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カンヌ映画祭 サブプライムとの闘いを映像に

裁判所で証言をするケイス・テイラー氏は、何百ものサブプライムローンを売りさばいたディーラーだった。 Saga Production

「まるで津波に襲われたように」サブプライムに打ちのめされたアメリカの小都市クリーブランド。2008年11月この街の弁護士たちがウォールストリートの銀行を相手取り告訴した。

このコンテンツは 2010/05/16 15:30

この史実をドキュメンタリーにした「クリーブランド対ウォールストリート」がカンヌ映画祭で今日5月16日上映される。監督はスイス人ジャン・ステファン・ブロン氏だ。

swissinfo.ch : 「クリーブランド対ウォールストリート」を制作しようとした動機は何でしょうか。

ブロン : 政治そのものを扱った映画ではなく、さまざまな考えや議論を呼び起こすような作品を制作したいといつも思っています。

実は、3部作を作ろうという構想があります。2003年のドキュメンタリー「ヘルヴェティア( スイス) の特性」はスイスの民主主義を扱った作品で、今回の「クリーブランド対ウォールストリート」は金融と経済に焦点を当て、さらに世界貿易機関 ( WTO ) を中心に政治と経済の関係についての作品「戦争 ( War ) 」を今製作しつつあります。これは2012年に完成します。

swissinfo.ch :「クリーブランド対ウォールストリート」の背後にはどういった考えがあるのでしょうか。

ブロン : 金融システムや経済について映画を作るのは非常に難しいことです。しかし、このウォールストリートの銀行を相手取った訴訟事件を通して、われわれは自由経済市場に賛同する者と家を失った者という、この両者の関係は何だったのかを問い直すことができるのです。

この話は、われわれが生きているこの社会について、さまざまな問いを投げかけます。現在起こっていることをそのまま受け入れられるのか?何かを変えることができるのか?サブプライムローンという抽象的なものから何かを学んだか?などです。

オハイオ州にあるクリーブランドという小さな都市の僅か数人がこうした訴訟を起こそうとしたことは、巨大なシステムの中に飲み込まれている現在の社会の中で、再び自分の生活を自分でコントロールできるようになるではないかという希望を与える一つの実例になると思います。

というのも、毎日経済の話を耳にしながら、これは自分たちに関係しながらも一方で何もできないという失望感を味わっています。この訴訟の話は、行動を起こせば道は開けることを思い出させてくれます。たとえその行動が意味のない小さなものであったとしても。

swissinfo.ch : 今年のカンヌ映画祭 の傾向は何かを告発するような映画が多いと聞いていますが、この傾向をどう思いますか?

ブロン : 今の監督は1970年代のイデオロギーや運動を喚起するような映画に戻るのではなく、ドキュメンタリーを通じてわれわれの生きている社会や時代をについての議論を呼び起こすことを目指しています。われわれはどのように生きているのかと問い直すのです。

swissinfo.ch : クリーブランドのサブプライムローン問題はかなりひどいものだったのでしょうか。

ブロン : クリーブランド市民は、自分たちの街をサブプライムローン危機での「グランドゼロ」とか「地震の震源地」と呼んでいます。その破壊性はまるで津波や地震が襲った後のようです。

swissinfo.ch : 映画の登場人物で「オハイオ州民を強化し、権限を与える会 ( ESOP ) 」の活動家バルバラ・アンダーソン氏は、どういう人でしょうか?

ブロン : 彼女はノーと言う勇気を持った人物です。自分を超える力に対して立ち向かっていきます。彼女の中には何か象徴的なものがあります。曖昧で抽象的な力に対してどのように行動を起こせばよいかを示してくれます。たとえそれが困難で失敗を伴おうとも。彼女の活動でわたしが好きなのは、そういうところなのです。

swissinfo.ch : ESOPのような草の根運動的な団体がアメリカで何かできるのでしょうか?

ブロン : できます。アメリカの民主主義には、あなどれないものがあるのです。それを今回発見して、驚いています。

ESOPは現在90%の成功率でローンの家を取り戻し、クリーブランドでローンの再交渉を展開させています。

かつてアメリカに対するわたしのイメージは利己主義の国で、自分のことしか考えていないというものでした。ところが今回街のさまざまな地区で、地域に根差して活動をしている人々に出会いました。オバマ米大統領でさえ、実はこうした地域運動のバックグランドを持っている人なのです。地域を信じ、そこで何かが出来ると考えている人が多くいます。

それは、アメリカ民主主義の懐の深さでありニュアンスに富んだ点なのですが、権力を問題視するということなのです。もちろん相手のパワーとこちらのパワーの違いに幻想は抱いていませんが。それが、わたしが驚きかつ感動したことだったのです。

サイモン・ブラッドレー、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、里信邦子 )

「クリーブランド対ウォールストリート」のあらすじ

2008年1月11日、クリーブランドの弁護士ジョシュ・コーエン氏と同僚数人は、この街がサブプライムローンで荒廃と化した責任は、21行の銀行にあるとして告訴した。しかしウォールストリートのこれらの銀行は、あらゆる手段を使い、訴訟が成立しないようにした。「クリーブランド対ウォールストリート」は この間の経緯をドキュメンタリータッチで語る。

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ジャン・ステファン・ブロン 氏 ( Jean-Stephane Bron ) 略歴

1969年ローザンヌに生まれる。
1988年から1989年まで、イタリアの「イポテジ」映画学校で学ぶ。
1989年から1994年まで、ローザンヌの芸術、映像学校 ( DAVI ) で学び、学位取得。
作品に1999年作の「善い行動」、2001 年の「逃亡」、2003年の「ヘルヴェティア( スイス) の特性」、2006年の「兄の結婚」、2009年の「トレーダー」などがある。

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