ナビゲーション

ナビゲーションへ

グローバルメニュー

(Reuters)

2月中旬に東京で調印された日本とスイスとの自由貿易協定は、日本で活動するスイス企業にとって大きな関心事だ。スイス企業は経費の削減と日本市場へのより良いアクセスを望んでいる。

東京八丁堀にある地味なオフィスビルの8階に「マティサ ( Matisa ) 」のオフィスはある。

マティサ

 オフィスの入り口付近にある道床 ( 線路と枕木の下に敷く砂利 ) の上に敷かれた鉄道のレールを見れば、どういった業種の会社なのかは一目瞭然だ。ここはスイス企業マティサの日本支社だ。日本には商品倉庫と販売所のほかに3つのオフィスがあり、総勢16人の社員が勤務している。

 マティサはスイスでは鉄道建設用とメンテナンス用の特殊機械を製造している。日本では機械の販売、修理、整備などを行い、交換部品も販売している。2年半前から日本支社の責任者を勤めるのは、日本では「古だぬき」のアンドレ・ツィンマーマン氏だ。日本滞在暦21年、マティス入社前は「テレクルス ( Telekurs ) 」に15年間、「スイス外国企業誘致局 ( Location Switzerland ) 」に3年間勤めた経験を持つ。

より有利なポジション

 マティサにとってこの貿易協定は2つの理由から魅力的だとツィンマーマン氏は言う。
「もちろん関税撤廃は最大の関心事です。さらに、この協定によってまったく違うポジションを得られます。つまり、いろいろな省庁へのアプローチがしやすくなるということです」
 というのも、マティサが属する産業部門は非常に保守的なため、さまざまな省庁との協力関係は非常に重要だという。
「また、この協定によって われわれがさらに有利な立場に立てることははっきりしています。間違いなく、もっとオープンに迎えられることでしょう」

 ところで、スイス企業だけが2国間の交渉に興味を持って見守っていたわけではないとツィンマーマン氏は言う。
「スイスの産業にとってだけでなく、これは日本にとっても大きな事です」
 多くのツィンマーマン氏の日本人の知人が交渉の進展具合や協定の発効時期について何度も尋ねてきたという。

日本人がマティサを「呼び寄せた」

 日本は保護貿易主義の国だと繰り返し語られるため、割り込むのが難しい市場だと思われがちだ。しかし、これにはツィンマーマン氏は強く反論する。日本はスイスよりも広く開かれた市場だという。
「このような先入観はいまだにありますが、もし本当に日本でのビジネスを前向きに考え、日本のやり方を理解すれば、扉は開かれているのです」
 日本市場での障害はむしろ頭の中にあるという。
「日本に対する先入観が強烈なために、これを払拭することが難しいのです」
 とツィンマーマン氏は指摘する。

 マティサが日本市場への参入を実現できたのは、日本人がスイスの精密機械に関心を示したおかげだ。1950年代末、ある商社が「マティサの本社があるクリシエール ( Crissier ) を訪れ、機械について問い合わせてきた」とツィンマーマン氏はそもそもの始まりを語る。
「その日本人たちは、日本でも使える面白いものがスイスにあることを知ったのです」

 それから約15年間、マティサの機械はスイスから直接購入されてきた。その後、研修、整備、サービス事業の需要が増大したことに企業側が目をとめたという。
「そこで1973年、事業を拡大するためにも、日本に支社を設立することを決めました」
 しかし、当時は市場参入は容易ではなかったという。
「株式会社を興そうと思ったら数々のハードルがありました。今ではすべてが簡単になりました」
 とツィンマーマン氏は言う。

なによりも質

 日本市場とスイス市場の最大の相違点は、よりによってクオリティに対する考え方だというのがツィンマーマン氏の意見だ。
「日本ではどんな時でも質は最高でなければいけません。サービスに関しては議論の余地はまったくありません。ですから、サービスには一番コストがかかります」
 と、ツィンマーマン氏はこれまでの経験を語り
「日本の質に対する意識は非常に際立っています。スイスでも最高品質をいつも意識していますが、日本と比べたらスイスはまだまだ足りません」
 と、日本人の質に対する考え方を強調する。

swissinfo、クリスチャン・ラーフラウブ 東京にて 中村友紀 ( なかむら ゆき ) 訳

スイスと日本

スイスにとって日本はEU、アメリカ合衆国に次いで第3の貿易相手国。第4の中国とは僅差。日本にとってスイスは第8の貿易相手国。
2008年の物品貿易では、スイスから日本への輸出額は71億フラン ( 約6020億円 ) 、日本からの輸入額は41億フラン ( 約3470億円 ) だった。
日本がスイスから輸入する主要品目は化学・製薬製品、時計、機械。日本からスイスへの主要輸出品目は車、貴金属、宝飾品、機械、化学製品。
日本の外務省の報告によると約150社のスイス企業が日本で活動している。

インフォボックス終わり

スイス・日本経済連携協定 ( EPA )

2009年2月19日、自由貿易及び経済上の連携に関する協定 ( EPA ) がスイスのドリス・ロイタルト経済相と日本の中曽根弘文外務大臣によって調印された。
協定では特に物品・サービス貿易、投資活動や知的所有権の保護、自由競争といった項目が定められている。
このような協定を日本がヨーロッパの国と結ぶのは初めてのことだ。
具体的な発効期日は両国の議会の審議を通す必要がある。

インフォボックス終わり

マティサ ( Matisa )

1945年創業、「鉄道敷設工事の機械化を産業化したパイオニア」を名乗る。
この分野では世界第2位のシェア。本社はローザンヌ近郊のクリシエール ( Crissier ) にある。
日本では約40台のマティサ社製の機械が使用されている。日本支社の社員数は16人。世界では約600人。

インフォボックス終わり


リンク

×