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ジャガイモを将来の主食に

さまざまな種類のジャガイモを並べるペルーの農民 Keystone

将来の世代の食糧確保に向けて、イモ類の重要性を訴えるために国連が2008年を「国際イモ年」と宣言した。

スイスの援助機関は、生物の多様化を守るために、持続可能で環境に優しい栽培方法を勧めるプロジェクトを中南米で行っている。

 200年前、ジャガイモのような地中に実る野菜は、ハンセン病、結核、性病などをもたらすか、少なくとも激しい胃痛を起こすと信じられていた。また、人々はジャガイモが霧や洪水の原因になるとも信じていた。そして2世紀後の今年、国連はイモ類の重要性を認識し、「『国際イモ年』は、食糧不安、貧困、環境に対する脅威などの地球規模の課題への取り組みの一環として、農業一般の重要性についての認識を高める」と宣言した。

重要な役割 

 今後20年間で、世界の人口は毎年1億人以上ずつ増加すると予測されており、特に途上国でこの大幅な人口増加傾向が続く見通しだ。

 5000種以上のジャガイモが、将来の食糧確保に重要な役割を果たすことになると専門家は見ている。ジャガイモは土地資源が限られていても、労働力が豊富にある場所に向いている。また、ほかの作物に比べて種類が多いという利点があり、標高の高い土地で育つ品種がある一方、熱帯性気候の土地や乾燥地帯で育つものもある。

 さらにジャガイモは栄養価が高い点でも重要だ。1ヘクタール ( 1万平方メートル ) の土地から収穫されるジャガイモの熱量は約1670万キロカロリーで、およそ7200人を養うことができる。

多様な地元品種

 開発援助機関は、ジャガイモの伝統的な品種の絶滅を憂慮している。
 「多くの国、特に中南米に新しい品種が導入されてきました。少なくとも導入当初は、それらの新種の方が地元の在来種よりも大きな収穫をあげると考えられていたため、農民は地元の気候や環境に適したジャガイモを捨て、ヨーロッパ原産の新種を栽培するよう勧められたのです」
 と開発援助機関の「スイスエイド ( Swissaid ) 」のカロリンヌ・モレル氏は述べる。高額な上、環境システムにダメージを与える殺虫剤、化学肥料、農薬などが、収穫量と利益を上げるために使われたとモレル氏は言う。

 スイスエイドは、エクアドルでこれまでの流れに対抗するプロジェクトを運営している。このプロジェクトの目的は、農民に必要な道具や手段を提供し、有機農法による地元品種の栽培の継続を手伝うことだ。
 「海抜4000メートルの土地でジャガイモを育てている農民は、主に地元品種のジャガイモに頼らねばならないことを知っています。しかし、アンデス地域では多くの人々が食糧の確保を放棄しています。彼らは自分の土地を捨てて、大きな農業関連企業へ働きに出ていますが、それによって彼らは自分たちの主食だけでなく、収入源をも失ったのです。そして当然、地元品種についてのノウハウも失われてしまうのです」
 と自らも有機農法の農家であるスザンヌ・ホチュリ氏は付け加えた。

 ほかの中南米諸国では、「連邦開発協力局 ( DEZA/DDC ) 」による同様のプロジェクトが進行中だ。専門家は、それらのプロジェクトによって地元農民が伝統的な品種と栽培法を取り戻し、一家の消費分と地元の市場で販売する分を確保するために十分な収穫量を生産できるよう援助している。

swissinfo、アンドレア・クレメンティ 笠原浩美 ( かさはら ひろみ ) 訳

小麦、トウモロコシ、コメに次ぐ4番目に重要な主食となる作物。

世界の年間生産量は約3億トン、過去10年間で年率4.5%の増加。

2003年のヨーロッパの1人当たりの平均消費量は、約93キログラム。途上国では約22キログラム。

世界125カ国で栽培されており、耕作面積は約19万5000平方キロ。

中サイズ1個は、熱量約110キロカロリー、タンパク質3グラム、炭水化物23グラムを含むが、脂肪はゼロ。

大人1人が1日に必要とするビタミンC の半量と鉄分、カリウム、亜鉛を含む。

ジャガイモは、草質茎の植物で、大きくなった茎の一部である塊茎 ( かいけい ) が食用部分。

約1万年前にチチカカ湖の地域 ( 現在のボリビアとペルー の国境地域 ) で初めて栽培されたと推定される。

アンデス地域の農民が、食用に適した野生のイモを探し、徐々に品種改良に成功した。

最初のジャガイモである馬鈴薯 ( Solanum tuberosum ) は、約7000年前には栽培されていた。

ジャガイモは16世紀にヨーロッパに伝わり、その後宣教師、商人、移民によって広まった。

先月連邦開発協力局 ( DEZA/DDC ) とチューリッヒ連邦工科大学 ( ETHZ ) が共同主催したワークショップで、これらの開発援助プロジェクトの経済的そして社会的な重要性が強調された。

ETHZは、「ジャガイモのオデッセイ展」と題して、ヨーロッパが征服する前の中南米大陸におけるジャガイモの文化的な役割に光をあてた展覧会を行った。

中南米では、ジャガイモは西洋の基準を超えた文化的価値があった。

例えば、ジャガイモの1種 ( Llunchuy waquachi 種、写真参照 ) が、女性の結婚適齢期を知らせるのに重要な役割を果たしていた。

この奇妙な形のジャガイモの皮をむくことができる少女は、結婚適齢期にあるとみなされた。

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