スイスの連邦人種差別対策委員会(EKR/CFR)は19日発表した調査報告書で、学校の教科書で人種や差別の問題がきちんと取り上げられていないと指摘した。
このコンテンツが公開されたのは、
調査はスイスの学校教科書が人種差別や社会の多様性をどの程度扱っているかを調べた。報告書外部リンクでは、全般として社会的な「普通」がかなり均質的に白人として描かれていると分析した。人種差別に関する教育は学習指導要領に組み込まれている。
調査によると、学校の教科書は近年、人種差別に関する議論の高まりにある程度対応してきた。たとえば「インディアン」という語は「アメリカ先住民族」に置き換えられた。カナダのイヌイットについてはステレオタイプに描かれているものの、現代イヌイットの個人的な肖像は削除された。スイスの「植民時代」に関する記述を含んだ教科書も登場しているという。
だが報告書は、これだけでは不十分だと指摘した。人種差別教育は、フランス語圏の指導要領「Plan d’étude」でも、ドイツ語圏の「Lehrplan21」でも重点が置かれていない。教科書は人種差別の網羅的な定義を記載しておらず、歴史上や対人関係で起きる出来事としてしか描いていない。人類を階層化・分類する原因となる人種主義の構造的側面にも触れていない。
また教師へのアンケートでも、人種差別というテーマが公教育上の義務であることは理解していながら、利用可能な教材は授業で取り扱うには適していないと感じていることが分かった。研修でも授業でどのように人種差別に関する議論を開始・進行するかといった基本的なことをほとんど学んでいないという。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
おすすめの記事
キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの自由緑の党(GPL/PVL)チューリヒ支部に所属するサニヤ・アメティ氏(32)は9日、党の役職を辞すると発表した。自身のインスタグラムでキリストと聖母マリアを描いた絵画を的に射撃の練習をする写真を投稿し、大きな批判を浴びていた。
もっと読む キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職
おすすめの記事
スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス検察当局は、国民投票の提起に必要な署名が偽造されたとの疑惑を捜査している。収集代行業者が過去の署名を使い回したり、金銭を見返りに署名を集めた可能性がある。
もっと読む スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
おすすめの記事
1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのニトヴァルデン準州クレヴェンアルプで31日、1000人以上のアルプホルン奏者が集まり、「アルプホルンを合奏する人数」の世界記録を更新した。
もっと読む 1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新
おすすめの記事
社会民主党、収入約16億円で全政党トップ 政治資金報告書
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦監査院(SFAO)が30日、2023年の政治資金報告書を発表した。
もっと読む 社会民主党、収入約16億円で全政党トップ 政治資金報告書
おすすめの記事
スイス政府、原発の新設解禁に前向き
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は28日、「すべての人にいつでも電気を:ブラックアウト(全域停電)を止めよ」と題するイニシアチブ(国民発議)に反対を表明した。ただ、新たな原子力発電所建設の解禁には原則として支持する考えを示した。
もっと読む スイス政府、原発の新設解禁に前向き
おすすめの記事
マッターホルンの麓町ツェルマット、日帰り客に入場料を検討
このコンテンツが公開されたのは、
スイスを代表する名峰マッターホルンの麓町ツェルマットは、日帰り観光客の多さに悩んでいる。 現在、入場料の徴収を検討中だ。
もっと読む マッターホルンの麓町ツェルマット、日帰り客に入場料を検討
おすすめの記事
パリ協定遠く…スイス全州で気候変動対策不十分 WWF調査
このコンテンツが公開されたのは、
世界自然保護基金(WWF)スイスは27日、スイスの全ての州でパリ協定の目標達成に向けた十分な取り組みが行われていないとの分析結果を発表した。
もっと読む パリ協定遠く…スイス全州で気候変動対策不十分 WWF調査
おすすめの記事
スーダン停戦交渉、和平合意なく終了
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ジュネーブ地方で10日にわたって行われたスーダン内戦の停戦協議が23日、停戦合意に達することなく終了した。
もっと読む スーダン停戦交渉、和平合意なく終了
おすすめの記事
スイス観光地ブリエンツの土砂災害 予想より被害深刻で鉄道路線に影響
このコンテンツが公開されたのは、
12日にスイス・ベルン州を襲った嵐の影響で土砂崩れなどの被害を受けた人気観光地ブリエンツ村の一部では、依然として閉鎖が続いている。
もっと読む スイス観光地ブリエンツの土砂災害 予想より被害深刻で鉄道路線に影響
おすすめの記事
マッターホルンで登山者の滑落死相次ぐ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの名峰マッターホルンで16 日、登山者が下山中に800m下の氷河に滑落し死亡した。同じ山では14日にも、別の登山者2人が滑落死した。
もっと読む マッターホルンで登山者の滑落死相次ぐ
続きを読む
おすすめの記事
人種差別の報告件数、スイスで増加
このコンテンツが公開されたのは、
2022年に報告されたスイスの人種差別は708件で、前年に比べ78件増加した。
もっと読む 人種差別の報告件数、スイスで増加
おすすめの記事
スイスで受けたアジア人差別
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ルツェルン大学に留学中の台湾人女性は、新型コロナウイルスの感染が広がる欧州で、アジア人であることでさまざまな差別的言動を受けた。
もっと読む スイスで受けたアジア人差別
おすすめの記事
ドレッドヘアのスイス人レゲエバンドは「文化の盗用」?
このコンテンツが公開されたのは、
白人ミュージシャンが髪型をドレッドヘアにし、アフリカの民族衣装を着てレゲエを演奏することは許されるのか?スイスではそんな議論が白熱している。
もっと読む ドレッドヘアのスイス人レゲエバンドは「文化の盗用」?
おすすめの記事
スイス大使、国連の人種差別批判に反論
このコンテンツが公開されたのは、
国連人権理事会のスイス大使ユルク・ラウバー氏は3日、スイスに構造的な人権差別があると批判した国連の報告書には「誤解がある」と反論した。
もっと読む スイス大使、国連の人種差別批判に反論
おすすめの記事
スイスにも構造的人種差別がある
このコンテンツが公開されたのは、
「人種差別は至る所にある。私のように、白くない肌の人間は日々経験している」―アフリカ系スイス人ジャーナリストのグロヴァー氏はこう話す。
もっと読む スイスにも構造的人種差別がある
おすすめの記事
スイスがもっと人種差別と闘うべき理由
このコンテンツが公開されたのは、
国連は最新の審査報告書で、スイスには人種差別に対処できる明確な法律が存在しておらず、被害者が訴えることのできる手段が不足していると指摘した。活動家は訴訟費用が法外に高いと話す。
もっと読む スイスがもっと人種差別と闘うべき理由
おすすめの記事
難民と地元住民 共生を模索するスイスの小さな町
このコンテンツが公開されたのは、
地図を見ただけでは、ベー(Bex)というスイスの町は、岩塩坑で知られる静かな町に過ぎないと思われるかもしれない。しかしもう少し詳しく見てみると、町の中心部にアフリカ系の店があり、通りには様々な肌の色をした人々が歩いていることに気づくだろう。
もっと読む 難民と地元住民 共生を模索するスイスの小さな町
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。