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グラフで読み解く EUとの「人の移動の自由」とスイス経済の相関関係

過去10年間で、EU・EFTA(欧州連合・欧州自由貿易連合)加盟国からのスイスへの純移民数は約40万人に達した。また、毎日数万人が越境労働者として国境を越えて通勤している
過去10年間で、EU・EFTA(欧州連合・欧州自由貿易連合)加盟国からのスイスへの純移民数は約40万人に達した。また、毎日数万人が越境労働者として国境を越えて通勤している Keystone / Gian Ehrenzeller

「人の移動の自由」協定は、欧州からスイスへの移民を促進してきた。スイス当局、雇用者団体、労働組合はこれが労働市場の需要を満たすのに寄与し、将来の人口高齢化に伴い、その必要性はさらに高まると主張する。しかし、この制度にはコストも伴う。

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スイスとEUは2002年6月1日に発効した「人の移動の自由」協定により、EU、欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国の国民は、収入源を確保していれば、スイス国内に居住し自由に働くことができるようになった。この逆も同様だ。

1999年6月21日にスイスと欧州連合(EU)の間で署名された「人の移動の自由に関する協定外部リンク」(AFMP)は、EUおよびEFTA加盟国の国民に対し、スイス国内の居住および就労条件の改善を保障する。2002年6月1日に発効し、2006年、2009年、2017年にEUの新規加盟国にも適用範囲が拡大された。人の自由移動に加え、専門的資格の相互承認、社会保障制度の調整、不動産購入権についても規定している。

スイスとEUは、長年にわたる困難な交渉の末、新たな二国間協定パッケージに署名したばかりだ。この新たなパッケージには、更新済みの人の移動の自由協定も含まれる。移動の自由が深刻な経済的・社会的な問題を引き起こした場合、スイスに対策を講じる余地を与えるセーフガード条項が盛り込まれた。

EUとの二国間協定の中で、人の移動の自由協定は、スイス国内で最も議論を呼んだ要素でもあった。当局や経済界は、人の移動の自由が経済のニーズに「密接に」合致していると主張する。これは、連邦経済省経済管轄局(SECO)の年次報告書の結論にも必ず出てくる。労働組合も、「労働市場を安定させる」としてこれを擁護する。

一方、右派の国民党(SVP/UDC)はこれを有害と見なし、国民投票を通じて制度の制限を何度か試みてきた。最近の例が、2026年6月の国民投票にかけられる「人口1000万人のスイスに反対」イニシアチブ(国民発議)だ。国民党は国内人口に上限を設定し、「人口過密化」に対処すべきだと主張する。同党は、高水準の移民流入が、インフラへの負担や家賃の上昇、社会保障費や犯罪の増加の要因だとしている。

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イニシアチブ賛成派は、外国人労働者への依存の多くは移民による需要が生み出したものだと主張する。一部の経済学者も、人の移動の自由がスイスにもたらす利益よりもコストの方が大きいと考えているが、裏付けとなるデータは不足している。

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国民党のイニシアチブは、人口抑制策が功を奏さない場合、EUとの人の移動の自由協定の解消も視野に入れている。可決されればEUとの二国間関係に亀裂が入ることは必至だ。

EUとの人の移動の自由協定は発効から25年、スイス経済にどのような影響を与えてきたのか。データで分析する。

1.移民の状況はどのように変化したか?

2. どの分野が欧州からの労働力に最も依存しているか?

3. 欧州移民の技能レベルはどの程度か?

4. 人の移動の自由協定は賃金の低下を招いたか?

5. 欧州の労働者はスイス人の雇用を奪っているか?

6. 移民は社会保障にどのような影響を与えているか?

7. 人の移動の自由は経済成長にどのような影響を与えているか?

1. 協定の発効以来、移民の状況はどのように変化したか?

協定はスイスへの移民を促進し、その様相を変えた。

協定発効以来、移民の大部分を欧州の労働者、主に近隣諸国に住む労働者たちが占めた。連邦統計局(FSO)のデータによると、2015〜2024年、EU/EFTA諸国から100万人以上(総移民数の約3分の2に相当)がスイスに入国した。

同期間の移出者が約60万人のため、欧州移民の純増数は40万人以上となる。スイスは、アイスランドやルクセンブルクに次いで、欧州内でEU/EFTA加盟国からの移民の割合が最も高い。

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整った居住条件もあり、移入者の多くはスイスに永住する。その数は着実に増加し、2002年の90万人弱から2024年には150万人以上(人口の17%)に達した。

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越境労働者(国境を越えて通勤する人たち)の数も2002年の16万3000人弱から現在では40万人以上と急増している。

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2. どの分野が欧州からの労働者に最も依存しているか?

SECOによると、人の移動の自由は、スイス労働市場の人口動態的な潜在力を「大幅に上回る」雇用増加をもたらした。

2024年、スイスに入国したEU/EFTA加盟国国民の10人中7人は就労目的だった。その大半は国外で採用され、雇用契約を結んでからスイスに入国した。

通常、ホスピタリティ、建設、製造業の各セクターが、割合としては最も高い。絶対数では製造業、自動車修理、医療・介護が最も多い。

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過去10年間で、欧州の労働力は情報通信部門および「専門的、科学的、技術的活動」の分野において著しく増加した。研究開発、建築、コンサルティングなど、様々な高技能を要するサービス職がここに含まれる。

人の移動の自由を支持する人々は、高齢化が進む中、将来の労働力需要を満たすためには、移動の自由がさらに肝要になると主張する。予測によれば、ベビーブーム世代の退職と歴史的な低出生率の相乗効果により、数多くの重要分野で数万件の求人が生じる見通しだ。

しかし、経済紙「L’Agefi」の取材に応じたリベラル派経済学者ライナー・アイヘンベルガー氏をはじめとする一部の識者は、「単純すぎる」見方だとする。同氏は「新規参入者は職に就くが、経済の他の分野で新たな需要も生み出す」と指摘する。

3. 欧州移民の技能レベルはどの程度か?

EU/EFTA加盟国の国民は、技能レベルの両極端で高い割合を占める。スイス国民よりも高等教育の資格を持つ割合が高い(55%対45%)一方、義務教育修了後の教育を受けていない割合も高い(19%対9%)。

SECOによれば、これはスイス経済が、サービス部門における高度人材の需要と、低技能の季節労働者の需要の両方を外国人労働力で満たしてきた歴史が背景にある。

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しかし、欧州移民の教育水準は近年上昇している。2015年以降、新規入国者の60%以上が高等教育資格を有しており、以前の44%から増加している。

4. 人の移動の自由は賃金を押し下げたのか?

労働市場の開放当初は賃金ダンピングが起きるのではという懸念が浮上した。2000年代から2010年代にかけ、このテーマに関する様々な研究が発表された。特定のグループの賃金に、わずかにプラスあるいはマイナスの影響が見られるとする研究もあったが、結論はまちまちだった。しかし、大半の研究では、全体として有意な影響は見られなかった。

FSOの統計データは、人の移動の自由が全般的な賃金動向に悪影響を与えていないことを裏付けている。2008年以降、スイス国民と外国人全体の双方において賃金の中央値は上昇した(EU/EFTA加盟国国民に関する詳細な数値は入手不可)。ただし、その上昇幅はスイス国民の方が大きい。2008年以降、スイス国民は+18%であるのに対し、そうでない国民は+15%にとどまる(ただし、その上昇幅には国籍によって大きなばらつきがある)。

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SECOによると、EU/EFTA国籍者の大半は、自身の学歴に見合った職に就いている。同等の職位において、彼らの平均給与はスイス国民と同水準だ。

しかし、これは賃金ダンピングが存在しないことを意味するものではない。建設業や飲食業などの特定の業種や、国境地域(レマン湖周辺やティチーノ州)は、この問題に対してより脆弱だ。そのため、スイス国内での賃金や労働条件の引き下げから従業員を保護するための、いわゆる「付随措置」が2004年6月1日に施行され、この分野において極めて重要な役割を果たしている。

SECOは毎年、これらの措置の実施状況に関する報告書を公表している。報告書によると、過去3年間で、検査対象企業の10%において賃金ダンピングの事例が確認された。

5. 欧州の労働者はスイス人の仕事を奪っているのか?

人の移動の自由に関連するもう一つの懸念は、国内労働市場で競争が激化し、スイス人労働者の仕事が奪われるのではないかという点だ。EU・EFTAからの移民は主に就労目的でスイスに入ってきており、労働市場への参加率は平均を上回っている。昨年、彼らの雇用率は87%超、対してスイスは85%未満だ。

しかし、女性(特に母親)や高齢労働者を含め、全人口における労働市場への参加率は上昇している。SECOは、高い移民流入は国内の労働力を圧迫していない、むしろ逆だと結論づけている。

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大半の研究は、この移民流入が既存の労働供給と競合するのではなく、それを補完するものであるという点で一致する。かつては人の移動の自由に懐疑的だった労働組合でさえ、現在では支持に回っている。付随する措置と組み合わせることで、実際にはスイス国内の雇用を守るのに役立つと信じている。

6. 移民は社会保障給付にどのような影響を与えているか?

SECOは前回の年次報告書で、各種社会保険について、誰が純拠出者であり、誰が純受給者であるかを分析した。

EU/EFTA加盟国の国民は、失業保険への拠出額が受給額を下回った(拠出は27%、受給は33%)。一方、スイス国民は逆だ(拠出67%、受給は51%)。

欧州からの移民労働者は、失業リスクが高い。不安定な雇用形態や季節労働に過度に集中していることが主な原因だ。

2003年以降、彼らの失業率は経済情勢に応じて変動し、スイス平均を上回る水準で推移している(ただし、2025年を除き、EU平均よりは低い)。一方、スイス国民の失業率はほとんど変動せず、低水準を維持している。

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EU・EFTA加盟国の国民は、社会給付を必要とする割合も高い傾向にあるが、近年ではスイス国民との差が縮まっている。2023年の割合は2.2%で、スイス国民の1.8%と比較すると高い水準にある。

一方、スイス年金制度の第1の柱である老齢・遺族年金(AHV/AVS、日本の国民年金に相当)および障害保険に関しては、状況が逆転する。

2010年から2022年の間に、老齢・遺族年金へのEU・EFTA加盟国国民の拠出割合は6ポイント上昇したがスイス国民の拠出割合は同程度低下した。2022年時点で、欧州移民は27%を拠出しているが、受給額は15%にとどまる。

SECOは、2070年までのスイス公的年金制度に対する移民の影響を試算した。その結果、この人口集団の高齢化を考慮しても、EU・EFTA加盟国国民は引き続き、受給額よりも拠出額が上回るという結論を導いた。

したがって、SECOや雇用者団体、労働組合によれば、若年層の欧州人労働者の継続的な流入は、年金制度の持続可能性を維持するうえで不可欠といえる。

7. 人の移動の自由は経済成長にどのような影響を与えるか?

調査機関エコプラン(Ecoplan)は、SECOの委託で、人の移動の自由が国内の成長に与える影響を分析し、結果を公表した。報告書は、労働人口の増加がスイス経済の生産能力および消費財や住宅への需要を押し上げるため、国内総生産(GDP)にプラスの効果があると結論付けた。

また、高度な技能を持つ労働者の流入が、企業の生産性やイノベーション能力を高めるだけでなく、新規企業の誘致にもつながると指摘した。

さらに、移民は一人当たりGDPにプラスの効果をもたらすと考えられているが、これを証明することはできない。この点について、経済学者のアイヘンベルガー氏は異論を唱える。同氏は、2007年から2023年にかけてスイスの一人当たりGDPが年平均0.64%増加したが「ドイツ(0.67%)よりもわずかに低い」と指摘している。

「人の移動の自由によって生じるコストも、これらの指標に加味すべきだ」とアイヘンベルガー氏は言うが、この種のデータは不足しているという。

編集:Samuel Jaberg、英語からの翻訳:宇田薫、校正:大野瑠衣子

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