福島第一原発事故、安定ヨウ素剤の勝手な服用は危険
「自分で勝手に安定ヨウ素剤を服用するのは避けるべきだ」と世界保健機関 ( WHO ) は、3月18日ジュネーブで開かれた記者会見で警告した。
また、WHOの広報担当グレゴリー・ハルツ氏は「当機関の健康面の判断からは、現在のところ東京への旅行は危険なものではない」と語った。
安定ヨウ素剤の服用
「安定ヨウ素剤は、被曝直前か直後に服用すれば効果があるが、それ以前に放射能予防として勝手に服用すればさまざまな副作用を引き起こす」
とハルツ氏は言う。これは、安定ヨウ素剤のみならず、中国などで起こっているヨウ素を含む塩などの多量摂取に対しての警告だ。 これらの服用や摂取はあくまで国の公共機関からの勧告に従うよう注意を促す。
安定ヨウ素剤をもし勝手に服用すれば、唾液腺の炎症、嘔吐、発疹、胃腸の変調、アレルギー反応などを引き起こす。さらに安定ヨウ素剤はほかの医薬品、特に心臓系の薬ACE抑制剤などと組み合わさると複合作用を引き起こすという。
安定ヨウ素剤は、被曝直前や直後に服用すれば甲状腺に十分に吸収され、その後、放射性物質ヨウ素131が体内に摂取されても、それが排出されるため、体内被曝が避けられ長期的には甲状腺ガンにかかりにくい。
しかし、安定ヨウ素剤の服用は政府の指示に従うべきだとするなら、放射能量の数値を正確に把握し、その情報を隠さず国民に伝える政府の責任は大きい。特に被曝が確認された場合に、福島県の住民などに直ちにその事実を知らせ安定ヨウ素剤の服用を指示する体制は整っているのだろうか、そのあたりが懸念される。
危険度の判断は各国で異なる
またWHOとしては、東京への旅行は現時点での放射線量が少ないため、全く問題がないとしている。
幾つかの大使館が大阪に移動したり、多くの外国人が帰国したりしている点については
「WHOは問題ないとするが、危険度の判断基準は各国で異なっている。またそうした各国の基準に基づいて集めた情報に対しどういった行動を起こすかはまったく個人の判断による」
とハルツ氏は話す。
WHOは今日中に渡航に関するガイドラインをホームページに発表するという。
年間50ミリシーベルトから危険
ところで、福島第1原発で一時、毎時400ミリシーベルトの放射能が確認された。
許容できる放射線量に対しWHOは放射能の量は変動するので、なかなか断定が難しいとしながらも
「1年間の量にして10ミリシーベルトだと外出を避ける。50ミリシーベルトだとそこから避難すべき量。広島、長崎では500ミリシーベルトの放射線量を受けた人の3割がガンで死亡している」
と語った。
ところで、同時に記者会見した世界気象機関 ( WMO ) は、福島第一原発から半径30キロ圏内の空気中の放射線量は、情報がないので判断できないが、現在のところ半径30キロ圏外の飛行は問題ないと言う。
風は太平洋側に向かって吹いており、またこれから北部での温度が上昇するため、被災者の援助活動が少しは楽になるだろうと話した。
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