未利用食品を無償で提供 食品ロス削減にも

スイスではおよそ10人に1人が貧困状態あるいは経済的にギリギリの生活を送っている。こういった人々を支援するため、国の社会的セーフティーネットや慈善団体の活動と並んで増えているのが、市民による取り組みだ。スイス西部のヌーシャテルで昨年設立された「Free Go(フリーゴー)」という団体もその一つとして精力的に活動している。

このコンテンツは 2020/03/18 08:30

「Sym'Bôle」という団体がアトリエを構える一室。奥まった場所に黒いスクリーンで仕切られた一角がある。その後ろにあるのは1台の冷蔵庫だ。開いた冷蔵庫から玉ねぎやサラダ、レンズ豆と鶏肉の惣菜などを取り出しショッピングバッグに入れているのはリリアンさんという女性。バッグの中にはパンも見える。年金生活者のリリアンさんは、売れ残り食品を並べたこの冷蔵庫「フリーゴー」を定期的に利用している。懐具合によっては冷蔵庫の横に置かれた貯金箱に小銭を入れていくこともある。「おかげでおいしい野菜スープができる。ケーキを見つけることもある」とリリアンさん。

冷蔵庫の中身は毎日変わる。無償の食品へのニーズは高く、冷蔵庫が空になることもしばしばだ。ボランティアたちが周辺を回って売れ残り商品を集め、ヌーシャテル州内の4カ所に設置された冷蔵庫を補充している。

フリーゴーの創設者で代表のマリリン・ベゲーさんによると、フリーゴーの目標は「食品ロスを減らすこと、困っている人たちを助けること、過剰消費のツケについて人々の意識を高めること」だ。

冷蔵庫に必要な電気代は各設置場所の家主が肩代わりする。食品の品質を保つための温度や内容物の管理、例えば調理済み惣菜の集配におけるコールドチェーンの維持(品質の劣化を防ぐ低温管理)などは、ボランティアや協力者が担当する。

フリーゴーの冷蔵庫は人目を避けるように設置されている。利用者の気持ちに配慮してのことだ。食品の入荷は設置箇所ごとに設けられたフェイスブックのアカウントで告知する。告知をしてから冷蔵庫が空っぽになるまで長くはかからない。

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栄養と貧困の複雑な関係

「我々はプレカリティ(不安定状態)の実態とそれに苦しむ人たちを知っている。これは社会活動だ。毎日こうした人々に接する一方で、物が簡単に捨てられてしまう様子も見ている」とベゲーさん。「我々が手配する食品のおかげで食事ができたと感謝されても特に誇らしい気持ちにはならない。当然のことをしているという感覚だ」

生活苦にあえぐ人々に健康的な食事や地産物を届けることは大きな意義を持つ。収入と消費に関する調査によれば、経済的に苦境に立たされた人は食費を切り詰めようとするからだ。

スイス栄養協会は低価格食品について「高エネルギーの割に栄養に乏しい」と警告を発している。貧困層に肥満が目立つのも不思議はない。世界保健機関(WHO)も低所得層の栄養不良状態について警鐘を鳴らしている。

莫大な食品ロス

スイスでは年間約260万トンの未利用食品が捨てられている。連邦環境省環境局(BAFU/OFEV)によると、このうち3分の2は防ぐことができるものだ。過半数(54%)は家庭やレストラン、商店で生じている。

フリーゴーが食品を調達するのもこういった所からだ。売れ残り品を提供してくれるパートナーは地元に9軒ある。調理済みの惣菜は自治体が運営する調理センターから、そしてパンや野菜は地域の商店から引き取る。

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スイスでは食品ロス問題に関して様々な取り組みが進行中だ。国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が定めた目標にも食品ロスの大幅削減がある。売れ残り食品を値引き販売する団体「Too Good to Go」や人道援助団体カリタス経営のショップと異なり、フリーゴーの利用には会員カードもクレジットカードもいらない。

誰もが自由に利用できる冷蔵庫というアイデアは、民主的で便利な食品ロス対策としてスイス各地で実行に移されている。ドイツ語圏ではRestessbar.chという団体がこの方式を採用している。また、フランス語圏では自治体レベルでの取り組みを検討しているところもある。

フリーゴーは創立1周年を迎えるとさっそく、据え置き型冷凍庫を購入するために初の資金集め運動を開始した。「冷凍庫があれば、例えば託児所や老人ホームなどで出た食事の残りをもっと活用できる」とベゲーさん。リリアンさんを始め、未利用食品を頼りとする人たちにとって朗報となるはずだ。

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