、約50%まで負債による資金調達で裏付けることができる。政府案通りに議会で可決されれば、新要件は7年間かけて段階的に導入される予定だ。
政府は22日の声明外部リンクで、「危機に陥った銀行がまだ自立的に動ける段階で、親会社がその自己資本比率を毀損することなく、海外子会社の全部または一部を売却できるようにする」ことが狙いだと説明した。これにより、銀行の破綻リスクを低減できるという。
改正は「妥協案」
連邦内閣は、改正案はスイス国立銀行(SNB、中央銀行)と金融市場監督機構(FINMA、日本の金融庁に相当)の支持を得ており、「妥協案」と位置づけた。例えば自己資本比率そのものの引き上げや、米国事業の分離など主要政党から提案された別の選択肢は「不均衡」だと結論付けたという。
連邦内閣は、改正案によって世界的にシステム上重要な銀行の安定性が向上し、金融センターの強化につながると述べた。納税者への潜在的な損害も軽減されるとした。
資本要件で譲歩も
連邦内閣は同日、資本充足に関する施行令改正も閣議決定した。金融業界や政界からの意見を踏まえ、繰延税金資産とソフトウェアについてはCET1資本による完全な裏付けを義務付けないこととした。ソフトウェアの減価償却期間を欧州連合(EU)と同じ3年間とし、システム上重要な銀行にのみ適用する。
繰延税金資産についても海外の慣例に足並みをそろえた。ただし、外国子会社に対する自己資本要件が「適切に実施されない」場合には、政府は免除を撤回する余地を残した。
施行令については議会の承認は不要で、2027年1月1日に施行される。
政府の試算によると、新規制によってUBS親会社に課される自己資本要件は約200億ドル増える見込み。改正案が2026年1月1日時点で導入されていたと仮定すると、実質的な資本不足額は約90億ドルになるという。連邦内閣は、実際に課される要件や追加すべき自己資本は、今後の金融動向やUSBの戦略にも左右されると述べた。
UBS「スイス経済に重大な影響」
政府の閣議決定を受け、UBSは一連の提案に引き続き断固として反対するとの見解を示した。スイスの金融通信社AWPが22日入手した同行の立場表明書で、改正案が議会で成立すれば「スイス経済に重大な影響を与えるだろう」と強調した。
UBSは、政府の声明には「誤解を招く」記述が含まれていると表明した。同行は現在、すべての文書を精査しており、遅くとも29日に予定する第1四半期決算発表までにさらなるコメントを公表する方針だ。
独語からのGoogle翻訳・追記:ムートゥ朋子
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