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「われわれの麻薬検査はサービスではない」

この「エクスタシー」の中身は ? ストリートワークのメンバーが麻薬の無料検査をする Keystone

毎週火曜日の夕方、チューリヒ市の麻薬情報センターに行けば、摂取する麻薬の質を検査してもらうことができる。2年前に導入された制度だ。希望者は名前も聞かれない。しかも検査は無料だ。

このコンテンツは 2008/10/25 15:26

「検査を希望して来る人の特徴など無い」とセンターの青年アドバイザー、ドナルド・ガンチ氏は言う。「麻薬に侵されているらしいと思われる人もいれば、自分を完全にコントロールしているらしい人も来る」

隠れた麻薬消費状況を知るために

一般的に言えることは、平均年齢30歳程度。教育レベルが高く女性は4割。「パーティー」の常連ではない人が多い。ヘロイン常習者はまれで、多くの人が問題無く仕事をしているという。検査はコカインからエクスタシーなど錠剤型麻薬や大麻製品までさまざまだ。
「能率向上のためや、鬱 ( うつ ) や不眠の自己治療のために服用しているが、長期の服用は害がある」
とガンチ氏は指摘する。

検査してもらいたい麻薬をコードが付いた封筒に入れて申請する。3日後に外部の試験所に電話し、コードを言うと結果を知らせてくれる。検査を申請する人はすべて、アドバイザーに相談する義務を負い、麻薬消費状況を問うアンケート用紙にも記入しなければならない。こうして得た情報から、パーティーの場ではなく「静かな個室で」違法に麻薬を服用する人たちの実情を知ることができるとガンチ氏は期待している。

表には出てこない麻薬常習者の把握のために、麻薬情報センター ( DIZ ) が2年前、チューリヒ中央駅に創設された。1年後にはその存在も広く知られるようになり、1日5人以上の人がアドバイスを受け、麻薬を検査してもらいに来る。そのうちの5人に1人は常習の疑いがある人だとガンチ氏は言う。こういった人たちは、主治医に相談するなり、セラピーを受けるようにと勧められる。

ヘロインは流行遅れ

2001年から、若者の集まるパーティーで麻薬検査をしているのは「ストリートワーク」だ。1カ月に1度、検査車がパーティ会場に横付けされる。当初はパーティー主催者の支持を得るのは難しかったが、現在はチューリヒに約50カ所あるクラブの大半の主催者と密な協力関係にある。

現在多くのパーティーでは、エクスタシー、アンフェタミン、コカインに人気があり、ヘロインは流行遅れだという。
「ヘロインはずいぶん前から若者の間でまったく話題に上りません。LSDならあまり害がないと思われているようです」
とガンチ氏。LSDは最も若い世代で、人気の麻薬だ。

麻薬検査制度が導入された当時、右派政党は、麻薬の服用を助長するものであるとか、麻薬ディーラーに対するサービスであると厳しく批判した。しかし匿名の検査では、申請者がディーラーかどうかは分からない。そんなに簡単なことではないと、この道11年のガンチ氏は言う。
「プロのディーラーだと感じ取れば検査はしません。われわれ従業員の中の2人は、パーティーの内情を良く知っています」

DIZでは非常に危険なエクスタシーが見つかったこともあるという。男性であれば体重150キログラムの人、女性であれば体重が50キログラムでも生命の危険があるほど麻薬含有率の高いものだったという。そういった麻薬が発見されれば、ホームページを通して警告するようにしている。

被害を最小限にとどめる

DIZの活動は、社会における麻薬服用を認めることになるのではないかと言いう質問に対し、ガンチ氏は
「もちろん、麻薬を辞めること、または麻薬に手を出さないようにするのが目的です」
と言う。しかし服用してしまうという現実がある。その場合は、どのようにして被害を最小限にとどめることができるかが問題だ。
「人はあまり聞きたいと思わないでしょうが、経費のこともあります。われわれの役目は、麻薬を服用する人たちに、高い医療費や更正費がかかる前に、自分で責任を負えるように仕向けることです」

麻薬対策には、より良い討議の場が必要だ。新しい麻薬の長所や短所を挙げるだけでは不十分だ。麻薬消費の実情が常に変化する現在、何が優先されるか常に判断する必要がある。
「変化に対する勇気と同時に、わたしたちの仕事に対する批判的な反省も必要だ」

スイスでは理性的で現実に即した麻薬取り締まり政策が発展していった。チューリヒが麻薬常習者とディーラーの溜まり場として世界のマスコミに取り上げられた20年前は、社会福祉関係者と政治家がまったく異なった意見を持っていた。
「現在は、任務が矛盾することもありますが、警察とも協力して仕事をしています。目的が同じだから協力できるのです。20年前には考えられないことでした」
とガンチ氏は語った。

swissinfo、ガビ・オクセンバイン 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

スイスの麻薬取り締まり政策

11月30日の国民投票では、大麻イニシアチブと麻薬改正法に対するレファレンダムの是非が問われる。大麻の合法化についてと、4つの柱からなる麻薬取り締まり法について、国民は個別に投票することになる。
麻薬取り締まりについてスイスでは何回も国民投票が行われてきた。1990年代後半には、麻薬取り締まりの強化案が却下される一方で、麻薬を犯罪としない極端な案も支持を得られなかった。1999年の国民投票では、医師の監視下におけるヘロインの分配が期限付きで認められた。
それ以来スイスでは、現実主義的でその場に応じた麻薬政策が取られている。しかし、1980年代に発展した予防、セラピー、被害を最小限にとどめる、取り締まりという4つの柱による政策は、議会によって否決されている。

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ストリートワークとDIZ

ストリートワークは2001年から青少年アドバイス機関として若者の集まるパーティーの現場で錠剤型麻薬の検査や助言をしている。学校での予防活動や広報を担当する。
ストリートワークの手により2006年から麻薬情報センター ( DIZ ) が運営されて、匿名による麻薬の検査を行っている。スイスでは唯一、麻薬の現場で麻薬を検査する機関だ。ヨーロッパにはウィーンにこれと同じ機関がある。連邦保険局 ( BAG/OFSP ) の資金的援助を受けている。

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