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円安、死刑、川俣正…スイスのメディアが報じた日本のニュース

平口洋法務相は記者会見で、「慎重なうえにも慎重な検討を加えたうえで死刑の執行を命令した」と述べた
平口洋法務相は記者会見で、「慎重なうえにも慎重な検討を加えたうえで死刑の執行を命令した」と述べた keystone

スイスの主要報道機関が8月18日~24日に伝えた日本のニュースから、①円安の功罪②高市政権初の死刑執行③川俣正氏、の3件を要約して紹介します。 

「安いニッポン」──この言葉を耳にするたび、複雑な思いを抱く方も多いのではないでしょうか。

スイスの有力紙NZZが、日本の円安問題を「終わらない危機モード」と表現しました。記事が指摘するのは、平時に戻った経済に対し、いまだに「危機対応」の政策を続ける日本政府の姿勢です。

特に印象的だったのは、「通貨とは、その国の輝きを測るバロメーター」という一節。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称された日本が、いまや格安旅行先として注目される──この現実を、スイスの記者は日本の「自尊心」の問題として捉えています。

円安で潤う観光業の陰で、海外旅行が手の届かないものになった日本国民。この矛盾に、私たちはどう向き合うべきなのでしょうか。

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円安を招く終わらない「危機モード」

日本の高市早苗政権が大規模な財政出動を維持する中、スイス・ドイツ語圏の有力紙NZZは、日本政府が「危機モード」の経済政策にしがみついている現状を厳しく批判する論説を掲載しました。

同紙は、日米の共同為替介入でも円安が止まらない原因は日本の歪んだ金融・財政政策にあると分析。かつて高物価だった日本が格安旅行の対象国に転落した現状を捉え、「同時に、多くの日本国民にとって海外旅行はほぼ手の届かないものになっている。これは誇り高き国家の自尊心を傷つけている。通貨とは、その国の輝き(影響力)を測るバロメーターでもあるのだ」と論じ、円安が日本の国の魅力や影響力の低下を示していると指摘しました。

急激な円安を抑えるための日米による共同為替市場介入は「時間稼ぎに過ぎず、それもごくわずかな時間に留まった。持続的なトレンド転換は、政治が問題の構造的な原因にメスを入れない限り成功しない」と一蹴しました。日銀が金利を低水準に据え置いたことで内外金利差が開いたままの、この金利差こそが円安の核心であり、低金利の円を借りて外貨で運用する「キャリートレード」による資金流出を止めるには、日銀が利上げに踏み切るしかないと説明しました。

記事は日本の財政政策には高市氏に明確な責任があると批判します。特に高市氏が主導するバラマキ型の補助金や減税政策を「ジョウロの原則」と揶揄し、「このような給付は、多くの有権者には受けが良い。しかし、巨額の財政赤字を積み上げることは、円に対する信頼をさらに損ねる結果にしかならない」と指摘。目先の人気取りが通貨信認の低下を招く因果関係を位置付けました。

さらに同紙は、「日本政府と中央銀行は、まるで日本が需要崩壊を伴う深刻な危機の中にあるかのように振る舞い続けている。しかし、実態は全く異なる」と指摘し、国内経済が平時に戻っているにもかかわらず、過去の呪縛から抜け出せずに人工的な刺激策を続ける政策決定者たちの「ねじれ」を分析しました。

論説は、日本はデフレを脱却した今こそ、「経済政策も数十年に及ぶ危機モードを終わらせなければならない」と断じます。過度な円安を是正し、国民の購買力を回復させることこそが、観光公害に悩む日本が再び「文化国家」としての格式と誇りを取り戻す唯一の道であると結びました。

日本で死刑執行「米国と並び、先進国の例外」

スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、2009年に大阪のゲームセンターで放火事件を起こし5人を殺害した男に対し、死刑が執行されたことを報じました。死刑囚の実名には言及していません。同紙は、今回の執行が高市早苗政権発足後で初のものであると伝えるとともに、日本における死刑制度の現状や、近年の司法を巡る議論について論じています。

同紙はまず、国際社会における日本の立ち位置について、「日本は米国と並び、G7諸国の中で死刑制度を維持しているわずか2カ国のうちの1つ」と指摘しました。国内の治安状況と死刑囚の数に関する対比にも触れ、「日本の犯罪率は比較的低い。にもかかわらず、現在100人が死刑囚として収監され、そのうち43人は再審を求めている」と説明。死刑囚は処刑当日の朝に初めて執行を知らされるという運用実態を明らかにしています。

また同紙は、日本国内で死刑制度への批判が高まっている背景を分析し、その要因の一つとなったのが、45年以上収監されていた男性が無罪となった事例だったとしました。「男性は再審を勝ち取ったが、これは日本では極めて稀なケース」と位置づけ、日本における再審手続きのハードルの高さを説明しています。

さらに、「2024年の裁判で、警察と検察がこの男性に対する証拠を捏造し、何時間にも及ぶ残忍な尋問によって自白を強要したと裁判所が判決を下した」とし、この極めて稀な再審で明らかになった司法制度の問題点にも触れています。

空間を動かす芸術家・川俣正が体現する「日本の無常観」

スイス・フランス語圏の日刊紙ル・タンは、世界的に活躍する日本人現代美術家・川俣正氏がフランスのシャンパンメゾン「ルイナール」で発表した最新のインスタレーションを取り上げ、川俣氏の創作哲学を詳細に報じました。同紙は川俣氏へのインタビューを通し直、木材や廃材を用いて空間を劇的に変容させる同氏の芸術の背景には、日本の循環的な自然観や自然災害に対する精神性が深く息づいていると紹介しています。

記事はは、川俣氏が手がける「構築と解体」のサイクルを、日本の伝統的な精神世界と重ね合わせ、「無常観、素材、建造物、変化(劣化)、持続期間に対する捉え方は、美術家・川俣正の仕事と決して無関係ではない」と説明しました。

東日本大震災の津波を経験した川俣氏は、被災地の人々がパニックに陥ることなく静かに現実を受け入れた「沈黙」に深く心を揺さぶられましたといいます。誰のせいにもできない自然災害を前に「常に何かが起きるものであり、そこから身を守ることはできない」ということを自明の理として受け入れたといい、その経験はその後の作品制作に決定的な刻印を残します。その結実が、2012年に発表された「アンダー・ザ・ウォーター」です。水平に吊り下げられた無数の板の下を観客が歩くこの圧倒的なインスタレーションは、まるで木屑に覆われた海面下を進むかのような息苦しさと壮麗さを併せ持ち、見る者の身体感覚に直接訴えかけた、と記事は論じています。

記事は、川俣氏の「重要なのはアクション(行為)である。都市の中で、都市の枠組みの中で、あるいは自然の中で、人々に問いかけるような、何か異なるものを生み出す行為なのだ」という本人の言葉で芸術活動を定義づけます。1980年代のニューヨークでストリートアートやゲリラ的な表現に触れた川俣氏の原点を紹介しながら、都市空間に「介入」していく川俣氏の活動は彫刻家や建築家のそれではなく、空間の中で行動する芸術家の仕事なのだ、と結んでいます。

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校閲:上原亜紀子

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