2020年、スイスでは約7600人が新型コロナウイルス感染症で命を落とした
Keystone / Martial Trezzini
新型コロナウイルスの流行により、スイス人の平均寿命は76年ぶりに低下した。2020年に生まれた男性は0.9年短い81.0歳、女性は0.5年短い85.1歳となった。
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スイス連邦統計局の25日の発表外部リンクによると、平均寿命が短くなったのは男性が1944年以来、女性が1962年以来だ。
特に高齢者の平均余命が大幅に短くなった。65歳の男性は前年の20.0年から19.3年に、女性は22.7年から22.2年へと下がった。統計局によると、男性の低下幅は過去最大、女性は1944年以来の大きさとなった。
スペイン風邪との比較
統計局は、スペイン風邪が大流行した1918年と、コロナ流行が始まった2020年の死亡率には大きな違いがあると指摘した。スペイン風邪は約2万2千人と、人口1千人当たり5.6人の死者をもたらした。連邦保健庁によると、新型コロナ関連死は7600人で、1千人当たり0.9人だ。
またスペイン風邪では主に20~40歳の男女が犠牲となったが、コロナで最も死亡率が高いのは80歳超の高齢層だ。1918年の平均寿命は男性が前年より10.1年、女性が8.4年下がり、コロナ禍より低下幅が大きかった。
一方、2つのパンデミック(世界的流行)には大きな類似点もいくつかある。
絶対的にも相対的にも女性より男性の死者が多かった。1918年も2020年も同じ11月に第2波が発生し、死者数のピークを記録した。
また両パンデミックとも、スイス西部の州は東部の州よりも全体的に死亡率が高かった。
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世界の人口増加を抑え地球の限られた資源を持続させようと、環境団体「エコポップ(Ecopop)」が立ち上げたイニシアチブ(国民発議)が物議を醸し出している。同団体は具体的にスイスへの移民数規制と、途上国での家族計画の促進を提案。11月30日の国民投票でその是非が問われる。
エコポップが提案するのは、入移民超過(スイスに来た移民数から、スイスから海外へ移住した人数を差し引いたもの)を3年平均で人口の0.2%以下に抑えること。そして、政府開発援助の出資金の少なくとも1割を途上国の家族計画促進にあてることの二つだ。
イニシアチブを成立させるためには、18カ月以内に10万人分の有効署名を集めなくてはいけないが、同団体は18カ月も経たないうちに11万9千人分を集めた。
「エコポップはスイスでの生活の質を維持するだけでなく、世界の恵まれない人々の苦しみを減らしたいと考えている」と語るのはイニシアチブ推進委員会のリーダー、アレック・ギャグノー氏だ。特定の政党には属さず、普段はエンジニアとして働いている。
家族計画は人権
エコポップの目的は、人間活動が環境や生態系に掛かる負荷を数値化した「エコロジカル・フットプリント」を減らすことだ。この負荷を軽くするためには、世界的に人口をこれ以上増やさないことだと同団体は主張する。
そこで今回、エコポップはスイスへの移民数の規制と、途上国での家族計画の支援を求めるイニシアチブを立ち上げた。この提案が実現すれば、スイス国内だけでなく世界規模で資源の枯渇を防ぐことができ、それによって環境保護ができると考えるからだ。同団体によれば、自発的な家族計画は、1968年に国連が人権として認めているという。
ギャグノー氏によれば、現在およそ2億2200万人の女性が避妊手段もしくは避妊知識を持たず、「途上国における妊娠の5件に2件は、望まない妊娠だ」という。同氏は、スイスはこれまで途上国支援で、家族計画以外のプロジェクトに力を注いできたと批判する。
出生と経済の繁栄
しかし、イニシアチブに反対する声は大きい。反対を表明しているのは政府を始め、すべての主要政党、経済界、労働組合、教会、そして人道支援団体だ。
このイニシアチブは内容が厳し過ぎるため、もしイニシアチブが成立すれば、経済的、また人道的な面でスイスにとって大きなダメージとなると反対派は主張する。
シルビア・シェンカー社会民主党員は、このイニシアチブの論理は理解し難いと話す。「移民数の制限と、家族計画の推進を一緒にとらえるのはあまりにも乱暴だ。内容は話にならない上に、現実味がない」
経済連合エコノミースイスは、移民数を年間1万6千人に制限すると、スイスの経済成長が妨げられると警告する。「高齢化問題に対応するためには、技術のある外国人労働者が必要だからだ」と、同団体チーフエコノミストのルドルフ・ミンシュ氏は話す。
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