最後の「信頼できる」逃避通貨スイスフラン 対ドルで11年ぶり高値
外国為替市場でスイスの通貨フランの対ドル相場が衝撃的な高騰を見せている。27日には2015年以来の最高水準を付け、スイス中央銀行に圧力をかけた。
フランは米ドルに対して10年以上ぶりの高値に急騰した。トレーダーらは通貨市場の最後の「信頼できる」避難先と呼ぶフランに殺到。スイス国立銀行(中央銀行、SNB)を悩ませている。
政治リスクを背景に、投資家が米ドルに代わる安全通貨を探し求めている。このためスイスフランは対ドルで14%上昇した昨年に続き、今年に入ってからも既に3%超上昇。1ドル=0.77フランの節目を突破した。フランは対ドル、対ユーロともに2015年の「フランショック」以来の高値で推移している。
一部のアナリストによると、フラン高騰は年間インフレ率が0.1%のスイスで物価押し下げ圧力となり、さらに続く可能性がある。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のグローバル市場調査責任者、デレク・ハルペニー氏は、この急騰は「スイスフランが世界の投資家にとって唯一信頼できる安全通貨であることを示している」と述べ、「この事実だけでも、今後さらに安全資産としての需要が高まる可能性が高い」と語った。
先週発生したグリーンランドをめぐる政治危機を受け、通貨市場の要であるドルに対する懸念が再燃している。投資家は米トランプ政権の不安定な政策決定と米中央銀行の独立性に懸念を抱いている。同じく伝統的に安全通貨とされてきた日本円も、投資家が日本国債の急落に不安を募らせていることを背景に、不安定な動きを見せている。
そこで最大の恩恵を受けているのはスイスフランだ。フランは政治的・経済的安定と低い債務水準を背景に、歴史的に世界資本の避難先として機能してきた。世界的な資金逃避は別の安全資産である金(ゴールド)にも向かい、金価格は今週、初の1トロイオンス5000ドル台に上昇した。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのスイス担当最高投資責任者、ダニエル・カルト氏は、「スイスフランは金塊のようなものだ」と述べた。「利回りは期待できないが、その背後には堅固な経済基盤がある」
カルト氏は、スイスの貿易相手の大部分が欧州連合(EU)であることを踏まえ、注目すべき主要な為替レートは対ユーロ相場だと指摘した。ユーロが現在の1ユーロ=0.918フランから0.90フラン以下へと下落すれば、スイスの輸出業者にとって打撃となり、スイス当局にとって「困難な協議の引き金となる」だろうと同氏は述べた。
SNBにとっての選択肢の一つは、現在ゼロ金利となっている制作金利を引き下げ、通貨の魅力を低下させることだ。スワップ市場では、トレーダーはここ数日、SNBが6月の会合までに0.25%の利下げを行う可能性を約10%織り込み始めている。
しかし、SNBはこれまで、8年間続いたマイナス金利政策を復活させるつもりはないと表明してきた。
またエコノミストらは、スイスとユーロ圏の金利差が既に大きいことを考えると、小幅利下げではスイス資産の相対的な魅力を下げる効果はほとんどないとみる。それどころか、経済に望まざる刺激を与えることになる可能性があると警告する。
スイスの銀行サフラ・サラシンのチーフエコノミスト、カルステン・ジュニウス氏は「大幅な利下げは、必要がないのに経済を過剰に刺激するリスクがある」と述べた。
投資家らは、通貨に直接介入するという別の選択肢も問題があると指摘する。過去に何度もフラン安誘導のための介入を行った結果、第1次ドナルド・トランプ政権下でスイスはアメリカの「為替操作国」リストに加えられた。その後リストから外されたが、介入再開には問題があるとみる。
SNBは昨年4~6月期、貿易戦争による不安定さの中で小規模な介入を実施した。またアメリカとスイスは9月、競争上の優位性のために通貨に介入しないとの共同宣言を発表した。
この声明は介入が通貨の変動に対処する有効な手段であると認めており、一部の人はスイスによる一定程度の介入をアメリカが容認したと解釈した。
だがあるエコノミストは「SNBは介入方法にもっと慎重になる必要がある」と指摘する。かつてのようにフランの対ユーロ相場に上限を設けることは「声明と相容れない」とこの人物は語った。
SNBはコメントを控えた。
ドル安の恩恵を受けたもう一つの通貨はユーロで、27日に1ユーロ=1.19ドルを超え4年ぶりの高値を記録した。EU当局者の一部は、ユーロが世界市場においてより大きな役割を担うことを強く求めてきたが、直近のユーロ上昇はインフレ抑制の可能性について同様の警告を引き起こしている。
資産運用会社Tロウ・プライスの欧州担当チーフマクロストラテジスト、トマシュ・ウィエラデック氏は「こうした動きはユーロ圏の金融環境の大幅な引き締めであり、欧州中央銀行(ECB)はこれに対抗したいと考えるだろう」と述べた。
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英語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子
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