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スイスへの「自殺ツーリズム」、国の監視は必要?スイス議会が出した答えは

自殺ほう助が認められているスイスには、国外からも自殺希望者がやってくる
自殺ほう助が認められているスイスには、国外からも自殺希望者がやってくる Keystone / Gaetan Bally

スイスで自殺ほう助を受けるため、日本を含め国外からスイスにやってくる人は少なくない。こうした「自殺ツーリズム」は度々批判され、実態を把握・監視するよう求める提案が昨年、議会で議論された。取材を進めると、ある意外なことが判明した。

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スイスでは年間1500人超が自殺ほう助により死亡している。自殺ほう助を合法化する国は増加しているが、スイスが特異なのは、国外に住む自殺ほう助希望者も受け入れているからだ。このため、自殺ほう助が禁じられている国から自死を求めてやってくる人が後を経たない。

例えばドイツ語圏スイスで国外居住者の自殺ほう助を受け入れる団体ディグニタスでは、2024年に280人が自死したが、このうち国外居住者は260人だった。日本からは1人がスイスに渡航し自死している。

こうした「自殺ツーリズム」は国内外から批判されている。スイス国内では、外国人のために警察による検死作業などに公費が費やされていることが批判材料にされる。国外からは、スイスが外国人の安楽死を助長している、という倫理的な批判が多い。

最近では、自死した人の親族が「家族に知らせず自殺を手助けした」と、自殺ほう助団体を批判するケースも相次ぐ。自殺ほう助団体に、親族への通知や同意を得る法的義務はない。だがスイスでは倫理的な観点からの議論が再燃した。

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「家族に知らせず自殺を手助けした」英国人家族が非難、スイスの自殺ほう助が再び議論に

このコンテンツが公開されたのは、 複数の英国人家族が、スイスの自殺ほう助団体ペガソスが医学的な正当性なく、家族の自死を助けたとして非難している。ペガソス側は合法的で倫理的にも問題はなかったと主張するが、スイスにおける自殺ほう助のあり方をめぐる議論が再燃している。

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自殺ほう助はスイス刑法に法的根拠がある。スイスでは利己的な動機がない限り、人の死を手助けしても罪に問われない。ただ自殺ほう助のプロセスや対象者の条件については、法的拘束力はないが医師団体が策定したガイドラインや、自殺ほう助団体自身の定めた規則がある。

個別法での規制はない

自殺ほう助の規制強化はスイス政界で20年も前から検討されてきたが、すべて失敗に終わっている。連邦政府も2011年、自殺ほう助を規制する個別法は必要ないとの声明外部リンクを出している。

だが昨夏、医師の介助を極力排除した自殺ほう助カプセル「サルコ」がスイスで初めて使用されたことで、厳格な規制を求める議論が議会で再燃した。

長時間にわたる議論の結果、上院(全州議会)の法務委員会で、1件の動議が可決された。自殺ほう助の統計・監視に関するもので、内閣に対し、国内の自殺ほう助件数と状況を記録するよう求める内容だった。特に自殺ツーリズムなどについての実態が把握されていないことや、自殺ほう助団体の活動に関するデータがないことも問題視された。

スイスの死亡統計は現在、国内人口のみが対象になっている。

しかし、この動議は昨年末、下院(国民議会)で否決された。下院法務委員会の委員でスイスインフォの取材に唯一応じた左派・社会民主党(SP/PS)のウエリ・シュメツァー議員が、動議に反対した理由を語った。

シュメツァー氏は、監視・統計は必要ないとする根拠を3つ挙げた。1つは、自殺ほう助に関する統計は既に存在している。自殺ほう助は「異常死」として扱われ、それに応じた調査が行われている。また、国外在住者の自殺については、政界は自殺ほう助団体の持つデータを通じ集計が可能だとした。

2つ目に、当局の事務負担が相当量に上る点を挙げた。特に連邦統計局が現在、予算上の理由でその他重要統計の集計を中止している最中であることを踏まえると、新たなデータ集計は正当化しにくいと指摘する。

3つ目に、監視システムがあるかないかに関わらず、スイスはいつでも自殺ツーリズムを禁止することが可能だ、とした。

社会民主党所属のエリザベット・ボーム・シュナイダー内相は、委員会審議でほぼ同一の主張を展開した。問題は既存統計に項目を単に追加することではなく、データ収集のための新たな枠組みを構築することが必要になることだと述べた。それにかかる研修と、専用のITソリューションが必要になるだろう、とも語った。

政府にはすでに統計がある?

スイスインフォは連邦統計局に、データ収集プロセスの詳細な説明を求めた。すると、州が保有する国外在住者の自殺ほう助のデータは、現在でも連邦当局に提出されていることが判明した。

ただしこれは、自殺ほう助事件を「異常死」として調査していることとは無関係だ。国外在住者の自殺ほう助件数は、スイス在住者の場合や通常の死亡事例と同様、「死因証明書」と呼ばれる書類を通じて連邦統計局が収集している。

連邦統計局は「リソース上の理由、また公式統計はスイス国内人口に焦点を当てているため、追加の照合は行っていない」と回答した。そのため、情報は体系的に検証されていないとみなされ、数値は公表されていないという。

現在使われている死因証明書。連邦統計局は現在、自殺ツーリズムに関する数値の公表を検討している
現在使われている死因証明書。連邦統計局は現在、自殺ツーリズムに関する数値の公表を検討している zVg

国内の自殺ほう助団体で唯一、より厳格な規制を訴える「ライフサークル」のエリカ・プライシヒ氏は、連邦統計局の書式にいくつか項目を追加するだけのことがなぜできないのか理解できないと話す。

同氏によると、そのために必要となる公的医師や法医病理学者の追加負担はごくわずかであり、そもそも自殺ほう助1件ごとに発生する全体の作業量と比べれば微々たるものだという。

スイスでは、自殺ほう助の事例は当局の調査の対象となり、すでに一定のコストが発生している。「司法当局の調査や報告書の作成に比べれば、事後にこの用紙に記入するくらい、取るに足らない作業だ」とプライシヒ氏は言う。また、そのために医師が特別な訓練を受ける必要もないという。

統計局が変更を検討

連邦統計局にメール取材を重ねたところ、同局は突如、政治的な委任は受けていないが自殺ツーリズムに関する統計の作成を検討している、と回答した。「局として現在、この問題を主体的に検討し、議会提出の提案文言に必ずしも縛られず、かつ財政的に実行可能な解決策を見出すための作業を進めている」という。

編集:Balz Rigendinger、独語からの翻訳・追記:宇田薫、校正:ムートゥ朋子

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