
スイス最高裁、精神障がい者の自殺ほう助の立証責任を緩和

専門医の意見を得ないで精神疾患を持つ女性の自殺をほう助したとして、殺人罪などに問われた医師でスイスの自殺ほう助団体ライフサークル代表エリカ・プライシヒ氏に対する上告審で、スイス連邦裁判所(最高裁)は無罪を言い渡した。
プライシヒ氏は2016年、精神疾患のある66歳の女性に致死薬を処方し、自殺をほう助したとして、2018年に殺人罪、連邦医療製品法違反で起訴された。公判では、精神科医の資格を持たないプライシヒ氏が女性の自殺ほう助を認めるにあたり、精神科医の意見を得なかった点が問われた。
第二審のバーゼル州裁判所は殺人罪については無罪とし、検察官が上告していた。最高裁の判決は6月28日。
最高裁は、プライシヒ氏は精神科医の報告書は取得していなかったものの、女性の医療記録を精査し、女性本人と集中的に話し合ったほか、女性の世話をしていた人たちと面談し、セカンドオピニオンを得ていた点に言及。最高裁はこれらの材料が、自死を認める条件として十分だと判断した。
精神障がい者の自殺ほう助について、最高裁は2006年、正常な判断能力が認められ、突発的な希死念慮ではない場合は原則可能であるという判決を出した。ただし、自死したいという思いが病気に起因するものでないことを立証することが難しく、スイスで精神疾患患者の自殺ほう助が認められるケースはまれだ。
ただ今回の判決により、精神障がい者の自殺ほう助に際し、精神科医の意見を仰ぐ必要はないという判例ができたことになる。
英語からの翻訳編集・宇田薫

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