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スイスでスペシャルプレーヤーを演じる スイス野村バンク

今野優社長。アメリカ、オランダの駐在を経て2004年8月からチューリヒ本店の社長を勤める swissinfo.ch

スイスといえば、時計、チョコレートそして銀行。金融の街チューリヒの目抜き通りを歩くと、UBSやクレディ・スイスのほか、いたるところに銀行の看板を見かける。

このコンテンツは 2006/08/30 15:26

80年代のバブル最盛期には、大手の銀行や4大証券会社をはじめ、準大手の金融機関も日本からこぞってスイスへ進出。チューリヒやジュネーブに支店を構え華やかに営業活動を行った。しかし、チューリヒに残るのはいまや3行のみと、その数は激減した。

1975年からスイスの金融業界に参入し続けたスイス野村バンク。かつてチューリヒとジュネーブをあわせて330人の従業員を抱えていたが、現在はおよそ50人に縮小した。しかし今も「スペシャルプレーヤー」としてチューリヒで業務を続ける意義はあるという社長の今野優 ( こんの まさる ) 氏 ( 47歳 ) に、その理由を聞いた。

swissinfo : 現在のスイスでの業務内容を教えてください。

今野 : 日本株とアジア株に特化したブローカー業務です。スイスはUBSとクレディスイスといった2大銀行に代表される金融の国です。スイスの金融機関は、スイス内外に住む個人客の資産を運用していますが、野村はそういった個人を対象とするのではなく、スイスの銀行、投資顧問、機関投資家といったプロフェッショナルが顧客です。金融の専門家にリサーチのサービスと有価証券の売買のお手伝いしています。

swissinfo : バブル全盛期には日本企業がこぞってスイスで起債をしましたが、今はどうでしょうか?

今野 : 時代の流れがあって、重要性が変わって来たと思います。

日本の景気が良かった頃は、日本の投資家や事業法人などが海外で資産を運用しようとしました。その頃は野村も、アセットマネージメント、プライベートバンキング部門などでそのニーズに応えようとしました。現在も組織としては残っていますが、日本の景気が悪くなった過去十数年の間、こうしたニーズは、相対的に低下しました。

そこで、日本株だけではなくアジア株のニーズを捉えようとして、アジア株を手がけたことが現在の特徴です。日本では核となる、株のブローキングビジネスは時代を超えて継続しています。

swissinfo : スイスに進出した日系金融機関のほとんどがスイスから撤退しました。IT技術が発達した現在、スイスにオフィスを構えて業務を続ける意味はあるのでしょうか。

今野 : ここに存在し続ける意義は、ローカルコミュニティーに対するコミットメントです。( スイスで業務を展開し ) スイスの銀行のニーズに応えることがビジネスになると思っていますし、実際、ビジネスとして成り立っています。

スイスには魅力があります。スイスは小さい国ながら、膨大な金融資産が運用されています。過去10年間、スイスに流入する資産は拡大する一方です ( 要約を参照のこと ) 。スイスの金融業は、国にとっての基幹産業です。基幹産業に携るビジネスは、重要度が高いと思います。

swissinfo : 日本の景気が良かった時代、日本からスイスに70社ほどの金融機関が進出していたわけですが、現在、その多くが撤退し、ロンドンからオペレーションをしています。

今野 : スイスでは、日本の金融機関が圧倒的に数を減らしたのは事実です。しかし、外国銀行の数は、大きく減っていません。ほかの国からの進出があるからです。つまり、この国の魅力は減っているわけではないのです。

90年代後半から、まず、英米の金融機関の合併・統合が起きました。スイスでもSBCとUBSが合併し、プライベート銀行が合併したりしました。業界内の動きから、数だけで見ると減少しているかもしれませんが、スイスでの運用資産は増えている上に、競争は激しくなっています。

競争が激しくなる背景は、高い質のサービスを顧客が求めているからにほかなりません。より高度なテクニック、IT技術、必要なリサーチ、ビジネスインフラなど高度なものが、われわれに求められています。

swissinfo : インターネットを通しての株の売買が盛んになってきました。

今野 : インターネットの利点を最大限に享受しているデートレーダー的ビジネスモデルは、アメリカや日本など、大きな市場を抱えるころでは、いまや厳然たる勢力になりつつあります。しかし、スイスでは個人投資家が少なく、そういった内需は小さい。

こうしたプロは、情報過多にあります。よって、彼らの欲する情報をいかにして提供できるかがポイントです。忙しく時間がないような人たちは、信用のおける人間と話をし、じっくり自分のアイディアを固めたいと思っているのです。決してITを凌駕 ( りょうが ) するのではありません。プロを相手にするビジネスモデルの中では、対面式の、じっくり話をするようなやり方が、この国ではまだ生きているのです。

swissinfo : スイスの金融についての意見を聞かせてください。

今野 : 銀行業はこの国にとって重要な産業で、スイスは銀行業を成功させています。その利点を享受しながら、わたしたちも業務を展開しています。スイスが金融で成功することは、ありがたいことです。

一方で、UBSやクレディ・スイスなど世界の主要マーケットには野村も進出しているわけで、お互い競合の関係にあります。しかし、またスイスにおいては、こうした銀行との関係は過去30年の間続いていて、わたしたちの顧客でもあるわけです。大手銀行の役員の1人が「野村はコンペティターでありオールドフレンドだ」と言ってくれました。こうした人間的な味わいのある人がスイスには残っていることは、ありがたいことです。

swissinfo : よくスイス人は勤勉だと評価されますが、銀行マンは特にまじめでしょうね。

今野 : スイスの銀行業界が成功しているがゆえに、そこで働いている人の質は高いですね。とりわけ労働意欲、倫理があります。それは、この国の歴史であり、銀行・金融界が歩んできた歴史の賜物なのでしょう。金融機関で働きたいと思うスイス人は、平均以上の質が要求されると思って応募してくるのでしょうし、その要求に耐えられる人が応募してきます。

ただしウォール街で働く人たちと比べるのは酷です。ウォール街には、大成功を目的に金のがりがり亡者もいます。コンクリートしかないところで、モニターに向かってサンドイッチを食べながら仕事をしているのです。相当タフでないとウォール街では働けないでしょう。

しかし、自然に囲まれて育ったスイス人の中で、ウォール街で働きたいと思っている人は意外に少ないはずです。それでもスイスの金融界には、競争に十分耐えうる銀行マンが働いています。

swissinfo、聞き手 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

補足情報

<スイス野村バンク>
1975年 ジュネーブに進出
1978年 チューリッヒ支店設立
1985年 本店をジュネーブよりチューリヒに移動
従業員 チューリヒとジュネーブ合わせて54人

資本金120,000,000フラン
総資産 415,746,123フラン
純利益 15,669,359フラン
( 2005/2006年 業績報告書より)

<スイスの金融機関>
- 2005年における銀行数337行。このうち外国資本の銀行は122行。

- スイスの銀行が顧客から預かっている有価証券総額
2002年 2兆8510億フラン
2003年 3兆2110億フラン
2004年 3兆4450億フラン
2005年 4兆3340億フラン
( いずれもスイス国立銀行の資料 )
レート 1フラン=約95円

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