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スイスの視点で振り返る日本関連の記事

スイスのメディアが報じた日本のニュース

違憲と差戻しを伝える弁護士2人
「性同一性障害特例法」の要件が憲法に違反するかが問われた家事審判で、最高裁は15人の裁判官全員で審理する大法廷で検討し、社会情勢の変化などを踏まえて結論を見直した Keystone

今週(10月27日〜11月2日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから3件をピックアップ。要約して紹介します。

「スイス紙『YCCの終焉』 日銀の金利操作再修正で」「性別変更、生殖不能の手術要件は『違憲』」「ジュネーブのJT本社前にたばこの吸殻6500本」「日本政府、フィリピンなど同志国の軍支援へ」「埼玉の郵便局立てこもり、86歳男を逮捕」「中国拒否の日本産ホタテを米軍が購入」「宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』」「オオカミ型害獣撃退装置『モンスターウルフ』」「田舎館駅のアート作品」―といったトピックスが取り上げられました。

この中から今回は「スイス紙『YCCの終焉』 日銀の金利操作再修正で」「性別変更、生殖不能の手術要件は『違憲』」「ジュネーブのJT本社前にたばこの吸殻6500本」をご紹介します。

スイス紙「YCCの終焉」 日銀の金利操作再修正で

日銀は31日の金融政策決定会合で、緩和策の柱の1つで長期金利を低く抑える「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」の再修正を決めました。スイスのメディアは「YCCの終焉」「金融政策が転換点を迎える準備」などと報じています。

独語圏の経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは「目に余る円安の圧力にさらされている日銀は主要金利をマイナス0.1%に据え置きこそしたものの、YCCは事実上放棄した」と報道。より厳しい金融引き締めを警戒していた金融市場は株高・円安で反応し、日銀への圧力は和らいでいないと伝えました。

また、日銀が物価見通しを大幅に上方修正したことにも触れました。円安は主に輸入物価の押し上げを通じてインフレを刺激するため「間違った」物価上昇圧力も及ぼし、そうした輸入インフレは望ましくないと説明。日銀の目的はむしろ賃上げ強化と内需刺激だとしました。

その上で「金融市場関係者にとって、日銀の説得力に欠けた引き締めは十分ではない。外国為替市場はこれに明確な意思表示をしている」とし、金融政策の急激な転換はもはや今年中には期待できないと分析。「スイスの投資家から見れば、為替ヘッジなしで日本の証券に投資するのは厄介だ。日銀が超金融緩和政策からの明確な脱却に着手して初めて、円高への強固な基盤につながる」と結びました。

独語圏日刊紙NZZは、再修正を「国債利回り上昇に対抗する最後の砦さえ崩れつつある」と報道。元日銀審議委員の白井さゆり・慶応大教授の「(金融政策の)さらなる正常化への期待が高まる可能性もある」といった発言を紹介しました。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/独語、NZZ外部リンク/独語、Südostschweiz外部リンク/独語)

性別変更、生殖不能の手術要件は「違憲」

トランスジェンダーが戸籍上の性別を変えるのに、生殖能力をなくす手術を必要とする「性同一性障害特例法」の規定が憲法違反かどうかが争われた家事審判で、最高裁大法廷は25日、規定は「違憲」とする決定を出しました。

NZZはこの決定に対し、「日本のトランスジェンダーの人たちの健康、プライバシー、身体的自律の権利を守るための重要な一歩」とする人権活動家らの声を紹介。一方、トランス女性のふりをした男性が女性用トイレや更衣室に簡単にアクセスできてしまうとして、一部のトランスジェンダーたちが規定の維持を求め、約2万人の署名が入った嘆願書を最高裁に提出していたことも伝えています。(出典:NZZ外部リンク/独語)

ジュネーブのJT本社前にたばこの吸殻6500本

スイスで「絶滅への反逆(XR, Extinction Rebellion)」運動を行う環境活動家約10人が26日、日本たばこ産業(JT)のジュネーブ本社前に6500本のたばこの吸殻を放置し、たばこ産業が環境に与える影響に警鐘を鳴らしました。仏語圏日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブが報じました。

報道によると、XRのメンバーは「ジュネーブの街頭で4時間で集めたものです。ビズー(※挨拶のキス)絶滅への反逆より」というメモとともに、吸殻をジュネーブのJT本社前に置いたといいます。

XRは「世界保健機関(WHO)によると、たばこ産業は毎年6億本の樹木を破壊し、20万ヘクタールの土地を荒廃させ、220億トンの水の喪失、8400万トンの二酸化炭素排出などで環境に負荷を与えている」と主張。また、たばこ製品は7千種類の有害な化学物質を含み、地球上の主要な廃棄物を形成しているといいます。(出典:トリビューン・ド・ジュネーブ外部リンク/仏語)

今週のスイスのニュース

今週、最も注目されたスイスのニュースは「スイスで第1回ラクレット世界選手権開催」(記事/日本語)でした。他に「スイスとの貿易開放を望んだ李克強・中国前首相」(記事/日本語)、「スイス自販機メーカー、仮想通貨対応機を導入」(記事/日本語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は11月10日(金)に掲載予定です。

校正:宇田薫

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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