ユダヤ人を見捨てたカトリック

歴史書の新刊「スイスのカトリック 1933年ー1945年」(ビクトル・コンゼミウス他著)は、ナチス・ドイツからスイスに逃れようとするユダヤ人らを当時のスイス・カトリック教会は全く救済しようとしなかった事を明白にした。
15人の歴史学者による共著「スイスのカトリック 1933年ー1945年」によると、カトリックは、ナチ政権下のドイツに追い返されたユダヤ人には死が待っていると知りながら国境でユダヤ人入国拒否した、当時のスイス政府の政策に全く抗議なかった。スイス政府は1938年、ナチスのユダヤ人政策を採用し、スイスに入国したユダヤ人のパスポートに「J」のスタンプを押すようにした。そして、1942年からは国境でユダヤ人を追い返した。
著者の1人、ビクトル・コンゼミウス氏によると、プロテスタントと違い、カトリックには政府に対して立ち上がる強い意志を持った人材がいなかった。「彼等は恐れ、『良いスイス国民』であろうとした。」とコンゼミウス氏はいう。世界大戦中のスイスの役割に関する国際研究班を率いるジャン=フランソワーズ・ベルギール教授は、著書について「当時のプロテスタントとカトリックの関係を証明した初めての研究書。宗教界のタブーを破った研究。」と評した。この著書は、第2次大戦前と最中のカトリックとプロテスタントは断絶していた事を明白にした。ベルギール教授は、基本的には同じ価値観を持つ両派が、このように断絶していたとは驚くべき事実だという。
本著によれば、カトリック系の慈善団体もまた、ユダヤ人救済には全く協力しなかった。カトリック難民援助組織は、「アーリア人」カトリック教徒と改宗ユダヤ人にのみ援助を施した。また、カリタスは、ナチスの人種カテゴリーに従い、難民を「アーリア人」「混血アーリア人」「非アーリア人」と区別して登録した。

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