分からない事は星に聞け
スイス北東部に位置するエンゲルスヴィレン。ここに住むウルスラ・リヒティさんはちょっと変わった占星術師である。何しろ、彼女が占うのは動物なのである。
昔はビジネス・マネージャーだったリヒティさんは、星占いが馬、犬、猫などのペットにも当てはまることに注目した。
リヒティさんの所には、自分の馬に運動神経があるかどうかや、飼い犬の調教をどうしたら良いか、などという事について占ってもらいたい客が引きもきらない。農家からは、乳牛が怪我や病気をした後、牛乳を今までどおり出すかどうか聞きにくる。
占いの方法は簡単だ。リヒティさんは動物の誕生日と生まれた土地の情報をコンピュータに入れる。コンピュータにはあらかじめ占星術のデータが入力されている。データの結果を解読するのは少々技術が必要で、リヒティさんはこの分野をより深めるために心理学も学んでいる。「占星術を極めるには、元々の才能と訓練が必要だ」と、リヒティさんは強調する。
出だしから快調
リヒティさんが自分のペットについて考えるために、星占いを用い始めたのは15年前だ。彼女はスイスのドイツ国境に近い静かな農家に、夫と馬2頭、犬2匹と暮らしていたが、ある日、彼女は星占いを自分の馬に試してみた。ところが、これがことごとく当たっていたので非常に驚いたのだった。
この時占いは、彼女の馬、「ジンジャーはジャンプが得意で非常に野心家である」という結論を出したが、それはまさにジンジャーにぴったり当てはまった。それどころかジンジャーの新しいことを学ぶ態度、運動能力についても星占いの示した通りだった。
そこでリヒティさんは資質の高い馬について情報を集め始めた。そしてどのような素質の馬が障害レースに向いているか、または通常の競走馬に向いているかの違いを突き止めた。
競走馬も得意先
馬にのる騎手の性格も重要な要素である。リヒティさんはどの騎手がどの馬に乗った時に最も的確か、という事まで星占いで知ることができたという。
この日からリヒティさんは様々な動物を占ってきたが、彼女の1番の顧客は馬主である。例えば、最近のことでいえば、ある若い馬についてドレサージ(馬術の一種で高い技術が要求される)に向いているかどうか占ってほしいという依頼を受けた。
リヒティさんによるとドレサージに向いている馬は、運動神経が優れているという資質だけではだめで、非常に従順でなくてはならない。これは動物占星術のデータでいえば「地」の要素である。また「火」の要素も必要で、これは馬でいえば強い意志を意味する。ドレサージには、馬自身が強い意志を持って競技に参加するという意識がなければ、良いパフォーマンスにつながらないと言うのだ。
依頼を受けた馬の星回りは、「火」と「空」の間であったため、リヒティさんはこの馬が行動を起こす欲求が強い、勇敢な性格を持っているが、ドレサージのような繊細で小さなことに気をつけなければいけない任務には向いていないと判断した。その代わり、戦場に使う馬ならぴったりだ。
障害競技用の馬を3頭持つカリン・ブレガーさんもリヒティさんの顧客の1人だ。彼女は初めてリヒティさんに馬の身体的な面での分析を頼んだ時、馬の星占いについては非常に懐疑的だった。しかし、実際頼んでみると、その結果があまりに正確なので驚き、それ以来6ヶ月おきに彼女に見てもらっている。
リヒティさんの占星術を使った診断はこんな感じだ。「(3頭のうち)この馬に関してはもっと長い手綱に変えるように、またこの子についてはもっと練習を積ませるように、そして最後の3歳馬はまだ障害競技の馬として人前に出せません」
ブレガーさんはスイスインフォのインタビューに「これは、どうしたらいいか悩んでいた時にどんぴしゃりの診断でした」と話した。
ペットから警察犬まで
馬の次に多いのは犬である。顧客がペットの犬をどのように調教したらよいか尋ねた場合は、彼女はその犬の星を見て、厳しくしつけた方が良いのか、はたまた穏やかに優しくしつけたら良いのか判断する。顧客の1人、ヨランデ・ウルマーさんは2匹目の犬を飼う時に、リヒティさんに占ってもらった。
ウルマーさんは当時を振り返って、「以前から飼っていた犬と新しい犬が、仲良くやってくれるかどうか、飼い主は犬たちに対してどのような態度を取ったら良いか、アドバイスが欲しかったのです」と語った。
リヒティさんの占いでは、「前からいた犬は刺激を好み、今度来たエネルギッシュな新参者を喜んでいる」という結果が出た。「これでどう対処してよいか分かりました。リヒティさんの占いには感謝しています」とウルマーさんは喜ぶ。
占いの対象になるのはペットの犬ばかりではない。遭難した登山客を探す救助犬や警察犬などについても、その犬がこのような職業犬に適しているかどうか占ってほしいという顧客がやってくる。この場合はその犬の持っている星回りに知性や向上心、従順さ、責任感、勇気、主人がいなくても仕事をやり遂げられる資質があるかどうか、ということを見る。
商売繁盛
猫については、犬や馬ほどしばしば持ち込まれることはないが、精神的に参ってしまったように見える時などはリヒティさんのお世話になることがある。
ウサギやネズミについては、まだ占ったことはない。今後リヒティさんの知名度が上がるにつれて予想されるのは、スイスというお国柄、牛に関する占いの依頼が増えるのではないかいうことだ。リヒティさんはテレビ出演も果たし、出版した本も売れている。おかげで占いを頼む電話は鳴りっぱなしだ。
さすがの占星術師も、これほどまでの商売繁盛を星で見ることはできなかったらしい。
swissinfo ジュリー・ハント(エンゲルスヴィレンにて) 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳
リヒティさんは『乗馬のための星占い』を2002年、『飼い犬のための星占い』を2004年に出版している。
リヒティさんはドイツ語圏のテレビにも出演し、顧客はスイス、ドイツ、オーストリア、スウェーデン、フランス、にも広がっている。
- 猫から、犬、馬、牛まで、それぞれの飼い主はウルスラ・リヒティさんの占いを求めてやってくる。
- リヒティさんはスイスインフォとのインタビューで、「占星術によってその馬が障害競技に向くかどうか、その犬が警察犬に向くかどうかを知ることができる」と語った。
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