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もぐもぐスイス味 第4弾 社会科見学 -5- ソーセージと干し肉

BBQ
冷夏でバーベキュー用の肉は今年はあまり売れそうにない © Keystone / Gaetan Bally

田舎や都市でも郊外にちょっと行くと牧場には牛が定番の風景のスイスだが、これはほとんどが乳牛と見ていいようだ。スイスの「肉食度」は欧米諸国と比較して、さほど高いわけではないからだ。

国連食糧農業機関 ( FAO ) によると最も肉を消費する国は、アメリカ合衆国 ( 年間1人当たり123 kg ) 、スペイン ( 121kg ) 、オーストラリア ( 118kg ) 、オーストリア ( 112kg ) の順になっている 。( 2003年資料 )

 一方、スイスの年間肉消費量はこれよりぐんと少なく、2008年で1人当たり53.4キログラムだった。スイス食肉協会 ( Proviande ) によると、スイスで解体された家畜の肉は1987年に最高の約62万トンに達した後、スイス国内で消費される食肉の量は減少し続けた。例えば、豚肉と牛肉は1987年からの10年間で2割減となっている。特に1980年代から1990年代にかけては、健康志向が高まり、動物愛護の意識も芽生えたことで、消費の減少がみられるようになった。さらにBSE ( 牛海綿状脳症 / 俗に狂牛病 ) の発生が消費者の肉離れに拍車をかけた。1999年からは1人あたりの肉の消費量は50キログラム強で推移している。

オメガ3で幸せな豚と人

 肉生産、加工業者は消費の冷却をただ呆然と傍観していたわけではない。今回モモヨと訪問した食品工場「トラタフィナ ( Traitafina ) 」は、BES発生に学び、食の安全度をレベルアップしようと、酪農家の顔が見えるブランド「スイス・プライム・グルメ」を導入した。およそ50軒の酪農家と特別に契約し、家畜に優しい飼育を条件に、家畜に苦痛の少ない輸送方法や解体方法を取ることを消費者に約束している。また、豚肉であれば1週間、牛肉であれば販売まで最低3週間工場に寝かせるといった手間を掛けた商品をセールスポイントとしている。

 また、健康志向の高い消費者向けに、オメガ3脂肪酸の含有量を上げた豚の飼育を成功させた。オメガ3脂肪酸は、魚や大豆などに多く含まれ、コレステロールを減らす役目のある不飽和脂肪酸として知られる。肉や乳製品に多く含まれる脂肪は飽和脂肪酸で、動脈硬化や心臓疾患の原因となるため、健康志向の消費者には嫌われている。

 トラタフィナは缶詰・ビン詰食品の「ヘロ ( Hero ) 」の食肉部門のみ、現在の社長、ヘルマン・バーダー氏が1997年に買収した、比較的新しい食肉加工企業だ。生産責任者のディーター・ヴェーリ氏は、香港で17年間、精肉、加工肉をスイスのホテルなどに調達していたベテラン。香港が中国に返還されたのを機に、スイスに戻ってきた。

 トラタフィナの年間生産量は1万トンにとどまるが、手掛ける商品の数は約3000種。
「例えば隣国ドイツ。好みが違うとはいえ、素材の品質はスイスの方が上でしょう。しかも、多様な商品を一つの工場で作ることは、従業員にとってもやりがいがあります」
 と言う。

 スイスを代表するセルヴィラのほか、仔牛の肉のソーセージ、ザンクトガレン風ソーセージ、ベルン風タンのソーセージ、グラウビュンデンの干し肉など数々の肉加工品がある中で、スイスの今のトレンドは「コンビニエンスフード」。ビーフジャーキーは、料理をあまりしなくなった若者に最も人気だという。

…で、モモヨ隊員は

 今回案内していただいたトライタフィーナの工場長、ヴェーリさんは肉製品に対する限りない愛と情熱にあふれている。実に嬉しそうに、自社製品とその工場を案内してくれた。

 まずは、豚や子羊の半身、子牛の足のぶらさがった部屋へ。アジの開きのよう。お次ぎはミニ風呂桶のような容器に生のお肉が延々と並ぶコーナー。牛肉だの豚肉だの、さまざまな部位の精肉、内臓…。

 「ここの末端価格どの位なんでしょうか。仕入れだけでもおそろしい金額ですね、きっと」「そうね…」
途中ハンバーグ用にミックスされたひき肉を見かけた。入れ物一つの容器が200キロとのこと。ええっと、ハンバーグ1個が250グラム。容器は全部で…「隊長、大変です。合計1万6000個のハンバーグです。一家4人で毎日食べて10年掛ります」計算機を片手に目を回すモモヨである。

 迷える子羊ならぬ一隊は、更に奥深く「肉肉の世界」へ分け入っていく。ソーセージ類のコーナーではこれから茹で上げられるというデカ仔牛ソーセージが縦長の物干しにズラリと並んでいた。「スイスではこのデカソーセージは2本で4500円ですよね。この物干し一つで5万円です。隊長ってば」さっきから、なぜか平静なサトウ隊長。そういえば隊長はベジタリアンでしたね。

 お次は、天井まで積み上げられたパック済みのハムやソーセージの冷蔵倉庫である。その製品の数たるやまさに小宇宙的規模。「お肉の質がね、なんたって大切なんです。これなんぞ、ホントに実にいい製品じゃあありませんか。ねえ?」いとおしそうに製品を取り出して見せてくれるヴェーリさん。

 「うちは小さいですし、大手スーパーは自社工場がありますからねえ。食い込めないんです。いやあ、残念です。でも、小さい工場だから、みんながお互いを知っていていろんな製品にかかわれるところがすごくいいところだと思います」

 とても小さい工場とは思えなかったけれども、大好きな食べ物、自慢の自社製品に囲まれ、日々お肉からタップリエネルギーをもらっているヴェーリさん。雑談になってもヴェーリさんには、隊長がベジタリアンだということは、言わないで置いた。

実に清潔で低温のため胸一杯度 ★★ 
何度生まれ代わっても絶対食べきれない度 ★★★★★

創業1987年。食品会社「ヘロ ( Hero ) 」の肉加工部門から独立。
本社、レンツブルク ( Lenzburg )
年間生産量 約1万t
年間売上 約1億5000万フラン ( 約120億円 )
従業員数 370人
精肉、加工肉、ソーセージ、干し肉、サラダ、サンドイッチなど。
工場の一般公開はないが、本社の横に、ショップがある。

豚肉 24.0 kg
鶏肉 10.9 kg
牛肉 10.8 kg
仔牛 2.7 kg
羊肉 1.3 kg
馬肉 0.7 kg
ウサギ肉 0.3 kg
ヤギ肉 0.1 kg
その他合わせて合計53.4 kg

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