移動式ホール「アーク・ノヴァ」がスイスに初帰国
東日本大震災の被災者を勇気づけようと建設された移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」がこの秋、親元のスイスに初めて登場する。
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アーク・ノヴァ(箱舟の意)の外見はつやつやした紫色の風船のようだ。最大限に空気を入れて膨らませると、高さは18mになる。2層の膜の間に空気を入れ込む空気膜構造で、外膜は厚さわずか6㎜のポリ塩化ビニル(PVC)でできている。
理論的にはたった10分で「建設」できるが、繊細な素材を傷つけないために数時間かけてゆっくりと膨らませる。金属製ではなく空気で膨らませた骨組みで支える。
アーク・ノヴァの誕生は2011年の東日本大震災にさかのぼる。ルツェルン音楽祭の芸術総監督ミヒャエル・ヘフリガー氏が何か被災地の力になりたいと、友人で音楽事務所を営む梶本眞秀氏に声をかけ、移動式コンサートホールの建設を企画した。
デザインは建築家の磯崎新氏と英国人アーティストのアニッシュ・カプーア氏が手掛けた。完成したアーク・ノヴァは2013年の松島をはじめ、仙台、福島、東京の4カ所で音楽公演の会場に。そしてこの9月、親元のスイス・ルツェルン音楽祭に初めて登場する。
≫ミヒャエル・ヘフリガー芸術総監督のインタビュー(203年)を読む
ヘフリガー氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)に「音楽は希望であり、未来への確信だ」と企画当時の思いを語った。地震・津波の被害が大きい場所でも被災者が生の音楽を鑑賞できるよう、移動式ホールを作ることを考えついたという。
2017年の東京ミッドタウン公演を最後に、日本の倉庫で保管されていた。そして今、9月に開催される音楽祭の舞台となるべく、船とトラックでルツェルンの地を目指している。
アーク・ノヴァは今年の音楽祭で、クラシックからフォーク、ポップスまで様々なコンサート35回(各回45分)の会場となる。
音楽祭の終了後は空気を抜いて折り畳み、再び日本に送られる。その後の稼働は今のところ未定。
独語からの翻訳・加筆:ムートゥ朋子
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