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スイス、米にアルカイダ兵とタリバン兵の捕虜としての処遇を要求

スイス政府は、キューバ・グアンタナモ米海軍基地に収容されているアルカイダ兵とタリバン兵を「捕虜」と認めるよう米国に要求した。

スイス連邦外務省は「アフガニスタンで捕虜となり現在グアンタナモ米軍基地に収容されているアルカイダ兵とタリバン兵を捕虜として認め、ジュネーブ第三条約に定められた捕虜としての権利を守るよう要求する」という声明を発表し、マルセル・レイノルズ駐瑞米大使に提出した。米当局は、アフガニスタンで捕虜となったアルカイダ兵とタリバン兵を「違法武力行為を犯した犯罪者(テロリスト)」と見なし、捕虜と認めることを拒否している。が、スイス政府は、米国も署名しているジュネーブ条約に異議を唱える場合には裁判権のある法廷の判断に委ねると条約に定められていることを指摘した。

赤十字国際委員会(ICRC)と国連も、国際武力抗争で捕えられた人間は捕虜と認められるべきだと主張している。グアンタナモ基地に捕虜の処遇に関する調査団を派遣しているICRCのダルシー・クリステン報道官は、「捕虜の待遇に関して定めたジュネーブ第3条約は、捕虜の適切な衣食住・衛生・医薬品を受ける権利、宗教と習慣の自由の権利について明示している。我々は米当局にジュネーブ第三条約の遵守を要請している。アルカイダ兵とタリバン兵を捕虜と認めないならば、裁判権のある法廷でこれらの人間の身分を決めなければならない。」とスイス政府の声明と同じ主旨の発言をしている。さらに、クリステン報道官は、国際法に則り、戦争が終った時点で捕虜は刑事告訴されている者を除き全員解放されなければならないと指摘した。

両手・両足を縛られ、目隠しをされた上に口と鼻をマスクで覆われ、看守の前に跪かされているグアンタナモ基地に移送された捕虜達の写真が米海軍によって発表されてから、国際社会からは米政府の捕虜の処遇に対する批判が噴出した。クリステン報道官によると、このような写真の公開は、捕虜のプライバシー保護に反し、また捕虜の親族などを同じ様な状態に追い込む危険性があるとの理由でジュネーブ第3条約で禁止されているという。クリステン報道官は、このような写真が出回った背景を疑問視しているという。が、写真だけでは真実は分からないとして、現地を訪問中の赤十字調査団がグアンタナモ基地に収容されている捕虜と個別に面談し、捕虜達の置かれている状態や待遇について明らかにする所存だと述べた。ICRC調査団の1人は医師で、捕虜達の逮捕時、移送中および収容中のコンディションを捕虜との面談調査と書類調査から追求しているという。

ICRCは、なぜ捕虜達が目隠し・猿ぐつわをされ、手足を縛られ数珠つなぎにされたままでアフガニスタンから移送されたのかということも問題視している。捕虜達のひげをそり落としたのは、衛生上の理由からか辱めるためなのかという疑問もある。クリステン報道官は、これらの捕虜に対する処遇がセキュリティのためのものか、捕虜の尊厳を損なう目的で行われたものかも明らかにしたいと語った。

ICRCでは、新たな捕虜が到着する度に調査団を派遣するとしている。「捕虜の権利が守られているか、そして我々の改善要求が実施されているかを確認するため、我々は訪問と面談を繰返す。そして、米国が赤十字の要請に対応していないのが判明した場合には、あくまでも双務的なレベルだが、さらなる行動を取る。」とクリステン報道官は述べた。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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