Navigation

Skiplink navigation

秘密主義の撤廃、スイス銀行業界の浄化には不十分?

不正に使われたお金の流れをどう食い止めるか―さらなる対策を取るよう、銀行には強い圧力がかかっている Keystone / Rehan Khan

スイスの銀行の秘密主義が終えんすれば、この世の犯罪資金は一掃される――そんなシナリオがあったとすれば、それは書き換えが必要そうだ。銀行に対する捜査当局・規制当局の締め付けは枚挙にいとまがない。スイスにはマネーロンダリング(資金洗浄)を撲滅する政治的意思が欠けているという批判も強い。

このコンテンツは 2020/10/23 08:30
swissinfo.ch

スイス国内外の検察庁は、スイスの銀行を資金洗浄や脱税ほう助の疑いで捜査している。捜査機関は、ほう助先は欧州から南米、アジア、中東、アフリカに至るまであらゆる国に広がっているとみる。

9月に報道された「フィンセン文書」では、世界の大銀行が巨額の資金洗浄に関わってきた可能性が明らかになった。スイスの銀行も世界中で数十億ドルの「疑わしい取引」に関与していたとされる。

最近発覚した不正事件

スイスの金融市場監督機構(FINMA)は9月、アンゴラ籍の顧客と取引する際に反資金洗浄法を遵守しなかったとしてBankSyzを戒告処分とした。

2月にはベネズエラの国営石油会社PDVSAに関する取引で「金融市場法の重大な侵害」があったとして、プライベートバンクのジュリアス・ベアに制裁処分を与えた。同行は国際サッカー連盟(FIFA)による汚職事件に関与した疑いで、米検察庁の捜査を受けている。現在、和解に向け両者が協議しているが、同行には数千万ドルの罰金が科される可能性がある。

ファルコンプライベートは5月、マレーシアのソブリンファンド「1MDB」の不正事件に関与し処分を受けたのを機に、年末をもってスイス国内でのウェルスマネジメント事業を廃止すると発表した。1MDB事件を巡っては、同業者のBSIが2016年にスイス事業の清算を命じられ、EFGに売却している。

スイスの複数の銀行が、ブラジルのペトロブラスとオデブレヒトを巡る不正事件に関与した疑いで捜査を受けている。クレディ・スイスは顧客2650人の脱税をほう助した疑いでベルギー当局が捜査中。UBSはフランス人顧客の脱税ほう助で37億ユーロ(約4千億円)の罰金を科された

End of insertion

スイス銀行協会は声明で「クリーンな金融の中心地であることは、スイスの銀行が競争力を維持するためのカギだ。スイスやスイスの銀行は、犯罪資金に全く関心がない」と謳っている。だがフィンセン文書や一連の疑惑が突き付けた事実は、こうした立場をあざ笑うかのようだ。

ただ、世界に出回る犯罪資金の全てについてスイスの銀行に非があるわけではない。フィンセン文書は香港のHSBCやドイツ銀行、英バークレイズ、米JPモルガン、英スタンダードチャータード銀行、アラブ銀行などの名も挙げている。

スイスの銀行の顧客が全員犯罪に絡んでいるわけでもない。節税と脱税の区別を止め、多くの国と税の自動的情報交換条約を結ぶなど、スイスは犯罪と戦う努力を進めていると言っても良いだろう。

金融当局や連邦検察は、一部の犯罪者に対処している。銀行は10年前には考えられない数の「疑わしい取引」を自発的に通報するようになった。

苛立ち

だがスイスはそれでも不十分だと批判される。スイスは世界最大のオフショアマネー(国外顧客の資産)を抱え、国境を越える全資産の27%を管理している。2018年末時点の国外個人顧客からの預かり資産残高は2兆3千億フラン(約260兆円)だった。

今年6月、スイスのマネーロンダリング通報局(MROS)のダニエル・テレスクラフ局長が突如辞任した。2期目に入って数カ月のことだった。ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーで、同氏は在任中に感じていた不満をぶちまけた。

「マネーロンダリングに関しては、スイスは国外からの圧力を受けてごく必要最低限の基準を実施しただけ」とテレスクラフ氏は憤った。「マネーロンダリングと効率的に戦うことは二の次にされている。これでは何も達成できないという結論に達した」

遅い動き

スイス金融業界はその世界的な重要性にも関わらず、資金洗浄との戦いにおいて果たす役割が小さい――国際NGPトランスペアランシー・インターナショナル・スイス支部のマルティン・ヒルティ代表はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)にこう語った。

ヒルティ氏が問題視するのは、スイス連邦議会が審議中の反資金洗浄法改正案だ。疑わしい顧客と資金の流れを報告する責任を、弁護士が負わされるような内容だと指摘する。それに加え、連邦議員は資金洗浄の手段になりやすい貴金属や宝石の現金取引の問題について、正面から向き合うことを拒否してきた。上下両院とも事前の議論で財務省の提案にそっぽを向いた。

資金洗浄・テロ資金供与の世界的な監視機関である金融活動タスクフォース(FATF)もヒルティ氏と同意見だ。2016年の国別評価では、スイスで資金洗浄対策が大きく進んだと認める一方で、オフショアのペーパーカンパニーを設立するよう弁護士に強いるといった弱点が残っているとも指摘した。

FATFは2020年1月の中間評価で、残る弱点への取り組みは遅すぎて満足できないと批判した。スイスの評価は現在の「かなりの部分は達成されたが、改善の余地あり」からさらに引き下げられる可能性がある。

現在この記事にコメントを残すことはできませんが、swissinfo.ch記者との議論の場は+こちら+からアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

共有する