2025年事業報告書
SWI swissinfo.chの読者の皆様に、2025年の事業報告書をお届けします。
2025年は不透明な情勢や国際的緊張の高まりを背景に、ニュースや出来事を整理し理解したいというニーズが高まった年でした。こうした状況のもと、SWI swissinfo.ch(以下スイスインフォ)はスイス公共放送協会(SRG SSR)の国際部門として、多言語かつジャーナリズムの独立性を備えたメディアとしての役割をさらに明確にしました。
読者数も大幅に増加し、アクセス数は約4900万回、ユニークユーザー数は約3700万人に達しました。リピーターも増加を続けています。これは、スイスの視点を国際的な読者に向けて整理・解説し、より大きな文脈の中で提示するメディアが求められていることの表れです。
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2025年の実績
2025年、スイスインフォはスイスが国際的に大きく取り上げられたトピックに着目しました。とりわけ地政学的な変化や、中立と安全保障、国際外交、経済と金融業界、気候や自然災害、技術革新、そして民主的プロセスと国民投票について重点的にお伝えしました。他にも、在外スイス人が実用的な情報や指針を得るための情報源として、あるいはスイスとの繋がりを保つ場として、読者のニーズにマッチしたサービスや解説、話題を提供しています。
10言語でスイスを世界に「発信する」だけでなく、「理解できる」形で伝えるスイスインフォは、2025年も高いレベルの影響力を維持しました。政治や社会、経済の動向を、独立した視点、かつそれぞれの言語圏の文化的背景やメディア環境に適した形で解説することで、信頼性が高く多面的かつ、国際社会と足並みが揃ったスイス像の形成に大きく寄与しています。
2025年事業報告書では、過去1年間にスイス国内外のどんなトピックが最も関心を集め、議論を呼んだかを、スイスインフォが扱う10言語圏ごとに特徴をまとめました。
ドイツ語
スイスインフォがスイスに関する話題をドイツ語で発信し始めたのは、1930年代に遡ります。スイスインフォのドイツ語版は、世界中の在外スイス人が祖国との繋がりを保ち、社会参加できる場を提供しています。
ドイツ語は、長きにわたりスイスの国外向けサービスの中核を成す言葉でした。スイスインフォ初期の短波ラジオ放送時代から、ドイツ語は在外スイス人と祖国の橋渡しとなり、民主的、連邦制的、独立国家としてのスイスを世界に発信する役割を担ってきました。そしてデジタル空間に移行した今日でも、同じ役目を果たしています。ターゲットは、スイスを遠くから見守りながら、政治的、法的、あるいはその生い立ちからスイスと強い繋がりのある読者です。
また在外スイス人に加え、外国への移住を計画している人たちや、スイスでの暮らしや権利、帰属意識に関して具体的な問題意識を持っている人たちもドイツ語版の重要な読者層です。スイスインフォはこうした読者に対し、方向性、解説、スイスとのつながりを提供しています。政治参加や実用的な情報、そしてスイスとの結びつきがより強く求められる環境下で、私たちは大きな役割を果たしています。
帰属意識や市民権、そして在外スイス人の生活実態に関する記事がよく読まれるのは、状況を理解し、生活環境の変化に対応するための情報へのニーズの表れです。特に、スイス人の親を持つ国外退去の危機に直面する記事や、国籍を失ったスイス人に関する以下の記事は、大きな反響を呼びました。
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ニーズの高さは、利用状況にも表れています。2025年、スイスインフォのドイツ語版の訪問数は33%増加。この伸びは在外スイス人に向けたサービス拡充と連動しています。スイスインフォは特に、外国からの政治参加を容易にし、外国生活で生じる疑問や、スイスの動向を分かりやすく、日常生活に即した視点で伝えることに重点を置きました。その結果、スイスの選挙や国民投票に参加する情報や、市民権、身分証明書、銀行関連の問題といった日常生活に欠かせない情報に加え、スイス独自の文化を解説し、距離を越えてスイスとの関係を保つ記事は、幅広い読者層に届きました。
ドイツ語版の読者は、複数の媒体を通じてこうしたサービスを利用しています。ウェブサイトに加え、ニュースレターやリニューアルしたSWIplusアプリなど、生活状況やライフステージの変化に適したコンテンツ形式が重視されるようになりました。その1つが、2025年にスタートした独語と仏語のバイリンガル・ポッドキャスト「Ade merci, Schweiz/Adieu, merci la Suisse(さよなら、ありがとうスイス)」です。これは最近外国に移住した人や、移住を予定する人たちを対象としています。
このようにドイツ語版は、スイスインフォが在外スイス人のために果たしている役割を特に明確に示しています。それは外国からでもスイスの政治に参加できる情報や実用的なアドバイスを提供し、地理的なハードルを越えてスイスとの結びつきを維持する、独立したジャーナリズム媒体としての役割です。
フランス語
フランス語圏向けの報道は、スイスと世界中のフランス語圏社会・文化圏・外交圏を結びつけることで、民主的プロセスへの参加や、外交、そして帰属意識の強化に貢献しています。
フランス語は、スイスの公用語の1つであると同時に、国際文化を形成してきた重要な言語です。また外交に使われる言葉でもあります。こうした背景から、スイスインフォのフランス語版には、2つの大きな使命があります。1つは、フランス語圏の在外スイス人への情報提供という役割。もう1つは、欧州、カナダ、アフリカの一部、そして国際機関などフランス語が話されている広大な空間においてスイスの存在感を示す役割です。スイスの多国間外交と人道主義の中心地であるジュネーブは、フランス語がスイスの公用語という枠を超えた、国際的役割を担っていることを象徴しています。
スイスインフォのフランス語版もまた、外国からスイスを見守りつつ、強い繋がりを維持している読者を中心に据えています。在外スイス人を始め、移住を計画している人たちや、権利、日常生活、政治参加に関する情報を求める人たちです。スイスインフォは、スイス国内の動向を分かりやすく解説し、遠く離れた場所からでも政治・社会的議論に参加できるサービスを提供しています。2025年にフランス語版で最も読まれた記事の1つは、国外退去の危機に直面したスイス人の親を持つ女性を取り上げたものでした。
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2025年、フランス語版の利用は9%増加しました。ここでも在外スイス人に焦点を当てた戦略効果が表れています。中でも政治参加を容易にし、外国生活に伴う問題を取り上げ、異国に生きるフランス語読者に、スイスの動向を分かりやすく実用的に伝える記事が注目されました。
このサービスは、ドイツ語の読者と同様、複数の媒体を通じて利用されています。ウェブサイト、ニュースレター、リニューアルされたSWIplusアプリに加え、在外スイス人の生活環境にマッチしたコンテンツ形式があります。その1つが、2025年にスタートした独語と仏語のバイリンガル・ポッドキャスト「Ade merci, Schweiz/Adieu, merci la Suisse(さよなら、ありがとうスイス)」です。
スイスインフォのフランス語版もまた、ドイツ語版と同じように、在外スイス人のニーズに合った信頼性の高い情報を提供し、政治・社会参加やスイスとの繋がりを実現するメディアとしての役割を担っています。
イタリア語
スイスインフォと連携するニュース・情報ポータルtvsvizzera.it、ならびにスイスインフォのイタリア語版は、スイスとイタリアの国境を越えた、共通の労働・生活・経済空間としてのスイスにスポットを当てています。
イタリア語版の役割の1つは、イタリア語圏の在外スイス人に公共放送を提供することです。もう1つの重要な側面は、イタリアや地中海圏との近接性です。スイスインフォのイタリア語版は、単に公用語の1つだからという理由だけでなく、同じ言葉を話す隣国との共通の労働・生活空間としてのスイスを伝える役割も担っています。
イタリア語版スイスインフォは、スイスを身近な存在と考えるイタリア語読者を対象としています。国境地域で生活する人や越境労働者、仕事で移住した経験を持つ人たち、あるいは日々の生活の中でイタリアとスイスの強い結びつきを実感している人たちです。そのため典型的な「在外スイス人」を扱うテーマより、共通の経済・生活・交通圏としての目線から生まれるトピックが報道の中核となります。2025年に最も大きな関心を集めたのは、この近隣性を具体的に示す2本の記事でした。スイスの食品世界最大手ネスレの業績悪化と、世界で最も急勾配のロープウェイを支えるスイスのエンジニア技術です。
こうした背景から、イタリア語版では、労働市場、2国間関係、越境移動、インフラ、医療、生活費、移民、そしてスイスにおける経済・政治動向といったテーマを重点的に扱っています。とりわけ2025年には、これらのテーマがいかに読者の日常と密接に結びついているかが浮き彫りになりました。特にスイスとイタリアの租税協定の影響や、国境地域における労働市場の動き、スイスからイタリアへのショッピングツーリズム、アルプス縦断鉄道「アルプトランジット」をめぐる交通事情や、その他の鉄道交通における相互依存などが議論の中心となりました。
イタリア語版は2025年にアクセスが15%増加し、この役割へのニーズを裏付けました。tvsvizzera.itは特にイタリアのミラノ、ローマ、そしてスイス南部のティチーノ州からの利用者が多く、他にも北イタリアやコモ、ヴァレーゼ、ベルガモといった国境付近も主要なアクセス元です。これは、スイスが隣国としてだけでなく、職場や生活圏、さらには政治・制度面での比較対象として強く関心を持たれている地域で、私たちの報道が大きな反響を得ていることを示しています。生活環境が密接に繋がっていることも、特にソーシャルメディア上の議論や反応を見れば一目瞭然です。例えばスイスにおける若い世代の大腸ガンに関する記事は、フェイスブック上で大きな反響を呼びました。
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このようにスイスインフォのイタリア語版は、スイスを身近な隣国、労働空間、生活圏に位置づけ、互いの国の近さや依存関係、国境を行き来する日常が織り成す環境下で多くの情報を提供しています。
英語
英語圏向けの報道は、民主主義、革新性、国際的ネットワークを備えた国家としてのスイスを世界に向けて発信しています。
英語は、スイスインフォにおける主要な国際言語です。短波ラジオ放送を通じてスイスが国外での発信力を強化する必要性に迫られた時代、英語が導入されました。現在では、デジタル化されたグローバル空間でその役割を果たしています。英語は国際的な交通、科学、経済、外交における主要言語であり、世界を相手にスイスを説明するには不可欠な言葉です。そのためスイスインフォの英語版も重要な役割を担っています。
スイスインフォの英語版は、スイスに関する情報を世界に発信し、国際的な読者に理解してもらうための重要な場です。在外スイス人だけでなく、スイスを政治、経済、科学、外交のプレーヤーと認識している世界中の読者もターゲットです。そして単にスイスの話題を英語に翻訳するだけではなく、国際的な関連性と照らし合わせて切り込む視点も重視しています。
取り上げるテーマも非常に幅広く、主に民主主義、外交政策、永世中立国スイス、国際都市ジュネーブ、科学、イノベーション、気候問題、経済、社会動向などを扱っています。英語版サービスの強みは、スイスの視点を国際社会の議論と結びつけて発信できる点です。スイスの出来事を単に国内ニュースとしてではなく、世界的なテーマの一部として伝えているのです。
この特徴を示すかのように、2025年には、スイスの国民投票、技術革新、スイス発の革新的ソリューションに関する記事が大きな反響を呼びました。例えば、スイス西部ヌーシャテル州で鉄道の線路間に設置されたソーラーパネルに関する記事、徴兵制改革案と相続税導入案がともに大差で否決されたスイス国民投票の解説、デジタルID導入と「架空の家賃」への課税廃止がいずれも可決された国民投票に関する報道などが、国際的に大きな関心を集めました。また、スイスで開発された生成AI(人工知能)「アペルトゥス(Apertus)LLM」の発表は非常に大きな議論を巻き起こしました。
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2025年、スイスインフォが配信した記事の中で、英語版は他のメディアやSNSなどで最も多く引用・紹介・参照されました。同時に、英語版のアクセスは15%増加しました。英語圏の読者はインスタグラムとフェイスブック上で特に活発です。スイスの民主主義や、新しいものを生み出す力、またスイスの視点から見た国際問題に関する投稿は、多くの読者に読まれ、確かな手ごたえがありました。その一例が、ウクライナのドローン産業に関する記事です。英語版ではSNS上で最も大きな反響を集めました。
英語版の影響力や広がりは、記事だけでなく、討論やQ&Aなどの対話型コンテンツや、動画コンテンツにも強く表れています。最も大きな反響があったのは「民主主義は攻撃に耐えられるのか」についての討論です。このテーマは動画でも大きく注目され、スイスの直接民主制を解説したYouTube動画「How Swiss Democracy works外部リンク」は1万回以上の再生数を記録しました。
英語版では、スイスインフォがスイスをどのように国際社会に伝えているかが最もはっきりと表れています。民主主義的かつ革新的で、国際社会と強く繋がり、さまざまな分野で交流・協力するスイスの姿。そして国際的にも注目される政治・技術・社会の発展が生まれる国としてのスイスです。
アラビア語
アラビア語圏向けの報道では、スイスが外交や人道主義、国際的仲介において信頼できるパートナーであると伝えることに重点を置いています。
アラビア語は1960年代、スイスインフォの前身であるスイス国際放送(SRI)時代に取り入れられました。その背景には、外交政策的な狙いがあります。当初、スイスはアラブ世界において、独立し、中立で、人道的かつ外交的に信頼できる国家として認識されるよう努めていました。この側面は、今なお重視されています。アラビア語は重要な国際言語です。そして信頼関係や、物事を多角的に扱う姿勢、信頼性が特に重要となる、地政学的に敏感な地域への入り口でもあるのです。
スイスインフォのアラビア語版は、スイスを政治・制度・社会の面で参考になる国と捉えている読者をターゲットにしています。例えば外交官や、大学・専門家コミュニティ、スイスに観光や経済面で関心を持つ人たち、中東における地政学、人権、戦争と平和に関心を持つ人たちです。こうした読者にとってスイスは、単に経済が安定し、景観が美しいだけの国ではありません。統治、中立、国際仲介、科学、社会的信頼性といった問題をどのように解決しているのか、参考にできる国家でもあるのです。
アラビア語圏にとって重要なテーマには、スイスが誇るイノベーションや科学、スイスの特徴、あるいは世界におけるスイスの貢献や、政治参加と安定した統治などがあります。その一方で、銀行や租税回避の問題、国際紛争をめぐり、スイスはどこまで中立を貫けるのかといった批判的な視点も含まれます。つまり私たちは理想的なイメージだけでなく、強みも矛盾もある、国際的な責任を背負ったリアルな政治・制度が存在する国としてのスイスを伝えているのです。これこそが、スイスインフォの強みです。
2025年には、とりわけSNSや討論の場でこの特徴がはっきりと表れました。アラビア語版では、ガザ戦争と、それに伴う人道的・外交的・国際法的な側面に関する記事が大きな反響を呼びました。ガザ地区の民間人を取り巻く状況に関する記事は、最も読まれた記事の1つです。また、米国とイスラエルが新たなNGOをジュネーブ置き、ガザにおける人道支援実施を委託した決定に関する記事は、この言語圏で大きな注目を集めました。
アラビア語圏では、スイスインフォの特別な価値がひときわ浮き彫りになっています。それは信憑性や、物事を多角的に扱う姿勢、そして政治的背景を踏まえた解説が特に強く求められる領域で、スイスが外交・人道・制度面で果たしている役割を伝えることです。
中国語
スイスインフォの中国語版では、教育、生活、社会の安定、資産保護、社会制度などの面で参考になる国としてのスイスを紹介しています。
スイスインフォは以前から、中国語を戦略的な未来の言語に位置づけていました。過去の戦略文書でも、中国は今後重要性を増す経済・地政学上の国として注目されていました。そのため、中国語版が導入されたのは自然な流れでした。中国は、今やスイスにとって経済・教育・研究・観光の各分野で重要なパートナーです。中国語版は、中国が長期的に世界で重要な役割を担う国になったことを踏まえ、独自のメディア環境を持つ中国語圏に向けてスイスを分かりやすく伝える役割を担っています。
スイスインフォの中国語版は、スイスを単なる国家としてではなく、具体的な生活・教育の場、そして参考になる国と捉えている読者をターゲットにしています。例えば中国国外に住み、スイスに関心を持つ利用者や、学生、メディア関係者、政治に関心を持つ層などです。こうした読者にとってスイスは、生活の場、教育拠点、経済空間であると同時に、財産権・社会保障・移民政策・政治制度などの面で比較・参照できる国なのです。
そのため、移民・帰化、不動産所有、留学と職業上の展望に加え、民主主義、政治権力、中立、銀行といったトピックがよく読まれています。スイスインフォの強みは、スイスを単に抽象的に紹介するのではなく、中国語圏の読者にとって身近な話題と結びつけて伝える点にあります。
2025年は、スイスを生活や教育の場、あるいは法律や制度が整った社会として紹介する記事への反響が大きかったことも、こうした情報へのニーズが高いことを表しています。具体的には、国籍取得、不動産市場、移民と社会的展望に関する記事が大きな注目を集めました。特に中国語圏で強い関心を集めたのは、外国人留学生の出願に対しスイスの大学が導入した新たな審査・安全基準に関する記事でした。
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こうした情報がきちんと読者に届くために重要なのは、配信経路です。中国語圏では、特にWeChatとRed Noteを通じて幅広い読者層に情報を届けています。スイスインフォのWeChatのアカウントだけでも、2025年末の時点で約4万8000人のフォロワーを有しました。年間を通じて最も読まれた記事は、スイスに暮らすカメルーン支配者一族の贅沢な生活を扱った記事で、約30万回読まれました。さらに、スイスのメディアが報じた中国に関する記事を要約してまとめたプレスレビューのように、中国で起こった出来事、ニュース、話題を別の視点から考察し、スイスの洞察や意見を解釈する記事にも関心が集まりました。
スイスインフォの中国語版は、中国語圏の読者が具体的に関心のある問いに答えるべく、特に教育、安定性、資産形成、人生設計、政治比較の場としてのスイスを重点的に伝えています。
日本語
スイスインフォの日本語版では、イノベーションや民主主義、社会の変化を考える上で、スイスを信頼できる比較対象として紹介しています。
日本語版は、スイスインフォの前身であるスイス国際放送(SRI)の再編による国際発信の強化を背景に、2000年前後に開設。デジタル化により、重要な国際市場へ直接情報を届けられるようになりました。当時の日本は世界有数の経済大国で、先端技術や産業、金融の拠点として、アジアにおけるスイスの重要な貿易相手国でした。このため日本語版は主に経済や技術、研究、観光などに高い関心を持つ日本語読者に向けて発信しています。
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日本語版の読者の多くは、スイスを日本と比較・対照できる国として捉えている人たちです。この読者層は、スイスが政治的に安定し、イノベーションや科学技術が盛んで、国際的な信頼性を備えた直接民主主義の国であると認識しています。特に関心が高いのは、日本が抱える大きな社会・政治課題について、スイスや国際的な視点から切り込んだ見方を提示するコンテンツです。日本のメディアではあまり見られない国際比較的な視点からテーマを掘り下げていることも、大きな特徴です。
そこに、ジャーナリズム的な付加価値があります。移民、自殺ほう助、自然災害と気候リスク、軍事的な安全保障といったテーマが関心を集めるのは、スイスインフォが日本語読者に、世界的な視点から物事を見る機会を提供しているからです。読者には、最新ニュースや極端な内容の話題に敏感に反応する層も存在します。こうしたトピックへの主なアクセス経路は、グーグルや、さまざまなニュースを1つのアプリで集めてくれるニュースアグリゲーター「スマートニュース(SmartNews)」、そしてXです。
2025年に日本語版で最も読まれた記事の1つは、スイスの鉄道線路上にソーラーパネルを設置する実証プロジェクトに関するものでした。スイスのイノベーション戦略を、日本でも並行して議論されている技術と照らし合わせて解説したこの記事は、大きな反響を呼びました。またトランプ米大統領の訪日と、実の娘への性的暴行で父親に有罪判決した日本での出来事2件について、スイスのメディアが報じた内容をまとめた「スイスのメディアが報じた日本のニュース」や、トランプ政権の関税政策に関する記事も多くの読者に読まれました。
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スイスインフォの日本語版は、今も明確な役割を担っています。それはスイスを単なる「異国」として紹介するのではなく、日本も直面している重要な経済・技術・社会の変化を考える上で、信頼できる比較対象として伝えている点です。
ポルトガル語
スイスインフォのポルトガル語版は、幅広いポルトガル語圏の読者に向け、日常生活に密着したスイスを分かりやすく伝えています。
ポルトガル語は、初期の頃から外国向けサービスに使われる国際言語の1つでした。ポルトガル語は、ブラジルとアフリカの一部を含む地域でも話されています。時代の流れとともに、特にブラジルでは大規模な経済・社会空間としての重要性が増しました。そのためスイスインフォのポルトガル語版は、スイスを生活や仕事、経済、社会制度の面で参考となる国とみなすポルトガル語圏の国々で広く関心を集めています。
スイスインフォのポルトガル語版は、幅広いテーマに関心を持ち、さまざまな理由からスイスに興味がある一般読者がターゲットです。スイスを将来の生活や就職の場として考える人たち、社会や経済の動向に関心を持つ人たち、あるいは好奇心、自国と比較してみたいという興味、具体的な情報へのニーズからスイスの情報を追っている人たちです。最大の読者層は、ブラジルに存在します。2024年2月以降、ポルトガル語版の読者の約4分の3は国外からアクセスしており、その半数以上がブラジルから、続いてポルトガル、スイスからでした。
私たちの強みは、その分かりやすさです。幅広い読者層を対象に、専門家向けの内容ではなく、実用的な指針と、スイスに関する驚くようなトピックや解説記事をお届けしています。特に読まれているのは、就職活動、住居、スイス定住の具体的手続きなどが分かるサービス系テーマです。また、科学や歴史、スイス独特の習慣や珍しい事柄に関する記事も人気です。その1つに、2025年の主要な法改正や政治制度の変更に関する記事があります。
ポルトガル語圏のコミュニティは、特にフェイスブックとインスタグラムを中心としたSNS上で活発です。同時に、ウェブサイト上の記事も多く読まれています。2025年、ポルトガル語版で年間を通じて最も多くの議論を呼び、同時に最大のトラフィックを生んだのは、欧州のキリスト教社会で反ユダヤ主義がどのように生まれ、長い年月をかけて社会に影響を及ぼしてきたかを分析した記事でした。
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この反響からも、ポルトガル語圏の読者が、実用的な情報だけでなく、宗教、差別、民主主義などの問題を歴史的・国際的な視点から読み解く解説記事にも強い関心を持っていることが分かります。
スイスインフォのポルトガル語版は、こうした需要に対して、単純なイメージや固定観念ではなく、事実に基づいた丁寧なジャーナリズムで応えています。ポルトガル語圏では往々にして美化されたり憧れの対象となったりするスイスを、理想化されたイメージではなく、課題や矛盾も含む現実の社会として描き、具体的に理解できる形で伝えています。多様な理由でスイスに関心を持つ大きな読者層に対して、身近で分かりやすい形で伝えているのです。
ロシア語
ロシア語圏向けの報道は、対立や偏りが強い情報環境の中で、中立、安全保障、民主主義について信頼性の高い指針を提供しています。
ロシア語は、スイスの国際向けメディアの歴史において特別な役割を担っています。この言語は、戦略的に重要であるにもかかわらず、長らく空白地帯でした。ロシア語はロシアだけでなく旧ソ連構成国へのアクセスも可能にします。すでに冷戦終結後、ロシア語は独立国家共同体(CIS)地域の共通言語であり、相互理解、民主化、独立した情報提供に用いる手段にするか検討されていました。そのため、後にロシア語が導入されたのは偶然ではなく、長い間続いてきた地政学的な背景と必要性に基づく必然的な流れでした。
現在、スイスインフォのロシア語版は、分断が深く、紛争に満ち、偽情報があふれる環境下で、信頼できる説明を求める読者に向けられています。祖国を離れて暮らすロシア語圏の人たち、ウクライナやその他旧ソ連構成国の人たち、そして政治・経済に関心を持ち国際動向を注意深く見守る読者層などです。
こうした読者が特に注目するのは、スイスの中立政策や制裁、金融業界、安全保障、外交政策、国家制度への信頼性などが問われる場面です。とりわけウクライナ戦争以降、明確で専門的なロシア語で書かれた、事実と背景を踏まえ制度面でも正確な情報への需要が高まっています。戦争勃発時には、アクセス数が一時的に3倍に跳ね上がりました。
2025年には特に、ウクライナ戦争をめぐるスイスの中立的な役割、制裁の実施とその効果、そしてスイス国内の安全保障・防衛政策に関する討論が、大きな波紋と活発な議論を呼びました。最も読まれた記事は、ウクライナからの難民に適用される特別在留資格「S許可証」に関するものでした。
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この読者層は、ニュースを軽く読み流すよりも、踏み込んだ解説や分析を求める傾向があります。2025年はロシア国内で行われた制限の影響で、スイスインフォのウェブサイトへのアクセス数が減少しましたが、他の媒体を通じて引き続き存在感を維持しました。私たちがロシア語圏で最も広い読者層への波及効果を生んでいるのは、ロシア発のチャットツール、テレグラム(Telegram)です。そして最も活発な発言が交わされているのは、フェイスブックとインスタグラムです。
特にロシア語圏では、信頼できる情報源としてのイスインフォの重要性が際立っています。それは極端な論調の発信者としてではなく、スイスの立場を分かりやすく解説し、緊迫した国際環境の中で指針を提供するメディアとしての存在です。
スペイン語
スペイン語圏向けの報道では、民主主義や経済、社会制度の面で参考となる国としてスイスを分かりやすく伝えています。
スペイン語は、外国向けサービスにおいて最も初期に導入された言語の1つです。すでに短波ラジオ放送時代から、広大な国際コミュニケーション空間で話される言葉として位置づけられていました。この状況は今も変わりません。スペイン語は欧州とラテンアメリカ、そして米国内の大規模なスペイン語圏コミュニティを繋ぐ言葉です。そのためこの言語は、スイスを安定した政治や経済、民主主義のモデルとみなす幅広い読者層と、スイスを結びつける役割を果たしています。
スイスインフォのスペイン語版は、主に欧州およびアメリカ大陸、とりわけメキシコ、アルゼンチン、スペイン、米国などに住む国際的な読者を対象としています。これらの読者は、スイスを政治や経済、制度面で参考になる国とみなしています。スペイン語版は他にも、スペインやラテンアメリカに住む在外スイスイ人を対象に、政治参加や社会保険、社会制度の変化、移民などに関する情報を届けています。
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特に読まれているのは、スイスが国際的な比較対象として注目されるテーマです。例えば金融システムの安定性や金融機関の役割、直接民主制と政治的な意思決定プロセス、欧州連合(EU)との関係、中立政策、そしてジュネーブの国際的な役割などです。人の移動に関する問題や、労働市場、気候、アルプス地域、自然災害に関する問題も頻繁に取り上げられるテーマです。こうした内容が特に重要なのは、スペイン語圏の読者が、スイスを自国の政治や経済の状況と比べながら見ることが多いためです。つまり読者がスイスを「参考になる国」「自国とは逆のパターン」「理想を重ねる相手」と捉えていることの表れです。
特に経済に関するテーマには強い関心が寄せられています。スペイン語圏において、スイスは依然として安定した金融機関を構える安全な国として認識されています。一方で、国際的な横領事件や資本逃避などには批判的な目も向けられています。スペイン語圏では、この両方がスイスのイメージを大きく特徴づけています。
またスペイン語圏の読者には、媒体の好みにも明確な特徴があります。読者同士で広い議論が起こることは少ないものの、スイスインフォの討論プラットフォームのように、読者とメディアが意見をやり取りできる双方向型コンテンツには集中的なリアクションが見られます。またソーシャルメディア、とりわけインスタグラム外部リンクでは、主にスイスの政治制度の基礎などを説明する取り付きやすいコンテンツが読まれています。2025年には、連邦レベルの国民投票や政治制度に関する投稿に数百件のコメントが寄せられましたが、その多くは短く断片的なものでした。
このように、スイスインフォのスペイン語版は、広範囲にわたる多様かつ国際的な読者に、スイスを分かりやすく伝えるという明確な役割を果たしています。特に、経済の安定や政治制度、社会のあり方について、読者がスイスを単に眺めるのではなく、自国と比べながら考えるとき、その意義が強く表れています。
文:Selina Haefelin、編集:Reto Gysi von Wartburg、独語からの翻訳:シュミット一恵、校正:大野瑠衣子