ローザンヌ国際バレエコンクール 日本から3人が決勝に進出
第39回ローザンヌ国際バレエコンクールの5日目の選抜で、日本からは堀沢悠子 さん ( 16歳 ) 、小嶺沙耶 さん (15歳) 、加藤静流 ( しずる ) 君 ( 16歳 ) が選ばれ決勝に臨む。
この3人のほかに決勝に進む20人の内訳は、中国3人、アメリカ3人、韓国2人、ブラジル2人と、スペイン、フランス、ノルウェー、オランダ、カナダ、オーストラリア、スイスから各1人。決勝ではこの中から7人が最終的に入賞できる。
難解な作品に挑戦
「クラシックで失敗したので選ばれないと思っていた。だからとてもうれしい」
と、群馬県出身の堀沢さん は喜びをこう語った。これからクラシックを練習して明日は失敗がないようにしたいと言う。
コンテンポラリー・バリエーションは、ストランビンスキーの曲にキャッシー・マーストン氏が振りを付けた「わたしを自由に」という作品を選んだ。何かに囚われている自分を解放しようともがく人物を描く難解な作品。しかし、堀沢さんはアクセントのある迫力ある動きで観客を魅了した。
「初めに選んだときは、床に体を落としたり、肩を床に着けたりなどの動きが怖くてできなかったが慣れていった。力の入れ方とか、体のどの部分がほかのどの部分を押して動きになるのかといったことに注意しようとした」
と、マーストン氏が理想とする動き方を研究した。
これは男女共に踊れる作品だが、今回女性で踊ったのは堀沢さん1人で非常に新鮮だった。
先生が楽しんでいる
一方、残りの小嶺さんと加藤君は埼玉県のアクリ・堀本バレエアカデミーの生徒だ。同アカデミーはここ4,5年毎年ローザンヌに生徒を送り込んでいるだけでなく、決勝にも必ず最低1人は進出させている。第37回では水谷実喜さん( 15歳 ) さんが入賞も決めた。
こうした輝かしい成果はどこからくるのだろうか?
「基礎をしっかりと教えている。それだけだ。後は審査員の好みもあるし、毎回まぐれだと思う」
と、堀本美和先生からはこうした謙虚な答えが返ってきた。
ただ、コンクールの1年前に「この子は行ける」と思う生徒を選んだら、彼らに「1年間はきちんとやらないといけない」と言い続ける。DVDの審査もあり、決勝進出までに越えるべき難関は山ほどある。
それに、
「毎年来ているのでコンテンポラリーはここで直接コーチのやり方を習い、それを生徒に教えられという利点はある。また、先生であるわたしがこの場の雰囲気に慣れていて、毎回楽しんでいる。それを生徒たちが感じて取って、先生がこうだからとあがらずにゆったりと力を発揮できているのかもしれない」
と言う。
精神も肉体もトータルに打ち込み
また、今回20人のうちに選ばれた男子ダンサーに、ローザンヌコンクールが今年2回目だというフランスのケヴィン・パング君 ( 19歳 ) がいる。
パング君は「信じられない」と喜びの第一声を発した後、
「今日は、クラシックを踊ったという気がしない。夢のうちに終わった感じ。コンテンポラリーの方はうまくいったけれど」
と言う。
コンテンポラリー・バリエーションはクリストフ・ウイールドン氏の作品「継続」だった。ピアノのソロ曲で一つ一つの音に体の動きを合わせていくのが非常に難しい作品だ。
「先生にこれをやったらと言われて選んだ。この作品は精神も肉体もトータルに打ち込まないとできないもの。だから終わると疲れがどっと襲ってきて最後のポーズを維持するのが難しい。明日に向けてまた練習しなくては」
と続けた。
また、パング君は
「ロンドンのイングリッシュ・ナショナルバレエスクールに留学して英語を話せるようになったお陰で、今回ここで世界中のダンサーと仲良く話せ緊張せず練習を楽しめた。2年前はカチカチになっていた。それも勝因の一つかもしれない」
とこの5日間を振り返った。
1973年ローザンヌで創設された「ローザンヌ国際バレエコンクール ( いわゆるプリ・ドゥ・ローザンヌ ) 」は、15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクール。その目的は伸びる才能を見出しその成長を助けることにある。
昨年4月に創設者のフィリップ・ブランシュバイグ氏が82歳の生涯を閉じた。また、同コンクール日本事業部の責任者山田博子さんも6月に亡くなった。日本からトップレベルのダンサーが育ち、また現在多くの日本人が参加できるようになったのも山田さんの努力に負うところが大きい。
今年の第39回コンクールには、DVD 審査で選ばれた世界19カ国74人 の若いダンサーが参加した。日本人は最多の18人だった。
昨年と同様、二つの年齢グループ ( 15、16歳と17、18歳 ) に分かれて4日間の練習を行い、練習点と2月5日の選抜の点の合計で決勝進出者20人が選ばれた。
決勝ではこの中から7人の入賞者が選ばれ、同額の奨学金を受け取り一流のバレエ学校やカンパニーに留学できる。決勝進出できなかった参加者も最終日にオーディションがあり、コンクールに協力するバレエ学校やバレエカンパニーから招待を受ける場合が多い。
今年もコンテンポラリー・バリエーションに2人の若手振付家、クリストフ・ウイールドン氏とベルンダンス劇場のキャッシー・マーストン氏の作品が選ばれた。
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