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スイス識者に聞く核戦争の可能性と脅威

nebbia rossa statue
実際に核兵器が使用される可能性は低いとされるが、核の脅威は確実に高まっている Copyright 2016 The Associated Press. All Rights Reserved.

現代の核兵器は第二次世界大戦で投じられたものよりもはるかに小型で正確、強力になった。スイスの専門家は、核戦争に至る可能性は低いものの、もし使用されれば、欧州全体に壊滅的な被害をもたらすと話す。

ウラジミール・プーチン大統領はウクライナ侵攻を始めた先月24日、ロシアの軍事行動を妨害する者には「歴史上経験したことのないような結果」をもたらすと警告した。世界中が核戦争の脅威に震撼し、ソビエト連邦がキューバに弾道ミサイルを配備した60年前に時計の針を巻き戻した。その後、世界は核軍縮への取り組みを進めてきたが、ロシアの核開発を止めることはできず、今やロシアは世界最大の核保有国となった。その保有する6千発の核弾頭は、世界の既存の核兵器のほぼ半分に相当する。

米国が広島と長崎に世界で初めて核爆弾を投下した1945年以降、核技術は大きく進化した。高機能化し、長距離でも正確に標的を狙ったうえで、広範囲に甚大な破壊力をもたらすことが可能になった。   

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1945年以来、核兵器技術はどう進化してきたか

1945年に広島に投下された原爆は重さ約4500キログラムで、10万人を超える死者をもたらした。時と共に技術は進化し、核兵器は著しく小型化した。今日の核兵器は平均してわずか数百キロの重さながら、何百万人をも殺傷する能力がある。小型化にともない運搬手段も多様になり、弾道ミサイルや巡航ミサイルなど、さまざまな手段で世界中のいたるところを原資攻撃することが可能になった。

連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)安全保障研究センター(CSS)のスティーブン・ヘルツォーク氏は「これらの兵器の多くは昔に比べてずっと小さくて軽く、操作しやすくなった。更にその破壊力ははるかに大きくなった」と指摘する。ロシアが現在保有する核兵器の一部は、広島・長崎に投下された原爆の50倍以上の破壊力を持つという。

ロシアはどのような核兵器を持っている?

ロシアは多様な核兵器を持ち、陸、海、空の運搬手段を使用して攻撃できる。いわゆる「核の3本柱(トライアド)」で、米国や中国にも備わっている。陸上は弾道または巡航ミサイルで、一部は米中など非常に遠い目標に到達できる。欧州大陸を対象とする短距離型もある。

海上発射ミサイルは水中に隠され、見つかりにくい潜水艦から発射する。重い爆弾はこれまで同様、長距離を飛べる戦略爆撃機で空輸される。核の3本柱を確保すると、優れた戦略的能力と柔軟性、そしてより大きな抑止力を持つことができる。また分散型であることによって兵器庫の保全能力も上がり、戦争で破壊されにくくなる。

どんな種類の核兵器がどのように使用される?

戦略核は一般的に都市を標的にする。「だが海上基地や海軍空母など、大規模で重要な軍事資産を標的にも使用できる」(ヘルツォーク氏)。

一方、戦術核は戦場で「兵力を均衡化」するために設計された破壊力が低めの兵器だ。ロシアは推定1900発の戦術核兵器を保有している。

どんなシナリオがありうる?

CSSのアレクサンダー・ボルフラス氏は、ロシアがウクライナやその支援国への核攻撃開始を決定した場合、おそらく破壊力の強い戦略核ではなく戦術核が戦場に投入されるとみる。米国がそれを北大西洋条約機構(NATO)への直接攻撃と解釈する可能性があるからだ。

ボルフラス氏は、大規模な攻撃を受けた場合はNATO同盟国が抑止を効かせる可能性があると指摘する。そのためロシア軍は戦術核を使用することで、ウクライナの飛行場などの軍事施設を破壊したり、紛争で配備されているミサイルに核弾頭を搭載してウクライナ政府に脅しをかけたりすることができる。

計画された攻撃だけではなく、核弾頭の輸送や原子力発電所付近での戦闘で事故が起こる恐れも覚悟しなければならない。実際、ロシア軍はウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所を制圧した。原発の建物を射撃し原子炉に損害を与え、欧州全域の安全に対する深刻な脅威となった。

核を巡る緊張と警戒状態に置かれた核兵器は、誤算や紛争の混迷を招く一因となっている。

今日の核兵器がもたらす被害の大きさは?

前出のヘルツォーク氏は、ロシアが保有する核兵器全てを投下すれば地球の一部は居住不可能になるとみる。投下される兵器がほんの一部でも、長く壊滅的な結果をもたらすという。

「核爆発の衝撃波によって大気圧が過剰に高まり、硬化した鉄筋コンクリート製の建物を除き、最大数十キロメートル離れた建物全体を破壊できる」(ヘルツォーク氏)

がれきや建物の倒壊によって何十万人もの死者・負傷者を出す可能性がある。更に爆発で可視光線、赤外線、紫外線が生じ、それらが組み合わさって巨大な高温の火の玉を生成する。爆破よりも広い範囲で最も重いⅢ度のやけどを引き起こしうる。

また汚染された地域では、放射性降下物に被曝し、腫瘍や先天性欠損症を引き起こす可能性がある。

世界の他の地域にはどのようなリスクがある?

今日の核兵器技術は、長距離でも大都市全体を一瞬にして壊滅させる威力を持つ。ヘルツォーク氏は「アメリカの主要都市はすべて30分で破壊される可能性があり、欧州のNATOの主要都市は20分もあればすべて弾道ミサイルで到達できる」と指摘する。

中立国であるスイスとオーストリアが狙われるリスクは低いが、放射線の影響はスイスを含む欧州大陸全域に広がる可能性があり、「規模としては原発のメルトダウン(炉心溶融)相当になる」(ヘルツォーク氏)

核攻撃の可能性はどのくらい高いのか?

今のところロシアが核兵器を使用する可能性はまだ低いが、ゼロではない。プーチン氏は核兵器よりも先に化学兵器の使用を決断する公算が大きい。同氏が化学兵器をタブー視していないことに加え、「誰に責任があるか明白な核兵器に比べ、ウクライナ軍に責任をなすりつけやすい」(ヘルツォーク氏)からだ。

だが進行中の戦争はロシア・ウクライナ間にとどまらず、ウクライナを物資や諜報活動で支援する西側諸国も当事者であることを忘れてはならない。戦争がエスカレートする可能性は排除できない。核の脅威の恐ろしさはそこにある、とヘルツォーク・ボルフラス両氏は口をそろえる。

2017年に採択され、2021年1月に発効した国連の核兵器禁止条約は、核兵器の使用や威嚇、開発、実験、保管を拘束力を持って禁止した初の条約だ。

これまでに86カ国が署名したが、スイスは未署名。核保有国はいずれも署名していない。

(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)


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