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新型コロナでキャンパス閉鎖、学生らが講義再開を要求

現在、スイスの学生はオンラインで授業を受けている
現在、スイスの学生はオンラインで授業を受けている Keystone / Jean-christophe Bott

スイスの学生が大学での授業を再開するよう訴えている。スイス政府は来週、現行の新型コロナウイルスの感染拡大防止対策を継続するか、あるいは緩和するか決める予定だが、学生らは自分たちの悩みを受け止めるよう求めている。

スイスの大学は昨年春、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)対策の一環で閉鎖された。秋学期には衛生・行動ルールの厳守を条件に講義が再開されたが、11月にウイルス感染の第2波が押し寄せ、再び閉鎖された。

大学での授業再開を求める声が高まる中、学生がいつキャンパスに戻れるかは未だ不透明だ。その判断はスイス政府に委ねられている。

スイス学生連合の共同会長、エリシャ・リンク氏はswissinfo.chに対し、「授業が完全にオンライン化されたため、学習する上で重要な社会的な要素や交流が完全に欠如している」と語った。

同氏はまた、「アルバイトの収入に頼っている学生は多く、(パンデミックの影響で)ほとんど仕事がなくなり苦境に立たされている。精神的な健康状態の悪化に加え、勉強に集中できず学業にも支障が出ている。また、裏ではパンデミックのお陰で学生は試験で楽をしているという声もあるが、これは誤りである上、学生の意欲に悪影響を与えている」とEメールでコメントした。

スイス学生連合は8日、政府、州、大学に対し、学生を支援するために更なる措置をとるよう求めた外部リンク。そしてパンデミックが原因で学生が脱落するのを防ぐことが重要だと訴える。「今後パンデミックの長期的な影響に取り組むことになるのは、他でもない今日の学生たちなのだ」とリンク氏は述べた。

政府の判断は?

スイス政府は14日、現在行われている感染拡大防止対策の一部を緩和するかどうか発表する予定だ。

「スイス学生連合は、今後の緩和策に学生の要望を盛り込むよう求める。開校するのであれば、大学と学生のための解決策が必要だ」とリンク氏は言う。

政府に求める19項目の中で、同連合はオンライン授業と並行し、キャンパスでの授業を再開するよう訴える。また、学生のための国家基金を設け、深刻な状況に置かれた学生は誰でも必要に応じ5千フラン(約59万円)を受け取れるようにすべきだと提案する。現状、学生は大学や地方自治体からの資金援助に頼らざるを得ない。

高等教育機関の見解

スイス高等学院特殊部門(HES-SO)のルチアーナ・ヴァッカーロ学長はフランス語圏のスイス公共放送(RTS)外部リンクに対し、学生たちの意見を支持すると述べ、「疲れきった」学生を助けるためには「あらゆる手段」が有効だとした。「私たちは、学生がこの苦境を乗り越えられるようサポートしなければならない。これは私たちの未来にも関わることだ」

政府の今後の決定に関するswissinfo.chの問い合わせに対し、スイスの高等教育機関の統括組織スイスユニバーシティーズは、高等教育機関は疫学的な状況に応じて対応しなければならないと回答。同組織のマルティナ・ヴァイス事務局長は、これまで確立され、実践されてきた感染防止対策外部リンクで学生の安全は保証できるとEメールで述べた。

だが遠隔授業をキャンパスでの授業に切り替えるには、多少の調整が必要だ。計画面からすると、オンライン/キャンパスの切り替えは1学期1回に限定した方が学生も教育機関も対応しやすいとヴァイス氏は続けた。また、大規模なPCR検査が必要になった場合、州が責任を持つべきだとした。

教育とは何か

同組織は既に、学生のためにもできれば講義の一部をキャンパスに戻したいと表明している外部リンク。「単に知識や方法を伝えるだけでは、質の高い教育とは呼べない。それに加えて、複雑な問題を分析し、独自の見識で推論し、ネットワークを構築し、他の意見や考えを尊重して対処する能力が第一に求められる」

教育機関が閉鎖されたのはスイスだけではない。隣国のフランス、ドイツ、イタリアでも、現在キャンパスでの対面式授業は行われていない。

(英語からの翻訳・シュミット一恵)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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