© Keystone / Christian Beutler
スイスの連邦人種差別対策委員会(EKR/CFR)は19日発表した調査報告書で、学校の教科書で人種や差別の問題がきちんと取り上げられていないと指摘した。
このコンテンツが公開されたのは、
調査はスイスの学校教科書が人種差別や社会の多様性をどの程度扱っているかを調べた。報告書外部リンクでは、全般として社会的な「普通」がかなり均質的に白人として描かれていると分析した。人種差別に関する教育は学習指導要領に組み込まれている。
調査によると、学校の教科書は近年、人種差別に関する議論の高まりにある程度対応してきた。たとえば「インディアン」という語は「アメリカ先住民族」に置き換えられた。カナダのイヌイットについてはステレオタイプに描かれているものの、現代イヌイットの個人的な肖像は削除された。スイスの「植民時代」に関する記述を含んだ教科書も登場しているという。
だが報告書は、これだけでは不十分だと指摘した。人種差別教育は、フランス語圏の指導要領「Plan d’étude」でも、ドイツ語圏の「Lehrplan21」でも重点が置かれていない。教科書は人種差別の網羅的な定義を記載しておらず、歴史上や対人関係で起きる出来事としてしか描いていない。人類を階層化・分類する原因となる人種主義の構造的側面にも触れていない。
また教師へのアンケートでも、人種差別というテーマが公教育上の義務であることは理解していながら、利用可能な教材は授業で取り扱うには適していないと感じていることが分かった。研修でも授業でどのように人種差別に関する議論を開始・進行するかといった基本的なことをほとんど学んでいないという。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
続きを読む
おすすめの記事
人種差別の報告件数、スイスで増加
このコンテンツが公開されたのは、
2022年に報告されたスイスの人種差別は708件で、前年に比べ78件増加した。
もっと読む 人種差別の報告件数、スイスで増加
オピニオン
おすすめの記事
スイスで受けたアジア人差別
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ルツェルン大学に留学中の台湾人女性は、新型コロナウイルスの感染が広がる欧州で、アジア人であることでさまざまな差別的言動を受けた。
もっと読む スイスで受けたアジア人差別
おすすめの記事
ドレッドヘアのスイス人レゲエバンドは「文化の盗用」?
このコンテンツが公開されたのは、
白人ミュージシャンが髪型をドレッドヘアにし、アフリカの民族衣装を着てレゲエを演奏することは許されるのか?スイスではそんな議論が白熱している。
もっと読む ドレッドヘアのスイス人レゲエバンドは「文化の盗用」?
おすすめの記事
スイス大使、国連の人種差別批判に反論
このコンテンツが公開されたのは、
国連人権理事会のスイス大使ユルク・ラウバー氏は3日、スイスに構造的な人権差別があると批判した国連の報告書には「誤解がある」と反論した。
もっと読む スイス大使、国連の人種差別批判に反論
オピニオン
おすすめの記事
スイスにも構造的人種差別がある
このコンテンツが公開されたのは、
「人種差別は至る所にある。私のように、白くない肌の人間は日々経験している」―アフリカ系スイス人ジャーナリストのグロヴァー氏はこう話す。
もっと読む スイスにも構造的人種差別がある
おすすめの記事
スイスがもっと人種差別と闘うべき理由
このコンテンツが公開されたのは、
国連は最新の審査報告書で、スイスには人種差別に対処できる明確な法律が存在しておらず、被害者が訴えることのできる手段が不足していると指摘した。活動家は訴訟費用が法外に高いと話す。
もっと読む スイスがもっと人種差別と闘うべき理由
おすすめの記事
難民と地元住民 共生を模索するスイスの小さな町
このコンテンツが公開されたのは、
地図を見ただけでは、ベー(Bex)というスイスの町は、岩塩坑で知られる静かな町に過ぎないと思われるかもしれない。しかしもう少し詳しく見てみると、町の中心部にアフリカ系の店があり、通りには様々な肌の色をした人々が歩いていることに気づくだろう。
もっと読む 難民と地元住民 共生を模索するスイスの小さな町
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。