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スイスのベツナウ原発、熱波から魚守るため出力低下 

Beznau nuclear power plant, built on an artificial island on the river Aare
ベツナウの原発2基は、それぞれ1969年と1972年に運転を開始。アーレ川に浮かぶ人工島にある Keystone / Alessandro Della Bella

欧州は記録的な熱波に見舞われている。スイス・アールガウ州のベツナウ原子力発電所は、冷却水を引くアーレ川の水温が魚にとって危険なレベルまで上昇するのを避けるため、出力低下を余儀なくされている。

スイス北部に位置するスイス最古のベツナウ原子力発電所は、アーレ川の小さな人工島に建設された1号機と2号機で構成されている。ベツナウ原発は他の2つの原発とは異なり、冷却塔を備えていないことから、冷却水にアーレ川の水を使用している。

同原発で年間約6千ギガワット時の電力を生産した場合、下流の水温は通常0.7~1度上昇する。

現在記録的な熱波に襲われているスイスでは、アーレ川を含む河川の水温は既に上昇している。アーレ川に生息する淡水魚は25度以上の水温に耐えられないため、温度の高い冷却水を河川に戻すとこれらの淡水魚に影響が出てしまう。

そのため同原発を運営する電力会社アクスポ(Axpo)は、出力の低下を開始した。同社は環境に関する法的義務を果たす必要もある。

ドイツ語圏スイス公共放送(SRF)外部リンクによると、水温が3日連続で25度を超えた場合、原発は完全に停止せざるを得ないという。

エネルギー問題は気象条件によるものだけではない。ウクライナ戦争の影響で、スイスは今後数カ月間にエネルギー価格上昇や電力不足に陥る危機を抱えている。

電力不足はスイスの水力発電用ダムの生産性が低下する冬に発生すると考えられている。冬になると川の水温は低下するためベツナウ原発の冷却水問題は解消される。

スイスは現在、電力の約3割を国内の原発3基でまかなっている。スイス連邦政府は2011年、日本の福島第1原発事故を受け、脱原発を決定した。ベルン州にあるミューレベルク原発は2020年に解体作業が始まっている。

脱原発を決めた当初は、現存する原発を2034年までに段階的に廃炉にする方針だった。だが長期的な電力供給の確保が不透明なため、2017年の国民投票では脱原発の期限を2050年とする「新エネルギー法」が可決された。一部の政治家からは新規原発の建設を求める声も上がっている。

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