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ゴッタルドベーストンネル、開通から10年

全長57.1kmのゴッタルド鉄道トンネルは世界最長の鉄道トンネルだ(画像は北側入口)
全長57.1kmのゴッタルド鉄道トンネルは世界最長の鉄道トンネルだ(画像は北側入口) Keystone / Alexandra Wey

ゴッタルドベーストンネル(基底トンネル)は、アルプス越えの所要時間短縮、乗客や貨物の鉄道利用の促進という期待に応えることができただろうか?開通から10年の歳月が経過した今、世界最長の鉄道トンネルにまつわる数字をいくつか紹介する。

2016年6月1日に行われたゴッタルドベーストンネルの開通式には、スイスのヨハン・シュナイダー・アマン大統領だけでなく、イタリアのマッテオ・レンツィ首相、フランスのフランソワ・オランド大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(いずれも当時)など欧州各国の首脳が多数出席し、ヨーロッパ北部と南部を結ぶ同プロジェクトの重要性を印象づけた。

開通から10年が経過した現在、全長57.1km、世界最長を誇るゴッタルド鉄道トンネルは、アルプスを縦断する貨物および旅客輸送の中核インフラとなっている。だが、特に貨物輸送の道路から鉄道への転換(モーダルシフト)という観点において、同トンネルは果たして当初の期待に応えることができたのだろうか?

SWI swissinfo.ch

1日あたりの乗客数は1万6400人

ゴッタルドを列車で縦断する乗客数は、この10年間でほぼ倍増した。スイス連邦鉄道(SBB/CFF)によると、1日あたりの平均利用客数は2015年の9000人から2025年には1万6400人へと増加している。

新たなベーストンネルの開通は、イタリアへ向かう乗客数の増加にもつながった。連邦鉄道はミラノ〜チューリヒ間の乗客動向に関する具体的なデータを公表していないが、長距離国際列車でイタリアへ向かう乗客の数は、2016年から2023年の間に160万人から230万人へ約50%増加した。

連邦鉄道によると、2024年は「様々な建設プロジェクトのため」わずかに減少した。なお2023年8月に起きた列車脱線事故後、ベーストンネルを構成する2つの路線のうち1つが1年以上閉鎖されたままだった。

しかし2025年には、国境を越えてイタリアへ向かう乗客の数が再び増加を見せ、前年比6%増の約214万人となった。

ゴッタルドベーストンネル内で脱線した車両。2023年9月6日撮影
ゴッタルドベーストンネル内で脱線した車両。2023年9月6日撮影 Keystone / Urs Flueeler

1日あたり155本の旅客・貨物列車が運行

乗客数が増加する一方で、トンネルを通過する列車の本数そのものは減少している。2025年は1日あたり155本の列車(旅客66本、貨物89本)が通過した。10年前は、1日あたり174本の列車が旧ゴッタルドトンネルを通過、旅客列車と貨物列車の割合は半々だった。

現在の列車は、車両編成が増えているか、あるいは2階建車両となっているため、2015年まで旧山岳路線を走っていた列車よりも輸送能力が大きくなっている。これが可能となったのも、アルプスの急勾配を走ったり、急カーブの難所を越えたりする必要がなくなったからだ。

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チューリヒ〜ミラノ間は3時間17分

ゴッタルドベーストンネル建設の主な目的の1つは、アルプスを越える移動時間を短縮することだった。現在、列車は時速約200kmで走行しており、これは旧トンネル時代のほぼ2倍の速度にあたる。

チューリヒで直通列車に乗車した乗客は、遅延や不測の事態がなければ、3時間17分後にミラノに到着する。10年前、同区間の所要時間は4時間を超えていた。ゴッタルドベーストンネルに加え、2020年9月に全長15.4kmのチェネリベーストンネルが開通したことで、所要時間のさらなる短縮が実現した。

しかしこれは1992年時点、すなわちゴッタルドベーストンネルとチェネリベーストンネルを含む「アルプス縦断鉄道計画」をスイスの有権者が国民投票で承認した時に想定されていた、約2時間という当初の目標にははるか及ばない。「構造上、2時間での移動は不可能だ」。連邦鉄道の広報担当官パトリック・ワルサー氏は、スイス公共放送のイタリア語圏向けポータルサイトtvsvizzera.it宛てのメールでそう回答した。

連邦鉄道は、チューリヒ〜ミラノ間の所要時間を約3時間に短縮したいと考えている。「現時点で分かっている情報に基づけば、これが実現するのは早くても2030年代になるだろう」とワルサー氏は言う。そのためには、キアッソ〜ミラノ間の線路整備に加え、チューリヒとツークを結ぶツィンメルベルクベーストンネルの完成が必要になる、というのが同氏の説明だ。

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年間およそ1800万トンの貨物

列車の長さが伸びたことは、ゴッタルドベーストンネルを通る列車による貨物輸送量の増加も意味する。最新のデータに基づけば、貨物総量は2015年の1530万トンから2024年には1790万トンへと上昇している。

この数字からわかるように、ゴッタルドはスイスのアルプス縦断鉄道輸送の基幹ルートとなっている。2024年には、アルプスを越える鉄道貨物輸送量の69%がゴッタルドを通過した。なお残りの31%はシンプロントンネル経由だ。

アルプス越えのトラックは96万台

道路貨物輸送から鉄道貨物輸送への転換に関しては、1992年当時「アルプスを越える国際貨物輸送の大部分を道路から鉄道へ転換できる」という期待があった。だがこれは未だ完全には満たされていない。

現在、スイスではアルプスを越える貨物の約70%外部リンクが鉄道によって輸送されている。近隣諸国と比較すれば、顕著に高い割合だ。例えばオーストリアの2024年の数値は約26%だった。

しかしながら、アルプスを越える大型貨物車両の台数は、依然として65万台に設定された上限を上回っている。この上限値は、1994年に「増加するトラックでの貨物輸送からアルプスの環境を守る国民発議(アルプス・イニシアチブ)」が国民投票により承認されたことを受け、法律で定められたものだ。2000年代初頭から見られた道路貨物輸送量の減少傾向は、ゴッタルドベーストンネル開通後も続いたものの、2020年の86万3000台を下回ったことはこれまで一度もない。

近年では増加傾向さえ見られ、2024年にはトラック数が96万台に上った。連邦運輸省交通局(BAV/OFT)が2025年後半に発表した報告書では、貨物輸送の道路から鉄道への移行が過去2年にわたり停滞していることが示されている。2022年から2024年にかけて、アルプスを越える鉄道貨物輸送量は9.3%減少した。

主な要因は、国外からスイスのアルプス越えルートへ至るアクセス路線で遅延が発生していることであり、それらの路線でインフラの近代化および拡張工事が進んでいないことにある。アルベルト・レシュティ運輸相は、ドイツとイタリア側からのアクセス路線の整備が完了しない限り遅延が続き、道路輸送と比較した鉄道の魅力や競争力の低下は避けられないと見ている。

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効率的な鉄道インフラなくして、効果的なモーダルシフトと管理は成りたたないと、アルプス・イニシアチブを前身とする環境保護団体プロ・アルプス(Pro Alps)は強調する。そのうえで、同団体のカトリン・ドルフシュミット代表は、「インフラだけではトラックからのシフトを実現することはできない」と指摘。プロ・アルプスは直近の決議を通して、連邦政府および議会に対し、「貨物輸送のための公正な枠組み条件」を整備するよう求めている。

それでもゴッタルドベーストンネルおよびその他のアルプス縦断ベーストンネルは、道路から鉄道へのシフトを促進するための他の施策外部リンクの効果と相まって、貨物輸送全体の増加の一部を吸収することができた。運輸省交通局の試算では、これらのインフラがなければ、年間でさらに約80万台外部リンクのトラックがアルプスの峠を通行することになるという。

旧山岳路線は1日に1500人の乗客

2016年のゴッタルドベーストンネル開通以降も、旧ゴッタルド鉄道トンネル(山岳路線)は廃止されなかった。以来、この路線は観光名所として新たな役割を担っている。

連邦鉄道の観光列車「ゴッタルド・パノラマ・エクスプレス」を除き、旧山岳路線は2020年以降、スイス南部鉄道によって運行されている。同社によると昨年、ウーリ州のゲシェネンとティチーノ州のアイロロを結ぶ旧ゴッタルドトンネルを通過する列車の乗客数は、1日平均1500人超に上った。

連邦鉄道もまた、1882年に完成した旧山岳路線は今日でも重要な役割を果たしており、何らかの理由でゴッタルドベーストンネルを閉鎖せざるを得なくなった場合には、有効な代替ルートになると考えている。

開通から10年が経過したゴッタルド鉄道トンネル。ヨーロッパの交通網の要となっている一方で、その潜在能力はまだ完全には発揮されていない。

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編集:Daniele Mariani、英語からの翻訳:鈴木ファストアーベント理恵、校正:大野瑠衣子

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