平和憲法、ホルムズ海峡、ホンダ… スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が3月11日~17日に伝えた日本関連のニュースから、①世界第5位の軍事国家・日本②トランプ大統領、日中韓にホルムズ海峡に艦隊派遣要請③ホンダ、上場来初めて赤字に、の3件を要約して紹介します。
ドイツの専門家によると、日本は軍事力では世界5位に位置するそうです。国内総生産(GDP)では今年インドに抜かれ世界5位に転落しそうな日本ですが、これは「コスパの高い軍事力」と言えるのか、それとも「身の丈に合わない軍事力」なのでしょうか。
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世界第5位の軍事国家・日本
「『二度と戦争はしない』という理念は疑わしいものとなった」――独デュースブルク・エッセン大学東アジア研究所のフロリアン・クルマス教授は、ドイツ語圏の大手紙NZZへの寄稿で日本の平和憲法の歴史を振り返りながらこう指摘しました。クルマス氏は「徹底した平和主義を掲げていた日本が、軍事力で世界第5位の軍事大国へと上り詰めた」点に着目。そこに内在する矛盾を論じました。(ただし5位としたソースは不明)
戦後、軍国主義の再来を防ぐために「アメリカに押し付けられた」憲法9条ですが、クルマス氏は「アメリカ自身がすぐにそれを後悔することになった」と指摘します。リチャード・ニクソン政権(1969~74年)で早くも「日本をより積極的な軍事同盟国へと転換させようともくろみ、日本政府に9条の放棄を迫った」といいます。
クルマス氏は広島・長崎と日本政府との間にある核兵器をめぐるギャップも浮き彫りにしています。被爆地は原爆被害の大きさを訴え続けてきましたが、政府が非核三原則を採択したのは1967年になってのこと。「その一方で日本政府がアメリカの核の傘に依存したことは、ある種のダブルスタンダード、もっと言えばシニニズム(冷笑主義)に等しいものだった」
さらにアメリカでは、今も原爆投下は「正しい選択だった」との言説が根強く、2024年に日本被団協がノーベル平和賞を受賞したことも「ほとんど同情を持って迎えられなかった」とクルマス氏は記しました。その対比として、1994年にイスラエルのシモン・ベレス外相が「原子爆弾は空飛ぶホロコーストのようなものだ」と表現した発言を紹介しました。
人類、そして政治家たちはこのことから何かを学んだのか?クルマス氏は、改憲を目指す高市早苗首相の登場により、こうした問いが重要性を増している、と指摘します。「概して、ここ数十年の現状は日本にとって好ましいものだった。だからこそ、政府が現状維持のために全力を尽くしていないことに、多くの日本国民が驚いている」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
トランプ大統領、日中韓にホルムズ海峡に艦船派遣要請
事実上の封鎖が続くホルムズ海峡をめぐり、ドナルド・トランプ米大統領は16日、日本と中国、韓国を名指しして「助けに来るべきだ」と述べ、圧力をかけました。日刊紙NZZは3国がともにホルムズ海峡経由の原油に依存しながら、要請を簡単に応じない(応じられない)それぞれの事情を解説しています。
記事は3国の原油・ガス調達の湾岸地区への依存状況を概説したあと、「ホルムズ海峡におけるタンカーの航行が長期間にわたり著しく制限されれば、ソウル、東京、北京は深刻な問題に直面することになる」と総括。しかしながら「どの政府も紛争地域への海軍派遣に積極的ではない」と説明します。
特に同盟国である日本と韓国へのアメリカの圧力は強く、さらに「純粋に軍事的な観点から見ると、韓国と日本はともに相当な資源を提供できる」と記事は分析します。例えばイランがホルムズ海峡への機雷設置を進めるなか、「日本の海上自衛隊の機雷除去能力は世界最高水準である」として、アメリカの弱点を補うことができると示唆しました。ただ日本も韓国も、自衛隊・軍隊派遣には法的問題をクリアしなければなりません。
中国に関しては、地上作戦とは異なり海上では久しく米中合同訓練を実施していないことから、「連携は大きな課題となるだろう。衝突、あるいは偶発的な相互発射でさえ、大惨事につながる可能性がある」と指摘しました。いずれにしろ中国はアメリカの要請に回答していません。「北京は自ら招いた混乱からアメリカを救済する意思をほとんど示していない」と記事は描きます。
その背景には「単純明快な計算がある」と記事は続けます。「ワシントンがイランに向けて発射するミサイルは、中国との紛争で使用できるミサイルを1発減らすことになる」。中国がイランと水面下で中国籍タンカーの自由航行を交渉している可能性があるとし、中国が余裕風を吹かせている事情を説明しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
ホンダ、上場来初めて赤字に
ホンダが12日に発表した2026年3月期の通期業績予想は最大6900億円の赤字と、上場以来初めての最終赤字になる見通しです。日刊紙NZZは背景として電気自動車(EV)戦略の見直しを挙げ、アメリカ市場向けEV3種の開発中止と、2040年までにエンジン車を廃止する目標を撤回した点に注目しました。
「米国向けモデルの開発中止は、ホンダ自動車部門が直面する存亡の危機を象徴するものの一例に過ぎない」。記事はこう指摘し、2040年までにEVと燃料電池車のみの生産に切り替える戦略を撤回した今、次なる戦略の策定に向け経営陣に「大きなプレッシャーがかかっている」と伝えました。
記事は最終赤字になったこと自体は「驚くべきことではない」とし、欧米古株メーカーや日産自動車など多くがEVの成長鈍化に苦しんでいると描きます。ホンダはトヨタ自動車とならび「ハイブリッド車の市場リーダー」であると伝えつつ、「転換は簡単ではない」と指摘しました。
EV補助金を廃止したアメリカ、低迷する中国市場もホンダにとって大きな関門です。記事は「唯一の明るい材料は二輪車事業」だと伝え、赤字ながらも1株70円の配当を維持することを明記しました。ただし「雇用への影響をどの程度抑えられるかという疑問」は、12日の会見で明らかにされなかった、と指摘しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
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国際法を侵してイランを攻撃したアメリカとの向き合い方は、中立国スイスにとっても難題です。14日には米軍の偵察機2機のスイス領空飛行申請を却下しました。スイスの中立法で、「紛争当事者がその紛争に関連する軍事目的でスイス領空を飛行する」ことは禁じられているためです。
スイスが中立法の適用を迫られるのは今回が初めてではありません。その背景を解説した3月4日配信記事も含め、スイスの決断に日本読者からも高い関心が寄せられました。
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次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は3月25日(水)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子
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