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スイスのメディアが報じた日本のニュース

日本の自動販売機の前にたつ子供
国内での市場拡大が難しくなった日本の自動販売機ビジネスは、海外に販路を求め動き出した Keystone / Shizuo Kambayashi

今週(9月8日〜14日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから3件をピックアップ。要約して紹介します。

「日英伊の異色トリオが戦闘機を共同開発」「日本の自販機、海外で市場開拓」「新学期、子供の自殺」「ツール・ド・北海道で大学生死亡」「ドイツ代表監督、日本戦で大敗直後に解任」「富士山でオーバーツーリズム」「豪雨で土砂崩れ100件超」「ジャニー喜多川氏の性加害」―といったトピックスが取り上げられました。

この中から今回は「日英伊の異色トリオが戦闘機を共同開発」「日本の自販機、海外で市場開拓」「ジャニー喜多川氏の性加害」をご紹介します。

「異色トリオがタッグ」日英伊が戦闘機を共同開発

日本、英国、イタリアが次期戦闘機を共同開発するプロジェクトについて、独語圏の日刊紙NZZ(8日付)は「異色のトリオが未来の戦闘機目指す」との見出しで報道。サウジアラビアがこのコンソーシアムに参加しようとしていることにも冒頭で触れました。

同プロジェクトは2022年に3カ国が立ち上げた「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」の下、第6世代の新型戦闘機を開発し、航空自衛隊・F2戦闘機の退役が始まる見込みの2035年の配備開始を目指すというもの。NZZは「主要な防衛プロジェクトにおいて常にパートナーだった」米国が入っていないのは「日本にとっては異例の措置」と指摘。要因の1つとして、米国提供の航空機関連電子機器(兵器システムや通信技術を含む)は日本側のニーズに合わせてアップデートできないという技術的な側面があると説明しました。

同紙はまた、日本政府が北朝鮮、中国の脅威を背に保護国である米国への依存度を下げたいと考えていると分析。ドナルド・トランプ前大統領が次期大統領選で再選された場合「より内向きな米国が危機時に信頼できるパートナーになるのか、日本政府は疑念を抱いている」と解説しました。

同紙は、英国やイタリアにとっても日本との共同開発は新たな領域だとし、英国については「一部の論者はブレグジットとそれに伴う安全保障政策上の英政府の方向転換とみる」と指摘。「原子力潜水艦をめぐる英米豪の政策協力は、英政府がアジア太平洋地域により目を向けていることを示している。日本との協力は2番目の具体例だ」と分析しました。

ただ、ある専門家は同紙に対し「非常に高価な第6世代戦闘機の潜在市場は小さいだろう」と予測。フランス、ドイツ、スペインが共同開発を目指す「欧州型」の第6世代戦闘機に軍配が上がるのか、それとも日英伊の「グローバル型」が勝つのか、それは市場投入後に明らかになるだろう、としています。

また、同コンソーシアムにサウジアラビアが参加を働きかけていることについては、英、伊にとってはコスト減などのメリットが見込めるため前向きな一方、日本はサウジアラビアを経由した中国への輸出支援につながる懸念があり、同調する可能性は低いと見ています。(出典:NZZ外部リンク/独語)

日本の自販機、海外で市場開拓 欧州では苦戦か

低迷する日本の自動販売機業界と海外に販路を求める企業について、NZZが取り上げました。

記事によると、たばこ自販機用成人識別ICカード「taspo(タスポ)」導入や消費税引き上げ、新型コロナウイルス感染症の世界的流行などが引き金となり、日本の自販機ビジネスは2006~2021年にかけて売り上げが低迷。人口減少も相まって、国内での市場拡大が難しくなっています。

記事は、昨年オーストラリア市場への参入を決めた富山県高岡市のGRNや、最近までロシアでの販路を探っていたダイドーグループホールディングスなど、海外での事業拡大を模索する企業を紹介しました。

ただ、欧州での事業展開は厳しいとの見方も。ダイドーの販売責任者は同紙に対し「欧州は街角に自動販売機があることに慣れておらず、日本のように自動販売機で売られている商品を信用していない」と説明。またもう1つは「欧州の消費者の環境意識の高さ」だといい、プラスチック消費量の多い自販機は受け入れられにくいのではと話しました。(出典:NZZ外部リンク/独語)

「J-POP界最強の男」

故ジャニー喜多川氏の性加害問題については、独語圏NZZが8日付で報道。「プロデューサーとして、日本の音楽産業と若者文化を形成したJ-POP最強の男」が、スターを目指す何百人もの少年たちに性加害を加え続けていたにもかかわらず、英BBCが報じるまで35年も国内で封殺されてきた経緯を詳しく伝えました。

同紙はジャニーズ事務所がYoutubeに投稿した謝罪動画についても触れ、その謝罪が不十分だったこと、また一部週刊誌が報じたにもかかわらず、長年口をつぐんできた国内主要メディアに対しても大きな批判が上がったと報じました。

記事はギネスワールドレコーズが最近、ジャニー喜多川氏の「最も多くのナンバーワン・シングルをプロデュースした人物」などの世界記録を公式サイトから削除した件に言及。ただ、「当の本人が安らかに鬼籍の人となったのはもうずっと前のことだ」と、生前に性加害が追及されなかったことを皮肉めいた一言で締めくくっています。

オンラインサイトnau.chも「日本の数十億ドル規模のエンターテインメント業界において、最も衝撃的な虐待スキャンダルであることは間違いない」と報じています。(出典:NZZ外部リンク/独語、nau.ch外部リンク/独語)

注目のスイスのニュース

今週、最も注目されたスイスのニュースは「欧州の要路ゴッタルド基底トンネル、脱線事故でスイスの威信にキズ」(記事/日本語)です。ほかに「スイス・ヴァレー州、アルプス太陽光発電所の建設前倒しを住民投票で否決」(記事/日本語)や「性的虐待1千件以上 スイスのカトリック聖職者ら関与」(記事/日本語)も話題になりました。

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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は9月22日(金)に掲載する予定です。

編集:宇田薫

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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