民主党の左傾化、債券利回りの急上昇、「スマートグラスをかけた嫌な奴」の再来?スイスが報じた米国のニュース
スイスで先週報じられた米国のニュースの中から、①民主党の左傾化②債券利回りの急上昇③「スマートグラスをかけた嫌な奴」の再来?ーーについて要約して紹介します。
政界の謎がある。なぜ共和党は、先日のウィスコンシン州の民主党予備選で、ある民主党候補を支援する広告に500万ドル(約7億9000万円)もつぎ込んだのか。その答えは、以下の記事にある。
共和党を打ち負かすための民主党の最善の戦略とは何か。左派へ大きく舵を切ることか、それとも中道を維持しようとすることか。独語圏の日刊紙NZZは、民主党の有権者は最近の予備選において「入り混じったシグナル」を送っていると論じた。
仏語圏のスイス公共放送(RTS)は14日、「中間選挙まで3カ月を切る中、民主党の最も左派寄りの候補者たちが予備選で勝利を重ねている」と報じた。
「民主党内では、党の支持基盤を主に熱狂させる候補者よりも、自党の枠を超えて支持を得られる可能性のある、慎重な候補者を擁立する傾向が長らく続いてきた。しかし、このやり方は今、疑問視されている」とRTSは伝えている。
保守系メディアのNZZが「イスラム系の左派ポピュリスト」と評するアブドゥル・エルサイード氏は8月4日、ミシガン州の上院議員候補の指名争いにおいて、中道派のライバルであるヘイリー・スティーブンス氏を破った。その1週間後には、左派進歩派の上院議員候補ペギー・フラナガン氏がミネソタ州で勝利を収めた。さらに8月18日には、アメリカ民主社会主義者(DSA)のメンバーであるアンジー・ニクソン氏が、フロリダ州の予備選で予想外の勝利を果たした。
しかしNZZは15日、ウィスコンシン州の予備選において「過度に『woke(目覚めた、進歩主義的な)』な候補者は、民主党の支持層に受け入れられない」ということが示されたと指摘した。
NZZが社会主義者と評するフランチェスカ・ホン氏は8月11日、民主党主流派の候補者であるデビッド・クロウリー氏に僅差で敗れ、知事選の民主党候補指名を逃した。ホン氏は世論調査で約20ポイントもリードしていたが、彼女を左派すぎると見なす穏健派の民主党有権者が大規模に動員された。「ホン氏は米国の家族の祝日である感謝祭(サンクスギビング)を植民地主義の遺産とみなし、その廃止を求めた」とNZZは報じている。
同紙は、共和党系の組織がホン氏を支援する選挙広告に500万ドルを投じていたことを指摘した。これは、ホン氏が本選に進んだ方が、共和党候補にとって戦いやすい(弱い)相手になると期待してのことだった。「実際、世論調査ではホン氏が候補者となった場合、民主党が知事選で明らかに敗北することが示唆されていた」とNZZは述べている。
政治学者のギャリー・ジェイコブソン氏はRTSに対し、11月の選挙が決定的なものになると語った。「もし進歩派の候補者が当選を果たせなかったり、国政の状況が全体的に民主党に有利であるにもかかわらず、民主党全体のパフォーマンスが予想を下回ったりした場合、左派の賭けは裏目に出たことが証明され、彼らがその責任を負うことになるだろう」
仏語圏の日刊紙ル・タンは16日、米国の債務と同様、米国の国債利回りも上昇し続けていると報じている。同紙は、米国の国債には依然として買い手がついているものの、投資家はより高いリターンを求めていると付け加えている。
ル・タンは「債権市場は次から次へと急上昇を経験している」と報じた。同紙は、8月13日に行われた250億ドル規模の30年物米国財務省債の入札で、利回りが5.22%に達したことを指摘した。これは「四半世紀ぶりの高水準」だ。また、7月末に行われた420億ドル規模の10年物国債の入札でも、2007年以来の利回りを記録した。
これらの長期国債の利回り上昇は、7月の米国の財政赤字が4323億ドルに達した中で起きている。「これ以上の赤字額を記録した時期を遡るには、コロナ禍の真っ只中であった2021年3月まで戻らなければならない」と同紙は述べ、米財務省によれば、この予算不足は高齢者向け医療保険制度(メディケア)への支出増加、関税の払い戻し、そして債務の利子負担によるものであると説明している。
「最近の米国債の発行状況は、長期国債への関心が依然として強いことを示している。しかし、投資家はリスクを引き受けるだけの見返りとして、より高い利回りを要求している」とル・タンは書いている。
「さらに、中央銀行(米連邦準備制度理事会、FRB)が年内に追加利上げを行う可能性は低くなっているものの、長期国債の利回りは高止まりしたままだ。短期金利はここ数週間下落しているものの、2022年と比べると遥かに高い水準を維持している」
そして最後になるが、米国の債務そのものの規模の大きさも無視できない。「債務残高は間もなく40兆ドルに達する見込みだ。新たな国債発行に加え、金利の上昇は満期を迎える債券の借り換え(リファイナンス)という問題を浮き彫りにする」
同紙は、ジュネーブ拠点の銀行「シテ・ジェスチョン(Cité Gestion)」の運用部門責任者であるジョン・プラサール氏の言葉を引用した。プラサール氏は借り換えの問題について「2027年は米国にとって極めて巨大な年になる。約9兆ドル相当の国債が満期を迎えることになるからだ」と警告している。
NZZは週末、「AIグラスが米国を席巻している」と報じ、なぜビッグテックが「顔」に注目しているのか、そしてなぜ個人情報保護の擁護派がそれに対して警鐘を鳴らしているのかを問いかけた。
ル・タンは18日、「カリフォルニア州メンロパークにあるメタ(Meta)本社には、ドラマ『ブラック・ミラー』のような不穏な空気が漂っている」と報じた。「このSFシリーズのプロデューサーたちも確実に太鼓判を押すであろうシナリオの中で、マーク・ザッカーバーグ氏率いる同グループは、自社のスマートグラスに顔認識システムを搭載することを検討している。くしくもこれらのデバイスは現在、その機能がなくてもすでに激しい批判にさらされている」
同紙によると、メタにとってこの事業は重大な局面を迎えている。メタはスマートグラス市場で84%のシェアを握り、価格の下落も手伝って売上は伸び続けている。最新モデルは300フラン(約6万円)未満で手に入る。グーグルは今秋にスマートグラスを発売する予定で、スナップ(Snap)も新しいモデルをリリースし続けている。
顔認識機能を備えたスマートグラスが市場に登場するのは必至なのか。テクノロジー評価財団(TA-SWISS)のプロジェクトマネージャーであるレティシア・ラムレ氏は、ル・タンの取材に対し、「もしこれが公共の場で一般化すれば、人々は果たして快く受け入れるだろうか」と語った。「私たちのほとんどは、通りですれ違う見ず知らずの人に身元を特定されたいとは思わない。例えば、ストーカー行為や、仕事、政治活動、私生活に基づいた監視などのケースを考えれば、これは危険をもたらす可能性がある」
しかし、NZZのある女性記者はすでにその魅力に取り憑かれているようだ。サンフランシスコから、メタのディスプレイグラスについて次のように綴っている。「使い始めてわずか10分で、もうこのスマートグラスを外したくなくなった。写真を撮るにはグラスのフレームを軽くタップするだけ。音楽はテンプルから耳へと直接流れてくる。右レンズには、最寄りのカフェへのルートが投影される。矢印が道を示してくれる。眼鏡店を出て、それから左。スマートフォンを見つめながら通りを彷徨う代わりに、グラスの端に視線をやるだけで済む」
約800ドルで販売されているメタのディスプレイグラスは、データ保護上の懸念から欧州では未発売だ。顔認識に関する報道も火に油を注いでいる。「現時点でさえ、第三者がメタのグラスで録画されているかどうかを判別することはほぼ不可能だ」とNZZは指摘する。「さらに、メタにはユーザーのデータ保護に関して極めて劣悪な実績(過去のトラブル)があるという事実も重なっている」
スマートグラスはスマートフォンと同じように普及していくのか。必ずしもそうとは限らない。「シリコンバレーは長年にわたりスマートグラスに挑戦してきたが、これまでのところ成功していない」とNZZは記している。「2013年に発売されたグーグル・グラスは、テック史上最大の失敗作となった。製品が悪かったからではなく、社会の受け入れ態勢ができていなかったからだ。どこでも秘密裏に写真を撮られるかもしれないというアイデアは、当時、激しい反発を引き起こした。グラスの着用者たちは『グラスホール(Glassholes=グラスと嫌な奴をかけた造語)』という烙印を押されたのだ」
同紙はさらに、「専門家たちでさえ、『グラスホール効果』が繰り返されることを懸念している。プライバシーへの懸念や大衆の反発によって、スマートグラスが再び失敗に終わるのではと案じている」と指摘した。
次回の「スイスが報じた米国のニュース」は、8月27日 (木)にお届けします。
スイスのメディアが報じた日本のニュースの登録はこちらから👇
おすすめの記事
スイスのメディアが報じた日本のニュース 無料ニュースレター
英語からの翻訳・校正:宇田薫
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。