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スイスのドラッグクイーン、中国で弾圧の壁に直面

スイスのドラッグクイーン「ソーヤ・ザ・カウ」。ステージパートナーの「ピアノ・プリンス」とともに、中国・昆明での公演を実現にこぎつけた
スイスのドラッグクイーン「ソーヤ・ザ・カウ」。ステージパートナーの「ピアノ・プリンス」とともに、中国・昆明での公演を実現にこぎつけた SRF/Samuel Emch

中国では、性的マイノリティのアーティストが活動できる場が次第に少なくなっている。チューリヒ出身のドラッグクイーンも、その現実を身をもって知ることになった。

男性が女性の服装や化粧を誇張して演じるパフォーマー、ドラッグクイーン。中国南部の都市・昆明にある小さな会場では「ソーヤ・ザ・カウ」がリハーサルの真っ最中だった。チューリヒ出身のこのドラッグクイーンは、自分のことを「ドラッグ・カウ」と呼ぶ。動物や、動物界における同性愛を人間がどのように扱っているかがショーの主題だ。だが、その日の午後にショーが実現できるかどうかは、全く不透明だった。

ドラッグクイーンのダニエル・ヘルマン氏は「ツアーは上海が皮切りでしたが、そこではパフォーマンスがキャンセルされました」と語る。会場側の説明では、次の展示の準備を行うため、パフォーマンスの予定日に会場が必要になった、とのことだった。「もちろん、体のいい言い訳でしょう」。その後も、複数の会場がドラッグクイーンの出演を断ってきた。ヘルマン氏はステージパートナーの「ピアノ・プリンス」とともに、代わりの会場を必死に探し続けた。「本当に、障害物競走のようでした」

当初予約していた会場は、相次ぎ「ソーヤ・ザ・カウ」の出演を断ってきた。チューリヒの姉妹都市、昆明も同様で、主催者側は警察から問い合わせあったとの理由でキャンセルされた。

スタッフが代わりの会場を見つけてきても、「結局そこもキャンセルになって、本当に先が見えませんでした。一体、どこなら公演ができるだろうと途方に暮れました」とヘルマン氏は振り返る。

弾圧の傍ら、救世主現る

中国ツアー中、ヘルマン氏は繰り返し矛盾に直面したという。「あれだけ問題が続いた後に、たくさんの同業アーティストに出会ったのです。もう、笑うしかありませんでした」。そのうちの1人は、昆明で30年間ドラッグクイーンをしてきた人物(57)だった。「どうやってパフォーマンスを続けてきたのかと尋ねたら、『大抵は、政府からHIV予防キャンペーンの依頼で』と教えてくれました」

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飴とムチは、中国では平行して存在することもある。「一見しただけでは分かりにくい、複雑なグレーゾーンがあります」とヘルマン氏は話す。

政府の保守的な価値観に反する文化

一方で、比較的分かりやすいのは、ジェンダーやセクシュアリティの多様なLGBTQ+のサブカルチャーへの弾圧が強まる反面、後押しする存在が減っていることだ。特にここ数カ月~数年でその傾向が顕著になっている。上海出身で国際的にも有名なあるドラッグクイーンは「上海では6カ月以来、全く舞台に立てていません。不可能だから。ドラッグクイーンはデリケートなテーマです」と語る。

「デリケート」なのは、ドラッグクイーンが政府の保守的な社会観と相いれず、西洋的で退廃的な価値観を表していると考えられているからだ。ほんの数年前までは、毎週上海のどこかでドラッグショーが開かれていた。LGBTQ+の権利や多様性への理解を深めるプライド月間中には多くのイベントが催され、LGBTQ+コミュニティは公共の場で存在感を示していた。

「2019年、大手国際ブランドのCMを撮影したのを覚えています。上海で最も有名なショッピング街にある巨大スクリーンで放映されました」と、上海出身のドラッグクイーンは語る。「ブランド企業は毎年、プライド月間のキャンペーン広告に私たちに声をかけてくれました。それが、(新型コロナウイルス感染症の)パンデミックが終わってわずか数年で、ぱったりと途絶えてしまいました」

今、この上海出身のドラッグクイーンが活動できるのは海外だけだ。ドラッグショーだけでなく、ゲイバーやレズビアンバーも閉鎖された。LGBTQ+のイベントは禁止され、同性愛に関連した展示も当局によって差し止められるようになった。

昆明の会場に話を戻そう。地元のコミュニティに詳しい人々の協力や、柔軟に対応した主催者たち、そして追加の安全対策のおかげで、スイスのドラッグクイーンはついに出演にこぎつけた。ショーはある日の午後遅く、外の光と好奇の目を遮るため窓を覆ったバーで幕を開けた。中国人の観客は熱狂した。

ある来場者は「とても気に入りました。セクシーで、クレイジーで、ユーモアにあふれていました。他にも良い点がたくさんありました」と語った。まだ興奮の余韻に浸っている様子の女性来場者は、怖かった、とも話す。「警察が来て、パフォーマンスを中止させるのではないかと思いました。それが本当に心配でした。私たちのコミュニティでは、ソーシャルメディアに何も投稿できません。投稿するとすぐに誰かが『そんな活動は許可されていない』と言ってくるからです。だからこそ、このパフォーマンスが行われて本当に嬉しい」

度重なる妨害にも負けず、中国のLGBTQ+コミュニティは今も活動を続けられる場を切り開いている。しかしその空間は、確実に小さくなっている。

ドイツ語からの翻訳・校正:シュミット一恵

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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