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人工的に幽体離脱

錯覚なのか現実なのか。どのような刺激を与えれば幽体離脱になるのか iStock

臨死体験をした人たちの証言によると、自分が外から見えたという。「魂や霊魂が人の体から抜け出してしまう」ような体験、幽体離脱を健康体の人が人工的に経験する研究が進んでいる。

このコンテンツは 2007/09/02 15:35

スイスとスウェーデンの研究者は幽体離脱を錯覚ではなく、実際にある現象であるとしてビデオ装置を使って体験させる試みが、専門誌に紹介された。

10人に1人は幽体離脱を体験するという。幽体離脱は錯覚に過ぎないという科学者も多い。自分が外から見えたというのは、麻薬患者、癲癇 ( てんかん ) 、脳卒中など、脳の機能に支障をきたした人の多くが体験することが、錯覚であるという見解が広がっている原因だ。

バーチャルリアリティで実現

しかし、健康体でも幽体離脱は経験できる。スイスとスウェーデンの研究チームはそれぞれ別個に、健康な人に幽体離脱の体験を人工的に行うことに成功したとこのほど、米科学誌サイエンスが報道した。

幽体離脱は視覚、触覚、聴覚などの感覚的印象が脳の中で整理できず混乱した結果起こるというのが、今回その成果が発表された科学者の見解だ。「脳に障害があったり、感覚に秩序付けできない人は特に、脳内で物事を関連付けられなくなってしまう」と研究者の1人ビニャ・レンゲンハーガー氏は説明する。そのため幽体離脱が起こるのだという。

連邦工科大学ローザンヌ校 ( EPFL ) のオラフ・ブランケ教授率いる研究チームは、人間の体の外から人工的に幽体離脱を試みた。実験台になる人は健康体。その人の後ろ2メートルのところに、複数のカメラが設置されている。実験台になる人の着装したビデオ眼鏡にはモニターがついていて、背後のカメラから映像が送られる。仰向けに寝た人は、自分の後ろ姿がカメラを通して眼鏡に映し出されて見えるのだが、この時、脳内に混乱が起こる。体から離れた場所から見えるバーチャルな自分の体が、実際には自分の体であると感じるための混乱だ。混乱中は、いらだったりおかしいと感じたりするのだという。

応用は?

レンゲンハーガー氏の研究グループは、幽体離脱そのものを追及するというより、人間の持つ自己意識を研究しているという。「『わたしという感覚』は意識して操作できる」というのが、同研究に携わる哲学者トマス・メツィンガー氏の理論だ。研究が進めば心理学者や脳研究者が、人の中にある「わたしという感覚」の一部を取り出し、体の機能との関連付ける研究ができ、ヒトの解明が進むと期待されている。

スウェーデンチームの心理学者ヘンリック・エールソン氏は「まったく新しいビデオゲームができるかもしれない」と別の視点からの期待をかけているが、実用に非常に有意義な視点だ。たとえば、遠距離手術にも新しい可能性が生まれるかもしれないのだ。遠距離にいる外科医がイメージした手術方法が、手術台の上で実際に展開するといったような可能性だ。

しかし、こうした期待への実現化はまだ遠い将来のこと。この研究によりまずは、幽体離脱した人が語る体験は、その脳の障害による単なる妄想や想像によるものだという汚名は、拭われられることになろう。幽体離脱はたびたび起こるものであり、「健康な人も体験することであり、幽体離脱でなにが起こるのかを研究するために大いに役立つことです」とレンゲンハーガー氏は語る。

swissinfo、アダム・ボーモント 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳

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