スイスの地域振興策、振るわず 山岳地域で進む過疎化

スイス山岳地域での人口の流出が止まらない。
国の人口の4分の3は現在、都市部に集中しており、山岳地方を去る人は年々増加傾向にあるという。
財政事情を始め、地方をめぐる状況はかつてないほど厳しい。連邦政府はこれまでの無駄な公共事業を削減して、地方での雇用創出に励み、地方自治体は地域の特性を見据えた独自の生き残り策を模索するべきだ、と専門家は訴えている。
雇用創出が鍵
流出する人口に歯止めをかけようと、スイス連邦政府の地域振興策は70年代から始まった。だが、30年経った今でも効果は得られていない。
求人状況は悪化の一途をたどる。連邦経済管轄局(SECO)によると、山岳地域にあるホテルの数は過去10年間で12%減った。山岳農家の担い手も約1万人減っている。
SECO地域振興課のルドルフ・シース課長は「山岳地域に屋内プールや高速道路を建設しても意味がなかった」と話す。「国の地域振興費用は今後、こうしたインフラよりも、雇用を生み出すプロジェクトに活用するべきだ。でなければ、過疎化の問題は解決しない」と強調する。
地域特性活かし
さび切れきった村に活気を呼び起こそうと奮闘している地域もある。
人口わずか5,000人ほどの東スイス・ポスキアーヴォ村で96年、村おこしのための「ポスキアーヴォ・プロジェクト」が発足した。村の中心に遠隔教育センターを設立。ITを活用した教育プログラムが同プロジェクトの柱で、地域の活性化を図るのが狙いだ。
コミュニケーション授業の一環で始まった地産農産物のネット販売も軌道に乗り始めた、と同プロジェクトの責任者ダニロ・ヌッシオさんは指摘する。「ITの活用で自分たちの地域に活路を見出し始めた。国からの補助金だけに頼らなくてもいいと考えるきっかけになった」と話す。
SECOはこうした地域からの自発性が雇用を生み出すとした上で、「ポスキアーヴォ・プロジェクト」を評価している。連邦政府は今後、こうしたプロジェクトを積極的に奨励する方針だ。
スイス国際放送 ダニエル・パパセラ 安達聡子(あだちさとこ)意訳
スイスの過疎化問題:
スイスの山岳地域は国土の約70%を占める。山岳地域からの人口流出は年々増加傾向にあるという。
スイスの人口約740万人のうち、約4分の3は都市部に集中している。

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