政府は、家庭の暖房温度を下げることがエネルギーの配給制回避の一助になると語った
© Keystone / Gaetan Bally
スイス連邦政府は31日、今冬に予想される電気・ガス不足対策として一般家庭でのエネルギー消費を抑えるよう呼び掛けた。
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節電キャンペーンには州、経済団体、企業、市民社会団体も参画している。
ギー・パルムラン経済相は「国内において十分なエネルギーを確保するため、私たちは協力しなければならない」とし「1キロワット時の積み重ねが大切だ」と呼び掛けた。
政府は各家庭に対し、暖房温度を下げ、お湯の使用量を減らすほか、使用していない電気機器や照明のスイッチを切り、調理中のエネルギー使用を控えるよう求めた。
電力供給会社は今後数カ月以内に料金の大幅値上げを行う予定。スイス西部を管轄するロマンド・エナジーグループは、来年の電気料金が49%増になるとしている。
ロシアからのガス供給減とフランスの原子力発電所の稼働率低下が、今冬に予想されるエネルギー不足の主な原因だ。
政府は先週、自主的なガス節約計画を導入。家庭・産業界需要の15%削減を目指すのが狙いだ。水力発電所の貯水量やガス貯蔵施設の貯蔵量を増やす取り組みも進めている。
パルムラン氏は31日、深刻なガス不足が発生した場合に取り得る措置の概要を発表した。家庭での暖房温度を摂氏19度までに制限することや、別荘・プールでのガス暖房を禁止することなどが含まれる。
「社会の平和を脅かす」
スイス経済連盟のモニカ・リュール委員長は「最悪の事態に陥った場合、企業や雇用の存続が危ぶまれ、社会の平和が脅かされるという当然起こりえることに対処しなければならない」と語った。
ほとんどの州は既にエネルギー対策委員会と危機管理チームを立ち上げた。各都市も節電対策として、公共施設の暖房温度を下げ、クリスマスイルミネーションの抑制を計画している。そのほかにも、屋内プールの暖房温度を弱める、記念碑や広告看板の照明を消す、エレベーターの利用を制限するなどの対策がある。
これらの自主的な対策が停電や強制的なエネルギー配給の回避につながると政府は期待している。
シモネッタ・ソマルーガ環境相は、スイスは長期的には代替エネルギー源を増やすための選択肢を模索し続けると述べた。
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英語からの翻訳・宇田薫
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