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スイス国連加盟 内外各紙の反応

スイス国連加盟承認を歓迎する各紙 swissinfo.ch

4日付けの内外の新聞は、3日に行われた国民投票でスイス国民が過去の孤立主義政策に決別し国連加盟を決断したことを歓迎した。

スイス国内紙では、仏語各紙が国連加盟歓迎色の濃い報道となっている。ラリベルト紙はスイスが遂に世界の「lone ranger」としてのイメージから脱却でき安堵したと表現した。ルテンプ紙は「投票結果は国連にとっては小さな一歩で、スイスにとっては大きな一歩だ。スイスは国連内で人権と少数民族の権利を守るために重要な役割を果たしていく。」とスイスの決意を表明した。独語タブロイド紙のブリックは、「国連加盟承認!我々もその一員に!」と一面トップで歓迎記事を載せた。一方、ノイエ・チューリッヒャー・ツァイトゥン紙は、「投票結果はあまりにも僅差での承認だった。一時代の終焉としてではなく、正常化への一歩として受け止めるべきだろう。」と冷静な見方を示した。ターゲス・アンツァイガー紙は、「国連加盟承認は永世中立の神話を打ち砕いた。スイスでも遂に冷戦が終った。」とした。

諸外国の新聞報道では、ニューヨークタイムス紙「スイス国民の驚くべき多数が国連加盟を支持したのは何十年もの孤立主義からの脱却への歴史的な一歩」と評価。ファイナンシャルタイムス紙(ロンドン)は「スイス外交の転換期。スイスは特別だという建国以来の見解が変わった。スイスは国際的な責任を分担したがらない国という評判は、これでなくなるだろう。冷戦が終り、ベルリンの壁が崩壊して以来、世界は政治的に孤立したスイスに外交の仲介をしてもらう必要が無くなった。スイスの人道主義の伝統とすでに国連の最大財政貢献国の一つであるという実績からも、各国はスイスの国連加盟を歓迎する。」と、世界情勢の変化とそれに対応しようとするスイス国民について分析した。ウォールストリートジャーナル紙は、スイスの定義と世界での位置付けなど投票に内在した諸問題に焦点をあてた。「スイスの強烈な独立心が長年国連でオブザーバーとして以上の関わりを持つのを妨げてきたが、今回の投票で国民の意識に変化が起きていることが証明された。欧州連合(EU )加盟への意思も示すシグナルでもあるのではないか。」。ガーディアン紙(英)も、国連加盟を承認した国民投票の結果はスイスのEU加盟への意思も示したものと受けとめ、「世界から隔離したアルプスの安息の地伝説」の終焉だとした。

また、各紙とも、今回の投票でも独語州と仏語州の差違が改めて浮き彫りにされたことに注目している。仏語州では平均66.9%が賛成だったのに対し、独語州では67.5%が反対票を投じた。投票前の加盟反対キャンペーンの主導者として各国の報道で取り上げられたスイス人民党のクリストフ・ブロッハー議員にとって、加盟承認は痛烈な打撃となった。スードドイチェ・ツァイトゥン(南ドイツ新聞)は「世界へようこそ」との見出しで、投票結果はブロッハー議員の反国連キャンペーンで展開した主張が国民に根拠のないものと一蹴されたものと決めつけた。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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