The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

移民、ペット、アルゲリ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

ひまわりの着ぐるみを着たチワワ
子どもよりペットの数が多いという日本では、ペット市場に参入する他業種企業も増えている EPA/FRANCK ROBICHON

スイスの主要報道機関が4月8日~14日に伝えた日本関連のニュースから、①日本が移民無しでも豊かなのはなぜ?②子どもよりペットの多い日本③日本の紙幣を支えるネパール産アルゲリ、の3件を要約して紹介します。

スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーによると、日本のペット市場はドイツの1.5倍も大きいそうです。そうなると次に期待されるのは、日本製ペット用品の海外進出。優れた品質とデザインの日本製品をどんどん欧州にも売り込んで、少子化に負けない経済力を維持してほしいものです。

「スイスのメディアが報じた日本のニュース」ニュースレター登録はこちら

日本が移民無しでも豊かなのはなぜ?

スイスでは6月14日、事実上の移民規制案が国民投票にかけられます。移民と経済発展との関連をめぐる論争がスイスでかまびすしくなるなか、独立系メディアのネーベルシュパルターはスイスと日本の人口構造や成長率を比較する論考を掲載しました。

記事は「物質的な豊かさ」として、1人当たり国内総生産(GDP)伸び率に注目しました。過去3年間のGDP伸び率はスイスが平均1.1%、日本が同1.3%とほぼ同水準。しかし1人当たりでみるとスイスは0.1%にとどまる一方、日本は平均1.7%を記録しました。記事はこれを「日本では物質的な豊かさが大きく伸びているのに対し、スイスは移民流入が一因となり停滞してきた」と総括しました。

この差が生まれる原因を、記事は「日本人は高齢になっても労働力として活躍し続けている」ためと分析します。65歳以上の3~4人に1人が働き続け、65~69歳に限ると過半数が就業しているといいます。

一方、スイスの65歳以上就業率は10~15%にとどまっています。しかもそれは必ずしも高齢者が働きたくないからではなく、税制や年金制度に就業を促すインセンティブが無いためだと記事は指摘します。雇用主にとっても、スイス人高齢者に頼るインセンティブがなく、EU全域から有能な労働者を採用したほうが得策だといいます。

ただし、記事は「日本をスイスの模範として挙げているわけではない」と明言。日本人の平均幸福度はスイス人に比べて低いこと、その原因として仕事でも私生活でも同調圧力が強いことを挙げています。

そのうえで、「スイスが日本から学べること」として①高齢者層がもっと積極的に労働市場に参加するようになれば、熟練労働者不足の大部分は解消される②長く働き続けたいと願う高齢者が増えるのであれば、私たちはその可能性が確実に活用されるようにすべきだ、の2点を並べました。(出典:ネーベルシュパルター外部リンク/ドイツ語)

子どもよりペットの多い日本

ペットの数が子ども(15歳以下)の数を上回った日本。スイスのオンラインメディアGMXはこの逆転現象を「かつては人口動態上の課題を映す数字と見なされていたが、今や収益機会として捉えられている」と描きました。

筆者のフェリックス・リル記者は4月1~4日に東京ビッグサイトで開催されたペット用品の国際見本市「インターペット東京」を取材。子ども・高齢者用おむつやベビーカーを主力商品としていたメーカーが、ペット用の製品を積極的に開発していると描きました。

「誰もが知っているように、日本のペット市場ほど洗練された市場は他にない」。記事はこう指摘し、日本のGDPはドイツに抜かれたものの、ペット市場に限れば1兆9000億円(約109億ユーロ)とドイツの70億ユーロを大きく上回ると説明しました。

しかしこの活況は、日本の人口減少と表裏一体です。会場を訪れたチワワ2匹の飼い主は、結婚が遅かったため子どもを持つことは選択肢になかった、とリル氏に語っています。またリル氏は塾代を含む学費が大きな負担であることも、「お金もかからず、成績低下という悩みの種もないペットを飼えばいい」という考えに至る一因であると指摘しました。

ただし「一部のペット用品は子ども用品より高額なこともある」と記事は続けます。ペットには大金を費やす飼い主も少なくないことに、記事はやや批判的にみています。「動物たちがプリンセスドレスや日本代表のユニフォームを着て喜んでいるかどうかは定かではない。しかし、飼い主たちは大抵、その姿に大喜びしている」(出典:GMX外部リンク/ドイツ語)

日本の紙幣を支えるネパール産アルゲリ

日本のお札にネパール産の原料が使われていることをご存じですか?ヒマラヤ高地で生産される低木「アルゲリ」は、日本紙幣に長らく使われてきた「ミツマタ」の近親種。スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、カトマンズのアルゲリ生産者を訪れ、小国の農家が経済大国日本の支えとなっている実態を描きました。

「カトマンズ出身のキラン・クマール・ダンゴル氏は、裕福な国である日本が造幣のために自分の小さな故郷ネパールを必要としていることに、ある種の誇りを感じている」。ネパール手漉き紙製造者協会の会長を務めるダンゴル氏は、「アルゲリ」を日本以外の国も造幣に採用してくれることを夢見ています。

しかし世界の現金産業は複雑で、紙幣を国内生産するのは日本、スイス、米国、中国、インドなどごく一部。他の国の中央銀行は国際的な専門業者に委託しており、それも少数の企業に集中しているといいます 。

原料も国によってさまざまです。米ドルは綿と麻、ユーロは純綿、スイスフランは2層の面でプラスチックの芯を挟んでいるといいます。記事によると「日本の国立印刷局はおそらく世界で唯一、紙幣の原料に樹皮を使用している印刷所」だそうです。

円紙幣には長らく国産ミツマタが使われてきましたが、「気候変動と農業従事者の高齢化がミツマタ栽培に問題を引き起こした」。ミツマタを供給してきた政府刊行物専門書店「かんぽう」は1990年代以降、ネパールからアルゲリを輸入するようになりました。

アルゲリ生産者のニマ・シェルパさんは取材に、「日本人は非常に高い品質を要求する」と語ります。収穫した樹皮のうち、純粋で淡い色の乾燥した内側の層だけが日本の通貨に使用されるといい、それは「おそらく全体の5~10%程度」だということです。

記事は、戦争や気候変動リスクが高まるなか「どの国も耐久性があり偽造防止機能のある紙幣の安定供給、ひいては必要な原料の確保を放棄することはできない」と、その重要性を強調します。特に日本はバブル以来、現金への執着が根強いことも指摘。そんな日本がネパール産原料に依存している現状を踏まえ、「ネパールがこれほどまでに力強く映ったことは滅多にない。農業部門が国際資金の流れに直接貢献していると主張できる国が他にあるだろうか?」とまとめました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

石油備蓄再放出へ外部リンク(4/10)
中国を「重要な隣国」に格下げ 外交青書外部リンク(4/10)
アンディ・フグ再来?K1ファビアン・ロリートが東京デビュー外部リンク(4/11)
隈研吾の大聖堂増築が完成 地元で賛否外部リンク(4/13)
桜島が噴火外部リンク(4/13)
屋久島のささやき外部リンク(4/13)

話題になったスイスのニュース

米・イラン戦争に伴うホルムズ海峡の封鎖は、原油市場を通じて世界中の経済に試練を与えています。スイスは中東産原油の輸入量こそ少ないものの、国際エネルギー相場の上昇はスイスの企業や家計にも打撃を与え、貿易相手国の景気減速という間接的な影響も免れません。

特にスイスに拠点を置く商品取引会社や、貿易金融企業、再保険会社は、輸送量の減少や流動性不足といった困難に直面しそうです。さらにはスイスが重要な役割を果たす人道支援物資の流れにも影響が出る恐れが…そんな複雑な事情をこちらの記事でまとめました。

おすすめの記事
国際宇宙ステーションから撮影されたホルムズ海峡の様子。NASA提供

おすすめの記事

国際都市ジュネーブ

ホルムズ海峡の混乱がスイスに及ぼす影響

このコンテンツが公開されたのは、 海上輸送の要衝であるホルムズ海峡が事実上封鎖されて1カ月以上が経った。米・イスラエルのイラン攻撃を発端としたこの混乱は、世界のエネルギーおよび人道支援物資のサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにした。

もっと読む ホルムズ海峡の混乱がスイスに及ぼす影響

記事向上のためアンケートへのご協力お願いします

毎週配信している 「スイスのメディアが報じた日本のニュース」 をお読みいただき、ありがとうございます。
皆さまのご意見は、私たちにとってとても大切です。2分ほどで回答できる簡単なアンケートにご協力いただき、より良いジャーナリズムづくりにお力添えください。
このアンケートは匿名で、回答内容や個人情報はすべて厳重に管理されます。

👉アンケートに参加する外部リンク

次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は4月22日(水)に掲載予定です。

ニュースレターの登録はこちらから(無料)

校閲:大野瑠衣子

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部